久しぶりにオタクな話。しかも、結構、濃いので注意されたい。
個人的には「もう役目を終えたんじゃね?」と思ってる仮面ライダー シリーズだが、数年前から、ネットでショートフィルムを公開するようになっている。キバあたりかららしい。
内容は基本的におふざけのドラマである。本編では登場しなかった部分を描くサイドストーリーですらない。仮面ライダーを映しておいて「これを演じているスーツアクターは誰か」を答えさせるクイズなど、内輪受けと言うしかないエピソードもある。そのせいかどうかは知らないが、主要キャストなのに出演していない役者もいたりする。スケジュールの関係かもしれないけど。
去年の今頃まで放送していた「
仮面ライダー オーズ」のネット版は二つあるが、ここでは第二作の「ネット版 仮面ライダーオーズ ALL STARS 21の主役とコアメダル」を取り上げる。
というのは、キャストが方言をしゃべっているからである。
主人公の火野映司を演じている
渡部秀が秋田、いわゆる「二号ライダー」である仮面ライダーバースの伊達明を演じた
岩永洋昭が長崎県、ヒロインの泉比奈を演じた
高田里穂が福岡。渡部秀は、
Wikipedia によれば
由利本荘市らしい。由利本荘市は、
加藤夏希につづいて仮面ライダーを輩出したことになる。
ストーリーを紹介すると即ネタバレになってしまうくらいの内容なのだが、それでも紹介すると。
舞台は、ドラマで主人公たちが住み込んでいるレストラン「クスクシエ (クスクスという料理を作るための器具) 」。
アンク…詳細は端折るが、怪人であるが映司たちと一緒に行動を共にしている男が記憶を失ってしまって大騒ぎ、というもの。
記憶を失ったのは、天井から金盥が落ちてきたから。だからコメディなんだってば。
アンクを演じている
三浦涼介は東京出身、クスクシエのオーナーである白石知世子を演じた
甲斐まり恵は熊本出身。ブログのトップ写真、今と違いすぎ。
で、目を覚ましたアンクがいきなり大阪弁で話し始める。理由は説明なし。だってコメディなんだもの。知世子も大阪弁。商人だから、って発想だろうか。
アンクは本来、口が悪く (子供が真似して困った、という親もいたらしい) ひねくれものなのだが、素直な働き者になってしまって、
映司たちが困惑する。
比奈: | あんなんアンクじゃなかごと。 |
伊達: | 金盥の当たったショックで別人格の出てきたごたんね。 |
| やー、でもまさか関西弁のグリードのおったとはね。 |
映司: | 関西弁だばいいども、なしてあんだげ素直なんだべ。 |
伊達: | 雛鳥の刷り込みじゃなかかな。 |
| ほら、(目が覚めたとき) 知世子さんば一番最初に見たろう。 |
このとき画面には「秋田県出身」とかいうでかいテロップが出る。
映司のセリフには説明が必要なような気がする、「
関西弁だばいいども」というのは、「言葉が関西弁に変わったのはともかく、性格が素直になったのはなんでだ」と言っているのである。
比奈の最初のセリフの「
ごと」のニュアンスってどんな感じなんだろうね。さして強い意味があるものではないような気がするが。強調?
伊達のセリフでは、主語を示す格助詞「
の」が何度も出てきている。
映司: | まさがアンク、あのままなんだべが。 |
伊達: | アンコが元に戻らんやったら、オーズとして戦えんじゃないきゃ。 |
映司: | したばこの姿で思い出してもらうしかねぇべ。 |
比奈: | あげんなはアンクじゃなか。 |
伊達の「
戦えんじゃないきゃ」の「
きゃ」はちょっと自信ない。「アンコ」は伊達の口癖なので間違いではない。
「オーズとして戦えない」というのは、映司が仮面ライダーに変身するためのパーツであるメダルを選択するのはアンクだからである。
映司の「
したば」は、俺としては「
へば」ではないのだろうかという気がするのだが、本荘ではそっちが優勢なのかもしれない。
『秋田のことば (秋田県教育委員会編、
無明舎出版)』を調べてみたが「
したば」「
へば」は全県で使われている。ところが『本荘・由利のことばっこ (
本荘市教育委員会、
秋田文化出版)』では、「
せば」「
へば」が立項されていない。使われないのかもしれない。
セリフ起こししてわかったのだが、比奈は方言ではこの二言しかしゃべっていない。しかも同じ内容。芝居にはずっと出ている。
落ちは書かないでおくが、まぁもったいぶるほどの落ちでもない。
俺は
東映チャンネルで見たのだが (取り上げるのが公開から一年経ってからなのはそのせい)、DVD も出てるので興味のある人はどうぞ。
同じ「ニチアサキッズタイム (
テレビ朝日の日曜朝は、7:00 から 9:00 までずっと子供番組で、この枠をこう呼んでいる。もちろん大人のオタクが見ても差し支えない)」からもう一つ。
枠の殿
(しんがり) を務める「スマイルプリキュア!」は五人編成だが、今年は大阪出身の少女がいる。
舞台は「七色ヶ丘」という架空の街だが、言葉遣いは標準語風。
そのキュアサニーこと日野あかねはずっと大阪弁をしゃべっている。聞いたところでは今風。ところどころ、今の大阪弁? って表現が出てくることがある。演じている
田野アサミは兵庫出身だそうである。ネイティブではないことになる。誰かが方言指導についているのかどうかは不明だが、シリーズディレクターの
大塚隆史は大阪出身である。ドラマでの大阪弁について発言したことがある、という噂を聞いたことがあるのだが未確認。
第 19 話「パパ、ありがとう! やよいのたからもの」で、キュアマーチこと緑川なおが大阪弁を真似たところ、あかねが不快感を表明するシーンがある。
大阪の人が、よその地域の人が使う大阪弁に対して不寛容な傾向がある、ということは何度か触れてきたが、子供向けのアニメでそれを描写するとは思わなかった。
今後この点がさらに描かれるかどうかは不明。なさそうな気がするけど。
言葉を離れれば、あかねの家はお好み焼き屋なのだが、差し入れとして持ってきたときに、お好み焼きがピザのように小さな扇形に切られていたことも話題になった。大阪では、コテを直角に交差させて入れ、小さな四角形にするのが主流である。
もうちょっと大阪の話を続けると、テレビ朝日系列の大阪局は
朝日放送で、「プリキュア」シリーズも朝日放送制作なのだが、朝日放送は高校野球の
中継をする。試合時間は「ニチアサキッズタイム」とぶつかるので、この期間はほかの時間帯に
移動される。しかも、放送日は直前にならないとわからないことがある。
「仮面ライダー」は「ディケイド」以降、8 月末で終わるようになったのだが、そういう事情のため、クライマックスを見逃す虞があり、近畿のファンはホームページや毎日の新聞を血眼でチェックしなければならない。「プリキュア」などは、製作局のエリア内なのにリアルタイムで見られない、ということになる。
「仮面ライダー」が 8 月末終了になったのは、戦隊シリーズと同時期の終了・新番組開始による制作側やスポンサーの負荷分散が目的とか、戦隊やプリキュアと同時期の終了だと視聴者がそこで一斉に卒業してしまう懸念があるとか、いくつかの説があるのだが、当の朝日放送はどのように受け止めたのだろうかね。
毎年 8 月になると、関西のブロガー・レビュアーが一斉に沈黙する (あるいは文句を言う) のは奇妙な光景である。