Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第784夜

働く女子について



 今回は、ecala cafe から。
「働く女子にうれしい情報サイト」になんでお前が、という意見はあろうが、これは mixi 経由。
 mixi にはニュースのページがあって、そこにここの記事が載ることがある。
 それでも、なんで見てるんだよ、という疑問は生じるだろうが、それは 16 字程度の見出しが並んでいることによる。面白そうなタイトルなんで読んでみたら、俺とまるっきり接点のない記事だった、ということはよくある。

 方言と関係があるのは以下の四つの記事。最後のは escala cafe の独自記事ではなく、「独女通信」からの転載。
1. 「忙しいとき……」、「思わず方言が出て……」、働く女子が故郷に帰りたくなったとき
2. 方言はモテるって本当? 「言われてグッときた異性の方言」
3. 働く女子に聞きました、私の「地元自慢」
4. 京都弁で天然の女の子が最強にモテる理由

 1. では、「プレゼン中に緊張しすぎで方言が出てしまったとき」に故郷に帰りたくなる、という意見が紹介されている。自分のアイデンティティを再確認した、ということだろうか。
 コメントの後半部分、「(方言が)出てしまった方は恥ずかしいもの?」が無神経で笑える。東京出身のライターなんだろうけど、方言話者の知り合いいないのだろうか。
 仕事が忙しいと「田舎のゆっくりした時間の流れが恋しくなる」という意見もあったようだが、単なる逃避だろうな。田舎だって忙しい奴は忙しい。周りがゆっくりでテンポがかみ合わないとさらにストレスが溜まる。
「緑がないことに違和感をった瞬間」というのもよく聞く意見だが、これに対しては「東京育ちの知人からは、『高い建物に囲まれていると、守られているようで安心する』という言葉を聞いたことがあります」というコメントが。これはバランスが取れている。人は自分の生い立ちからは逃げられないのである。
 ネットで、高村光太郎の『智恵子抄』にある「東京には空がない」を、大きなお世話だ、と激怒している文章を読んだことがある。

 2. が SigmaSection 的なメイン。
 5 例しか紹介されていないので、普遍性はないが、なかなか面白い。
「静岡出身の女の子が『今日飲み会行くらー?(「今日飲み会行く?」の意)』と言うのを聞いて、語尾の適当さがかわいいと思ってしまった」も笑った。人の方言つかまえて「適当」って。それこそ大きなお世話である。これって、「適切」の意味の「適当」じゃないよね?
 故郷の人と電話で話していると方言が出る、という意見に対するライターのコメントで、「あれって指摘されるまでみんな気づかないんですよね。不思議です。」とあるが、これも不思議。ライターは大阪の人らしいのだが、その辺の感覚がないんだろうか。あるいは、ずっと大阪弁で通してて、切り替えてない?
 一番面白かったのが、「関西の男の子が『あかん』とか、『おまえ何してんねん』って厳しく言うところを、関東圏の男子は『ダメだよ』って言う。やさしく諭すように言われると口答えもできなくなってしまうくらいドキドキする」という意見。
 勿論、やさしく諭すように言われたことが大きいのだろうけど、よく言われる「標準語 (関東、東京) の言葉は冷たい」というのとは正反対の意見。場合によっては、「ダメ」より「あかん」って言われた方が優しく聞えるケースだってあるんだと思うのだが、この場合は逆なわけ。

 3. は、方言に触れてはいないが、ご当地ヒーロー系キャラクターが自慢のネタになっている。この記事は 2009 年とちょっと古いせいだと思う。今じゃご当地ヒーローは花盛りである。ついに映画が全国公開される始末。

 4. は京都弁の女性に関して。
 なんで京都弁の女性がよく感じられるかについて、「最近の女性、とくに若い娘は早口ですから、それでわーっとまくしたてられると、男は逃げ場がなくなって、引いてしまうことが多い。その反動で、京都弁のトーンに惹かれてしまうことがあるのかもしれませんね」が興味深い。
 長い引用になってしまったが、つまり、草食系の話ってことだろうか。
 この文章には、「お嬢様征服願望」なんて単語も出てくるが、そういう面からの感じ方だろうね。
 そもそも「かわいい」って単語自体が「上から目線」の単語なんだけども。

 最後の文章には、「京都弁には公家ことばが強く影響されているという」という主語と動詞がねじれた文がある。
 何度も引き合いに出すが、米大統領選で二人の候補者の支持率を「二桁差」と表現したのがあのロイターであることを引っ張り出すまでもなく、ネットの文章は、プロであってもこの有様である。

 尤も、escala cafe は、内容がそれほど悪くない。
 名前は出さないが、ほかの恋愛関係サイトでは、「デート中、車に乗っていて、急ブレーキをかけたとき、とっさに左手を (助手席側に) 伸ばして守ってくれる」なんてことをプラス評価しているところがあって、吹き出した。
 急ブレーキかけてる危険な状態でハンドルから手を離すなんてありえないし、そもそも、デート中に急ブレーキをかけなきゃいけないような運転をしている時点でアウトだと俺は思う。
「これをしたら嫌われる」なんて項目が並べられた記事もよく目にするが、項目が七つとか十とか並んでると、「要するに、何やったって嫌われるときは嫌われるってことだろ」つまり「そんなサイトの記事読んだって参考にゃならんよ」ということになる。
 というわけで、恋愛関係サイトはネタの宝庫だ、という話。




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