標準語形はおそらく「刺す」であろう。軟膏は「虫刺され」のための薬であって、「虫食われ」「虫かまれ」とは言わない。
…と思うんだが、一応、ググってみたら、「虫食われ」と言っている人もいないではない。ただ、農作物を食べられてしまったときに使われる例が多いようである。
「虫かまれ」もいるが、数はぐっと減る。こちらは、農作物での用例はないようだ。
中国地方には「
かぶる」という言い方があるそうだ。「かぶりつく」と同系じゃないのかな、と思う。だとしたら「食われる」系の表現ということになるが。
実態としては、やはり蚊には「刺される」ものだろうと思う。蚊は噛んだり食ったりはしない。ブヨあたりだと、そう言ってよさそうな気がするが。
俺はどうだろう、とちょっと考えてみたんだが、はっきりしない。
「かまれる」でないことは確かなのだが、「くわれる」かなぁ…。その場合、「
かいる」という形になるのだが。なお、「
さされた」も「ささいだ」になる。
単純に形が変わってるだけだからか、『秋田のことば (秋田県教育委員会編、
無明舎出版)』にはその辺の記述がない。
なお、英語では“bite”である。つまり、英語の蚊は咬むのである。
医療関係の特許文書で、「虫咬まれ及び虫刺され」という表現を使ったのを二つ見つけた。医学的には別ものなのかもしれない(
創傷を治癒する組成物を含むレザーカートリッジ、
三環式芳香族化合物)。その割に「虫咬まれ」という単語の使用例はえらく少ないのだが。
「虫噛まれ」の方が多い。「咬」と「噛」の違いは、手元の漢和辞典では分からなかった。
数年前には、尻をかじる虫が話題になったことがあるな。
ここ数年、刺されたところが地腫れを起こすことが多い。
「地腫れ」というのは俗語的表現なんだろうか。この MS-IME の辞書に入っていないし、ググっても使用例が 3,000 件しかない。で、医学的な文書もほとんどなくて、辞書サイトと個人の文章が多い。
なんで、俚諺形もほとんど見当たらない。
「地」を脇において「腫れる」だけにすると、広島の「
いばる」などが見つかる。佐渡では逆に、腫れが引くことを言うらしい。
新潟や山梨では「
すびる」という語があるが、これはどうやら「しぼむ」ということらしく、膨らました風船が小さくなることを言う地域もある由。
痒みが収まってからも痕が消えるまでに一週間以上かかる。なんか体質の変化があったのか、それとも老化現象なのかはわからないが、後者かねぇ、やっぱり。