Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第907夜

さやぶどう



 こないだ、面白い表現を見つけた。
さやぶどう」である。
 言ったのが誰だかは覚えてない。北関東在住の漫画家の人だったような気がする。
 だとすれば見た場所は twitter なのだが、今、検索してみたところヒットしなかった。

 つか twitter って、検索ウィンドウに入力しても、あるとわかっている語がヒットしなかったりするよな。
 前から気になってるのだが、twitter にしろ Facebook にしろ、一度投稿した文章を直すことができない。今回の例のように、後から探しても出てこない。まったく使い捨てのメディアである。ときどき、自分のためのメモ、とか言って投稿してる人を見かけるが、後から見るのは大変に難しい。いや、そういうツールがあるのかもしんないけど。
 いずれ、ストックではなくフローの、刹那的なメディアだ、ということは頭に入れておきたい。

 話を戻す。
さやぶどう」というのは、「さやえんどう」を指す、北関東あたりの表現である。確かに、葡萄に似ていると言えないこともない。
 そういう納得性があるからかどうか、ググってみたところ、レシピとかで普通に使われている。どうやら「気付かない方言」らしい。
 というわけで、今週は野菜の方言。

 つか、そのまえに、この「さやえんどう」系を整理しておきたい。
 そもそも「えんどう」って何。調べてみたら「豌豆」と書く由。つまり、「えんどうまめ」を漢字で書こうとすると「豌豆豆」となってしまうわけだ。
 じゃ、「豌」って何、って漢和辞典にあたったら、これは「えんどうまめ」を指す字らしい。なんじゃそりゃ。ってことは、「豌豆豆」は豆が三つも並んでることになる。
 で、成長しきる前の種がグリーンピースで、さやごと食べるやつの中には、きぬさやとスナップエンドウというのがあって、「スナックエンドウ」はスナップエンドウの商品名。甘みがあるやつが砂糖さや、とややこしいことこの上ない。きぬさやって何、という説明が今イチ見つけられなかった。

「野菜 AND 方言」でググったら、人力検索はてな記事がみつかった。
 そこからたどったのがまずこれ
「おばね弁」と言われて面食らうが、どうやら山形の尾花沢市らしい。
 じゃがいもを指す「ごしょいも」は秋田でも言う。『語源探求 秋田方言辞典 (中山健、秋田協同書籍)』によれば、「ごしょ」は「五升」で、「一つの種いもから」「一坪から」「一合まけば」と諸説あるが、とにかくたくさん取れる芋、ってことである。
 ほかには、「にどいも (年に二度収穫できるから)」「ごどえも (五升どころか五斗)」などが『秋田のことば (秋田県教育委員会編、無明舎出版)』に載っている。
「おばね弁」に戻ると、里芋の「えもご」は「芋の子」で、そのまま「いものこ」という呼び方もある。小さいのが密集している様子からついたもの。
 隠元豆のことを「ささぎ」としているが、「ささぎ」には「ささげ」という標準語形があり、一方で、隠元とは別のものだ、という話もあるようだ。はっきりしない。ちなみに、秋田でも「ささぎ」である。「ささ」という形になることが多い。
 サクランボの「おうと」は「桜桃」だろう。これも含め、単なる変形が多いようだ。

 とうもろこしが、「唐+唐土」であるということは随分とに紹介しているが、Wikipedia で調べてみたら、ほかの言語でも「外国の穀物」という形の呼び方になっているものがあるんだとか。なかなか興味深い。
 俺は子供の頃、「きみ」って言ってたと思うんだが、これは「とうきび」という言い方がある通り、「きび」の変形である。「きび」は「黍」だから、変形した結果、全く別の作物を指すようになった、というのはこれまた面白い。
 岡山で「さつまきび」と言うそうだから国内でも複雑な流入関係があったことを想像させるが、沖縄の「やまととーんちん」は「大和唐黍」らしいから、もうわけがわからん。

「青菜」というのがスーパーに並んでいる。
 俺の理解では、「青菜」というのは法蓮草とか小松菜の類の総称なんだが、見た目も触感も明らかに違う。あれは一体、何なんだろう。




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