今回は、“
α-Kurasu”というフリーペーパーから。これはまぁ、いわゆるタウン情報誌で、イベントとか映画のスケジュールとか飲み食いの情報なんかが載っていて、巻末にはクーポン、という体裁。
その中に、「街角アンケート調査隊 聞きある記」というコーナーがあって、今回のお題は「あなたの好きな秋田弁は?」というもの。回答者がフリップを持った写真を持っていて、総回答数は 21.
うち、「
すったげ」「
んだ」「
ちょす」が 2 票ずつ集めている。
「
すったげ」は「
しんたげ」「
したげ」という形もあるが、強調の副詞。おそらく「死ぬほど」であろう。確か「新方言」で、年配の人は使わなかったり知らなかったりするはずである。
「
んだ」は説明の必要はあるまい。
「
ちょす」は「いじる」。
「
泣ぐ子はいねが」を挙げているのは、超神ネイガーの中の人の海老名保氏。そういや、「
琉神マブヤー」が
映画になるそうで、ネイガーもゲスト出演するらしい。本公開は秋だが、秋田で冬になるんだとか。なんでやねん。
「
あんぷら」はジャガイモ。前に取り上げたと思うが、元はオランダ語。
「え?」と思ったのは「
おさげっこ」。なんで「え?」と思ったかというと、「
げ」を鼻濁音で読んだせい。そうすると「お下げっ娘」になってしまう。「酒」のことを言う場合は「
げ」は濁音である。
わからなかった単語が三つ。
「
あだまがっけ」は『秋田のことば (秋田県教育委員会編、
無明舎出版)』で判明。「出っ張ったおでこ」のことらしい。元々、「おでこ」は「お凸」って書くくらいだから出っ張っているものなのだが、それのはなはだしいものを言う。青森では「
がっけあだま」という形もある由。
『語源探求 秋田方言辞典 (中山健、秋田協同書籍)』によれば「
がっけ」は「崖」らしい。エラい言われようだな。
「
えで へどな」は、全く見当がつかなかったのだが、調べてみて、別の語らしいということがわかった。
「
えで」は「父」「河岸の水溜り (堰堤)」「ひどく」がある。記事に説明がないので、どれなのかわからない。
「
へどな」は、「先だって」。「
せだて」「
ひんだて」「
しぇんどな」などの形がある。
「
はらつれぇ」というのを挙げている人がいたのだが、これは「
はらつえ (満腹だ)」であろう。
間違って覚えているのかと思ったが、ググっても記事は多数出てくるし、『語源探求』では「腹辛い」が元の形だとしている。一方、『秋田のことば』は「腹強い」である。
意味的には「腹辛い」の方が近そうなんだけど、「
はらつれ」って発音しているのを聞いたことがないんだよな、俺。
「
ねふかぎ」は微笑ましい。ここ数ヶ月、午前中に墜落しそうになるのだが、なんとかならんか。
秋田ローカルのバラエティ番組でも、あなたの好きな秋田弁を教えて、というようなのを紹介しているのを見たことがある。
そのとき、「
ままあめる」というのがあった。これは「ご飯が腐る」という意味で、確かに秋田弁らしいのではあるが、「これ、『好きな秋田弁』なのか」と司会者に突っ込まれていた。
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今回の記事ではそういうのがなかったので一安心。
一方で、秋田弁では明確な俚諺形はないが、「ありがとう」の類、それは方言なのが問題なのではなく、「ありがとう」と感じる心が良いのだろう、というのもなくてこれまた一安心。
そういうのが多いんだろうなぁ、と思いながら「好きな秋田弁」でググってみた。
ファミリーマート社長の上田準二氏は旧大森町出身だが、好きな秋田弁は「
あがってたんせ」だそうである。これは、「お入りください」もしくは「たべてください」だが、客商売をやっている人なわけだから、そこにプラスの価値を見出すのは当然、特段、違和感はない。
ほかでは、指小辞の「こ」がついた言葉をあげている人が見られる。響きが可愛いからだろうが、そもそも「指小辞」なのでカワイイ属性を持っている、ということもあろう。
逆に、俚諺形ではなく内容が問題なのだ、ということで「
じぇんこ (お金)」という人もいた。これはネタとして面白い。
“α-Kurasu”の記事では「
おなンこ (女の子)」というのがあったのだが、これもその系統だろうか。
俺は、聞かれるとちょっと困ってしまうのだが、昔、マンガで見たフレーズが印象に残っている。ただ、何で読んだのかは覚えていない。コミカルな SF 系で、女の子が主人公だったから、ひょっとしたら同人誌かもしれない。
追い込まれた主人公が、最後に決め技を出すときに「
シタランダッテガー!」と叫ぶ。
直訳すると、「じゃぁ、そうだって言うのか」ってことになるが、これはその状況の通りで、非常に困った状況に陥ったとき、あるいはキレる直前に出てくる。すごいフレーズもあったもんだと思う。