今年は、方言に関する本がたくさん手元にあってネタに困らないので助かる。
今週は『
「お笑い」日本語革命』。
この本の名前は知らなくても、『
全国アホ・バカ分布考』と言えばわかるかもしれない。
筆者の松本修氏は
朝日放送のプロデューサーで「
探偵! ナイトスクープ」を担当。視聴者からの「『バカ』は東日本、『アホ』は西日本の言葉のようだが、その境目はどこにあるのか」という投書を取り上げて番組で放送、後に本にまとめたのがこれ。
番組は、この企画で色んな賞を取り、この本も大いに売れた。Wikipedia には「
アホ・バカ分布図」という項目まである。
で、『全国アホ・バカ分布考』が
太田出版から出たのは 1993 年 (今は
新潮文庫にある) で、これを読んだとき、俺はまだ東京在住だった。会社の昼休みに興奮しながら読んだのを覚えている。
まもなく 20 年、なにかも懐かしい、って感じだが、その興奮再び、って期待で読んだ。
が、ちと肩透かし。
いや、つまらないというのではなくて、『分布考』と違ってエッセイなのだった。『分布考』が論文だったとは言わないけど、あれはかなり丁寧に調べてあったのに対して、こっちはインタビューが主。ややもすると個人的な印象に傾き、そもそもの姿勢が別の方向。それはそれとして、と読むべき本だった。
タイトルに「お笑い」とあることでわかるように、関西のお笑いの世界から全国に広まった表現について書いている。
筆者はお笑い関係の番組を多く手がけているので、芸人の知り合いも多く、笑福亭仁鶴、
桂ざこば、坂田利夫などにインタビューしている。
ビートたけしは本などを取り上げているもののインタビューはない。それは筆者が関西ベースだからかと思うが、ダウンタウンも同様。
石田靖を介しての談話はあったが、やっぱりダウンタウンは完全に東京ベースってことなんだろうかね。
最初に取り上げられるのは「
どんくさい」。
「
現代用語の基礎知識」は若者言葉の章を立てているが、1980 年代前半に載っていた、というから定着していると考えてよかろう。ただし、まだ関西起源だという意識は残っていると思われる。イントネーションは違うと思う。耳にするのは「ど
んくさい」の様な気がするが、本当は「
どんくさい」の筈である。
『千と千尋の神隠し』で使われていたことが述べられているが、こないだ「
スイートプリキュア」で中学二年生の女の子の主人公が使っているを耳にして、定着していることは理解しつつも、ちょっと驚いた。
次が「
マジ」。
これはもう完全に全国共通語。人によっては、関西風であるという感覚を持っていないかもしれない。
それがどこから来たものかは本を読んでもらうことにするが、松本氏が若手だったころは、これは関西芸人の楽屋言葉で、業界人とはいえ会社員である自分が使っていい単語ではない、と思っていたそうである。
この辺、氏の律儀な性格なのか、それとも本当に「隠語」だったのかは不明だが、現在の使われ方と比較するとなかなか興味深い。
この章では、
笑福亭鶴光へのインタビューがある。あの「
オールナイトニッポン サンデースペシャル」である。
俺も聞いてたなぁ。小学生のときだけど。時間が遅く (早く?) なると妙に真面目になって面白くないもんだから寝ちゃってた。そもそも、二時台だか三時台だかの「爆走レーシングゲーム
*1」は聞いてて楽しいものではないから、そこから眠くなってたし。
で、最近、思ってたのは、テレビでよく耳にする大阪弁と、鶴光がオールナイトニッポンでしゃべっていた大阪弁はちょっと違うんじゃないか、ということ。
それがこの本で解決。鶴光は、東京に進出するに当たって、わざと大阪弁を使った。しかも、落語で使われるような古い大阪弁を使った、というのである。
当時、
毎日放送でも番組を持っていたが、そこでの言葉遣いとは違っていたらしい。
『
セイ! ヤング & オールナイトニッポン 70 年代深夜放送伝説』という本も出ていて、それにも書いてあったが、占拠率 90%
*2 というから、ものすごい人気だったんだなぁ。
洋楽を聴くようになったのもこの影響だし (今は聞いてないけど)、オープニングの“BITTERSWEET SAMBA”は今でも覚えている。
中学校に入ってからは聞いてない、と思ったが、日高のり子がアシスタントをやってたの知ってるなぁ。「崖っぷりトリオ」とか言われてたよな。と、また、「スイートプリキュア」につながってしまった。あ、これも朝日放送だっけね。
あれこれ語ってたら、二語で終わってしまった。
つづく。