掘り出しネタ第二週。
HDD レコーダーが、事前に登録してあったキーワード「方言」に反応して録画した、6/15 に放送された、本来は 4/12 放送分の「所さんの 学校では教えてくれないそこんトコロ」から、「モノ方言」について。
これは、文法とかアクセント・イントネーションではなく、一般名詞のこと。「気付かない方言」ではなくて、「なんでそれにそういう俚言形があるの?」という感じの表現。先週紹介したのでは、黒板消しを示す鹿児島の「
ラーフル」、自転車を示す名古屋の「
ケッタ」など。
どっちも、方言の世界では有名な語だが、「
びーし」も有名。岐阜・愛知で模造紙のことを指す。
番組では、岐阜大学
山田敏弘准教授の説として、「
B紙」つまり、用紙サイズを示すA版B版の‘B’である、と明言していた。かつて岐阜で作られていた和紙「美濃紙」がB版のサイズのベースになったことが根拠らしい。
が、ググってみると必ずしもそうとは言えないらしいことがわかる。
国立国会図書館の
レファレンス協同データベースには「
模造紙の地域名称であるB紙(びーし)及び大洋紙(たいようし)の言葉の由来」という文書があり、「未解決」ということでコメントを募集している。
これによれば、模造紙には A/B 二種類があり、光沢がないものが B だそうで、これから来ているのではないか、という説もあるらしい。
番組が市民に行ったインタビューでは、模造紙という言い方を教えたところ、女子高校生と思しき少女が笑いだしたのが印象的である。聞いたことがないのだそうである。
方言に興味を持つのであれば、そもそも「模造紙」って何、っていう疑問を持ちたい。「模造」だよ、「模造」。
これについては、さっきの
文書にも説明があるし、Wikipedia にも
記事があるが、明治のパリ万博に出品された紙の評判がよく、オーストリアの会社がこれを真似た。それが日本に輸入されて、されに日本の会社がこれを改良した、というステップを踏む。
で、Wikipedia にも
記事にたくさんの俚言形が紹介されている。中で、「
B紙」「
大洋紙」「
大判用紙」が使われている地域では、「模造紙」が通じない、ということが書かれている。上のインタビューで少女たちが笑い出したことと一致する。
これはおそらく、きちんと字で書けるし、すでに学校などの現場では公式に使われている(自由研究の用紙指定などで使われる)ため、「気付かない方言」になってしまっている、ということだと思われる。ほかの表現が入り込む余地がないのである。
次、これも有名な題材。いわゆる「絆創膏」。
バックナンバーに地図があるが、「
バンドエイド」が関東、山梨、岐阜・愛知、大阪京都、兵庫、徳島、「
リバテープ」が九州北部から中央、「
カットバン」が東北、中国、四国、長崎、鹿児島、で、北海道は「
サビオ」である。
繰り返すが、「そういう商品があります」ということではなく、「これが一般名称になっている」ということである。店に行って「
カットバンください」と言って、バンドエイドを買ってきたりするわけ。
で、これは基本的に流通の問題である。東北では「
カットバン」がガリバーなので一般名称の座を獲得した。それはわかる。
だが、なんで全国的に商品名が一般名称になっているのか、という疑問がある。
本来の一般名称は「救急絆創膏」である。なんで「救急」がついてるかと言うと、「絆創膏」というのはもともとはただのテープだから
*1。それを小さく切って、薬品をしみこませたパッドをくっつけて、片手で貼れるようにしたのが「救急絆創膏」。
確かに長い。省略したくなる。現実に、我々はあれを本来の定義から離れて「絆創膏」と呼ぶこともある。
ではなぜ、そこで留まらずに、商品名で読んでしまう、ということが全国的に行われたのか。わからん。
というわけで、「所さん」だけで市幅が尽きてしまった。「あさイチ!」についてはまた後程。