Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第786夜

ALL UP 2011



 今年のことを振り返ろうと思ったら、地震のことを避けて通るわけには行くまい。
 幸いなことに、秋田市周辺はさほどのことはなかった。いや、今だからそう言えるのであって、電気は止まったしガソリンや灯油も買えなくなった。公民館にかけこんだ人はいたし、列車が停まって秋田駅東口のアルヴェも避難所になった。だが、太平洋側のことを考えれば、「被害」という表現を使うのははばかられる。
 ダメだなあ、と思ったのは 4 月の大き目の余震のとき。
 このときも停電になって、その夜は買っておいた蝋燭でしのいだのだが、並ぶの覚悟でコンビニに入って驚いたことには、「ラジオねべが」と言っているオッサンがいた。あの人、本震以降の一ケ月、何をしてたんだろう。
 それと、買い物に殺到するのはいいとして、買い物を奥さんに任せて、自分はエンジンをかけて暖房を利かせた車の中で待っている、というオッサンもいた。何も学んでない。

 何も学んでない、と言えば、自転車。
 ブレーキのない自転車が話題になったが、乗っている彼らは、自分は何があってもちゃんと停まれる、と思っているのだろう。原発の事故から何も吸収できなかったらしい。

 ことしの漢字は「絆」だそうである。だろうとは思ってたが、よくもまぁ、という感じ。
 福島から引っ越していった先でいじめられたり、岩手で作った花火にいちゃもんがついたり、橋の工事にケチがついたり。むしろ、「絆」「絆」という声は上辺だけのものだということが明らかになった一年ではなかったか。
 おそらく、被災者同士の間で「地域の絆」みたいなのはあったのだろうと思う。が、ちょっと距離があればそんなものは単なるお題目にすぎない、ということだ。

「放射能つけるぞ」で更迭された大臣がいたが、似たようなことを一般人がやってもお咎めはない。この機会に東北が全滅すればよかったのに、という書き込みもちょっとネットを探せば見つかるが、これは同じ線上にある。

 プレゼントの米に「セシウムさん」っていうテロップをつけて騒ぎになった件もうさんくさい。
 別にいいじゃん、などと言うつもりはないが、テスト用だと分かっていれば、俺もやりそうな気がする。
 あれはおそらく、ビートたけしが言ったのであればなんの問題にもならなかったはず。
 お前はビートたけしじゃない、で終わる話ではないと思う。
 叩きやすいから叩かれたってことじゃないのかな。

 この辺にしておくか。
 日本人のすばらしさを再発見した、みたいなことを言う人がいるが、俺はむしろ、ダメだってことを再発見したと思っている。

 東北電力提供の「週刊ことばマガジン」は 3/5 の放送を最後に休止されたままである。
 太平洋側では取材、難しいだろうしなぁ…。このまま終わってしまわなければいいが。
 今はラーメン番組をやっている。枠が残っているのはありがたいが、しょうもねぇ。
 秋田を取り上げたのは 2/26 の「どっすが」が最後である。能代あたりで「ありがとう」に相当する言葉らしいのだが、初めて聞いた。「どうしよう」と同じ語で、どうすればいいかわからないくらい感激している、という状態、単なる「ありがとう」ではないのだそうだ。

『秋田のことば (秋田県教育委員会編、無明舎出版)』には、「かんぶん」という語が載っている。秋田の内陸部のようだが、「過分」らしい。沿岸北部には「かんぼ」という形があるようだ。
おおぎに」という語も載っているが、解説の必要はあるまい。
 どれも聞いた事ないけど。

 地震関連の本がたくさん出てるが、『東日本ふるさと物語』しか買ってない。
 これは漫画だし、地震と関係ない作品もいくつかあるからいいが、あの地震のことを文章で読む度胸が俺にはない。数分もないようなニュースでだって朝っぱらからウルウルしちまってたくらいなのに。

 食生活にちょっとした変化。
 納豆をはじめとする発酵食品が品薄になった。スーパーは少しでも揃えようとして仕入先、メーカーを新規開拓したのだろう、見慣れない業者の製品が目に付くようになった。いくつかはそのまま定着している。ビジネスチャンスはそこにもあったということだろう。
 ビールメーカーの工場も被災、一部の銘柄の生産を中止して、供給を安定させようとした。その中に、俺が好んで飲んでいた「コクの時間」があった。しょうがないので他のに切り替えたのだが、生産が再開されて、わーいと思って買ったら、さほど旨いと思えなかった。質が落ちたのではなかろうと思う。好みのピークを外れてしまったんだろうなぁ。
 今は、流れ流れてサッポロの「金のオフ」である。
 特別なことがあって贅沢したいときにはヱビスにするので、最近はサッポロばっかり飲んでることになるなぁ。

 地震の空白域があって秋田だって安穏とはしていられない。
 来年は、それも含め、色々と考えるべき年なのかもしれないな。




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