もう二月だというのにまだ正月番組の話。「なまりうた」が意外に良かったもんで三回連載にしちゃったからな。
今度は 1/5 の「月曜から夜更かし」。土曜日だったが、正月スペシャルと言うことで。
可愛い方言と可愛くない方言を取り上げていた。
導入部はこれまでの総集編みたいなもので、それによればどうやら「最も可愛くない方言」はすでに決まっているらしい。
それは甲州弁だそうである。この番組が言ったことで、俺の意見ではない。
決定したときの例文が紹介されている。
大阪 うち、田中ちゃんの愛人やねん
兵庫 うちって、田中ちゃんの愛人やねんな
福井 うちぃ、田中ちゃんのぉ愛人なんやって
甲州 おら、田中ちゃんの愛人つーこんずら
これ、意味同じか?
兵庫と福井は「私、田中ちゃんの愛人なんだって」って意味の様な気がするんだが、大阪は「愛人なんだ」って宣言の様な気がする。
甲州の「
つーこんずら」がわからないので調べてみたら、これはこれで「愛人なんでしょう?」って意味らしい。甲州の人から、間違ってる、というツッコミ多数。
あと三つ例があって、「
おまん、こっちんこうし」「
だっちもねぇこんいっちょし」「
ちょびちょびしちょし」なのだが、順番に、「あなた、こっちに来て」「バカなことを言うな」「調子に乗るな」らしいのだが、語尾はどれも「
し」なのに、「
こっちんこうし」だけが肯定の命令で、あとの二つは禁止。どう違うんだろう。
この番組では、「可愛くない方言」のほかに「ブサイクな方言」という言い回しもしているのだが、甲州弁の後、伊勢も名乗りを上げたらしい。紹介されていたのは「
おかま」と「
すりちん」。
「
おかま」は「
面白い」、「すりちん」は「すれ違う」。
番組では、
マツコ・デラックスを指して「
おかま」と言っていたのですぐに分かったのだが、「
すりちん」もなぜか見当がついた。
新潟で「
い」と「
え」に区別がないことは当人達も自覚しているらしく、スタッフに色鉛筆を見せられると、笑いながら「
えろいんぴつ」と言っていた。
Wikipedia では栃木弁の
記事でも「
えろいんぴつ」が紹介されているし、茨城出身の芸人・赤プルのブログにも
記事がある。「い/え」の問題を持つ方言は少なくないと思うので、おそらくほかにもあるんじゃないかな。
名古屋では、やかんのお湯が沸いている「
ちんちん」「
ちんちこちん」が紹介されている。鉛筆の先がとがっていることを示す「
ときんときん」などと合わせて、言葉を繰り返すのが特徴、とか言っていたが、それは単なるオノマトペである。そろそろいつもの民放方言番組っぽくなってくる。
画面には「最も特徴的な使用方法を想定しています」と注意書きがあるが、ものっすごく小さい字で、俺のブラウン管テレビではつぶれてしまう。
いやそもそも「ブサイク」というのは言いがかりで――まぁ、スタッフもそれは承知でやってるんだと思うが――これが成り立つのは、別の言語のルールで理解しようとするからである。オランダのスケベニンゲンや、バヌアツのエロマンガ島をネタにするのと同じ理屈。
だから、与太話程度の意味しかない。しかもやたら下がかっている。
特に取り上げられているのが、越中弁。
お見合いのシーンを取り上げているのだが、「
おひんなりあすばいたか」という挨拶には確かにまごつく。これは「おはようございます」で、「
あすばいたか」は「あそばせ」と同じ系統の言葉だと説明を受けてやっと納得する。
それ以前に、女性を招き入れるときに「
おい あんた、こっちへござれま」と読んでいるのに大分驚く。「
あんた」のニュアンスが全然違うわけ。
こっから、民放バラエティらしく急降下し、「正座」の「
おちんちん」、「互い違い」の「
だんこちんこ」と続く。
最後に、甲州弁と越中弁でケンカをさせるというのがある。ケンカするのは女性である。この際だから、全文を載せる。
K この際はっきり言うけど越中弁の方がめぐせぇぞ。
E なんちゅううざくらしいが 甲州弁の方がやわしてぇ言葉で恥ずかしいちゃよ。
K てっ。だっちもねぇこといっちょし。いっさらわかっちゃいんわな。越中弁の方がみぐせぇ。
E いつんかもこわくさい事ばっかゆう女やね。
K おめぇこそ いつもちゃきいこんばっか言うて しゅえぇ女だな。
E おーどなこと言っとんな。
K のぶいわぁ。ごっちょやな このわからんちん。
E だらんことばっか言うなま。
そんならここらへんでちょうつけまいか。
K そっちがその気だったらやってやるずら。
E しょわしないなぁ 黙っとれんが。
K おまんこっちんこうし。
その服かじってひっちゃぶいちゃるからな。
E やったな、ろっぽもん。はがやしいなぁ。
K そんなひっこくっちょ。
E お前半殺しにすっからなぁ。
微妙にかみ合ってないような気もする。
一つだけ触れると、越中弁の「
しょわしない」は「うるさい」という意味だと思われるが、秋田弁では「落ち着かない」という意味になる。
最後の「半殺し」は、見合いの再現ドラマで、お萩のことを言う、という説明を受けてのものだと思われる。
というわけで、普通の民放バラエティだった。
話は変わるが、マツコ・デラックスは結構、まともなことを言うので、割と好感を持っている。だからってこの番組をまた見ようとは思わないけど。