Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第875夜

「じゃじゃじゃ」と「ばばば」(後)



 さて、HDD レコーダーがキャッチした番組に借りた文章、岩手放送の「菊池幸見の方言探訪〜じゃじゃじゃ と ばばば〜」後編。

じゃ」を紹介するために、地元の劇団の人々が登場して、方言を使った寸劇が行われる。
 下に字幕が出るのだが、それがちょっと怪しい。たとえば、「おめぇさんも気ぃつけでくんんしぇや」という字幕のところは、俺には「おめさんどご」と聞こえた。
 画面サイズの問題なのか、それとも「じゃ」がメインだからほかのところは端折ってもいい、と思ったのかはわからないが、ちょっとばかり気になった。
キノゴ」と発音している語が「キノコ」になっていたりと、濁点のつけかたも違ってたようなので、字幕作成作業自体の問題じゃないか、って気がするのだが。

」を求めて陸前高田へ。
根岬はしご虎舞」っていうのがあるらしいのだが、これがまぁ長ーい梯子の上でやる獅子舞つか虎舞。おっかねーよ。梯子は真上に延びてるんじゃなくて、斜めになってるのだが、それが恐さを増している。まぁ、肉眼で見てみたい、という気はしないこともないが。
 で、その人たちのインタビューでは、「ばばば」は年寄りが使う、とのこと。若い人はあまり使わないのであるらしい。
 それはいいとして、そのインタビューの内容がほとんど理解できない。隣県と言ってもそれだけの違いがあるってことだ。

」を使った寸劇もある。
 内容は、泥棒に奥さんのお小遣いを盗まれてしまった、というもの。
 その「お小遣い」は、「じゃ」のときは「こづげしぇん」で、これは「小遣い銭」だろうが、「」では「ほまづ」だった。これはおそらく「ほまち」であろう。
 もとは、領主に内緒で開墾した田んぼのことで、「ほまち田」とも言う。どうも語源は不明らしいが、ここから「小遣い」という意味に変化したのだと思われる。

じゃ」は南部領の言葉だ、ということで青森に調査に向かう。
 東北の人は天気予報で「三八上北 (さんぱちかみきた)」という地域名を聞くことがあるはずだ。青森の南部地方で、三戸・八戸・上北地方の総称である。これは知っていたが、「上十三 (かみとうさん)」という言葉を初めて聞いた。上北と、十和田・三沢のことらしい。

『魚影の群れ』という映画がある。見たことはないが名前は知っている。相米慎二監督だとは知らなかった。大間港が舞台らしい。方言指導をした人を訪ねている。
 最初、何言ってるんだかわからない、ってことで、テロップいれよう、という意見もあったそうだが、相米監督は、方言でわかる、と頑張ったとのこと。
 そういう映画も撮ってるんだね。なんかアイドル映画の人ってイメージがあるんだけど。
 一般の人へのインタビューもある。なぜか居酒屋で。
 相手は若い人たちなのだが、出身地が、田舎館だったり弘前だったりと、津軽の人も結構いる。南部と津軽は仲悪い、とかいうのは、ないってこともないんだろうけど、昔のことになりつつあるのかもしれないねぇ。
 それは残念ながら、方言の衰退と無関係ではないんだけどね。

」は長崎の五島列島でも使われている。
 ここには四つの自治体があるのだが、島のほぼ全体が国立公園なんだそうである。風光明媚ではあるかもしれないが、ちよっと暮らしにくい面もありそうな気がするねぇ。開発とかそう簡単にできないんじゃないかって気がするのだが。
 岩手での会話を見た人たちが喜んでいる。確かに、似てるとうれしいのかもしれないね。
 そのうちの、一人のおばあさんの発言が興味深い。若松町から長崎に進学したらしいのだが、言葉をからかわれたり、半年くらい何も話せなかったり、というような苦労をしたそうで、子供たちは方言を使わせないようにしたらしい。こういうのが方言が使われなく原因の一つになるわけだが、これは責められないよね。

 繰り返すが、これは 2004 年の番組である。最近の「じぇじぇじぇ」ブームに乗っかって慌てて作ったのではない。
 ローカルの放送局にはこういう番組を作り続ける気概が欲しい。
 研究でも、コミカルなバラエティでもいいけど、地域の方言を取り上げる番組は年に一回くらいはあってもいいと思う。








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