Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第890夜

しんごろう



 10/26 放送の NHK「妄想ニホン料理」における、対馬と南会津の郷土料理対決。先週の「ろくべえ」についで、今週は「しんごろう」。そう、この回は「人名料理対決の巻」でもあった。
 ヒントは以下の通り。
1.貧乏なしんごろうが考え出した
2.秋に作るのが一番うまい
3.香りがたまらない
「ろくべえ」の時よりも情報量が少ない。1. から、高級食材を使ってはいないだろう、ということが想像できるくらい。これにしたって、クイズ番組並みに真剣に考えるとすると、「昔の高級食材ではない」ということだと思われる。「昔はよくあったが、今では高級食材になってしまっている」ということもありうるので、なかなか難しい。
 2. だって、「秋が旬」ってことだろうか、と思うが、極端なことを言えば、「かき氷」は夏が旬なのではない。暑いから冷たいものを欲する、というだけのことで、氷は夏には存在しづらい代物である。
 3. はどうだろう。キノコ類だろうかと思ったが、マツタケは 1. から除外されるしなぁ。

 攻守交代して、作るのは対馬の人達。
 まずは、居酒屋の店主。
 この人は、ゴボウを千切りにしてろセン (サツマイモのでんぷんを抽出した保存食) を団子にし、アナゴを一緒に蒸し鍋にした。
 秋口になると鍋が恋しくなるし、調べてみたら、ゴボウの旬は初冬なんだそうな。
 まぁ、「貧乏なしんごろうが考え出した」って条件に合ってないような気もしないことはないが、旨そうだったからいいや。
 もう一つは一般の方。
 イサキを素揚げにしたものと蕎麦。やっぱり、貧乏から救荒作物系の連想をしたんだと思われる。
みためは うめぇごと しちょるで」というコメントが楽しい。「あんがといける」も。「案外と」が「あんがと」なのね。

 正解は、平たく言えば焼きおにぎりである。
 かなり強めに握ったものに、荏胡麻と味噌などを混ぜたものを塗って、いろりで焼く。想像するだに旨そうだ。においまでする。
 白米を使ったものなので、「貧乏なしんごろうが考え出した」との整合性が気になるが、これは「しんごろうは餅米が買えなかった」ということである。つまり、強く握るのは餅の触感を得るため。米だから秋に旨いのは当然。
 この後、試食コーナーになるが、長崎出身の金子昇がこの「しんごろう」を、おかわりするようにほおばっていたのが印象的。旨そうだもんなぁ。

 ちょっと、ナレーションが気になった。
「しんごろう」は、おにぎりを作ってから焼くまでに冷ましておくのだが、それが「冷ましておきます」と平板になっていた。何回も出てきたので、一時的なものではないと思われる。
 エンディングを見たら、ナレーションは女優の濱田マリだった。神戸の人だが、まぁ、それはあんまり関係あるまい。一般的な平板アクセントだし。
 でも、ナレーションでそれはありだろうか。

 ついでなので、俺が見逃した 11 月の回についても触れておこう。
「ダテな殿様大喜び ふくめん VS すっぽこの巻」
 もう、タイトル見たってなんだか全然わからない。
ふくめん」は宇和島の料理で、詳細はこちら参照。この回はどちらもお祝いごとに出てくる料理らしいが、これは「福麺」と書く、という説もある。部外者が言うのはアレだが、後付けの「佳字」じゃね? って気もしないことはない。
 それにしても「すっぽこ」という字面のインパクトたるや。平たく言えば温麺で、名前は長崎の「しっぽく」から来ているらしい。Wikipedia では「おくずかけ」というお上品な名前で記事にしているが、これは精進料理というとらえ方だそうで、お祝いとの関係はそこで生じる。

 ちなみに 12/14 の奴は、「いただき」と「けいらん」。見るからにミスリーディングな名前の料理。録画はしてあるが、見るのはいつになることやら。




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