Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第726夜

うだでぐうめよ



 車がらみの方言、つづき。

車に積む」と言ったら、何を。
 どうやら四国では人のことらしい。
積んでって」というのは、「車に乗せてって」という意味なのだそうだ。高知と徳島の人の記事が見つかる。
 いや、まぁ、物理的には同じことである。逆に、荷物の方には「のせる」と使うことがある。尤も、字は「載せる」になるが。
 昔、山手線で、ラッシュ時間帯にはシートがたたまれてしまう車両が導入されたとき、「荷物扱いされてるみたいで嫌だ」という意見があったが、それを思い出した。
 当地の人たちは、自分のことを荷物だとは思っていないに違いないが。

 では荷物の方は。
 山形と宮城で、「荷物をつける」という言い方を見つけた。意味は勿論、「載せる」。福島、山梨、長野、新潟、福井の例が見られる。
 原付の後部キャリアにくくりつけるんだったら「つける」でも違和感はないが、トラックの荷台とかだと驚くかもね。

 もう一つの「つむ」。今度は、「車が」。
 これは渋滞。
 三重がほとんどだが、大阪、和歌山の例も散見される。
 大辞泉で「詰む」を調べてみると:
1 布地などの目が密になる。「目の―・んだ織物」
2 将棋で、王将が囲まれて逃げ場がなくなる。「あと一手で―・んでしまう」
3 行きづまる。窮する。「理に―・む」
 だそうだが、2 が一番近いと思う。他動詞の「つめる」だと意味が 12 個もあるのだが、ギュウギュウになってる状態を想像すると納得がいく。

 面白いの見つけた、と思ったら実は微妙だったのが「頓車」「豚車」。
 北海道方言辞書 によればタクシーのことらしいのだが、どうもそれに触れている記事があんまりない。「タクシー」と AND をとっても数十件しかでてこない。
 文脈で推測した感じでは、「頓車」は重量の単位を言っているような気がする。トラックとかにふれた記事でよく見る。ただし、重量のトンの漢字は「屯」である。
「豚車」になると揶揄のニュアンスを帯びる。まぁ、しょうがあるまい。
 こっちも重さについての使い方があるが、これはなんだか乗用車の雰囲気。ワゴンの類の大きな奴について、そういう趣味の人たちが使っているようだ。
 かと思うと「象豚車」っていうのもある。どうやら、改造して積載量を増やしたトラックのことらしい。本来は「増屯車」ってあたりか。
 いや、この解釈にはあんまり自信ないんだけども。ほんと、車にうといわ、俺。
 ゲームの世界には、馬車、牛車ならぬ「豚車」というのがあるそうで、それについての記事も多い。

 最後。
 見るテレビ番組が偏ってるもんだから、話題になってるなんて知らなかった。
 トヨタパッソの CM.
 出演しているのは、仲里依紗森三中。今なら、オフィシャルサイトでムービーが公開されているので、未見の方は是非。
 どういう CM かと言うと、パッソで乗り付けた仲里依紗たち、バゲットの入った袋を手渡しながら、なにやらオシャレな会話。
 字幕までついてるのでフランス語かと思いきや、これ実は津軽弁。
 書き取ってみた。
わのかでパン、しけるめになべさフォンデュせばうだでぐうめよ
(私のフランスパン、焼きたてのうちにお鍋でフォンデュすれば、美味しいですわよ)
せばだばやってみら
(それでは、やってみますわ)*1
「焼きたてのうちに」は意訳で、直訳だと「湿気る前」。
 びっくりしたこと二つ。
 仲里依紗の津軽弁がうまい。つか、きれい。彼女は長崎出身らしいのだが、おそらく演出時に「フランス語風に」というような指示があったのだと想像する。
 それと「うだでぐうめよ」。
 秋田弁で「うだで」というのは、不快感・嫌悪感の表明である。津軽では単なる強調なのか。
 もっと言えば、「鍋さフォンデュ」というのにも違和感がある。この場合、「」ではなく「で」の様な気がする。
 東奥日報が記事にしている。
 これによれば、方言指導をしたのは、高谷智子という俳優さん。「三丁目の夕日」でも方言指導をしてたらしい。
 面白いのは、このプロダクション・タンクという事務所のサイトには「方言指導一覧」というページがあること。俺が見た作品がたくさん並んでいる。

 さて、ディーラーに行ってくるか。




*1
 書き取った人は多いようだが、冒頭部のヒアリング結果が人によって違う。「かでパン (堅いパン)」だと思うが…。(
)





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