Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第718夜

方言萌えで GO (前)



 NHK の「みんなでニホン GO!」が方言を特集した。
 前から見てて、たまに方言が話題になることもあったが、チラホラって感じだったので取り上げられずにいた。
「正しい日本語」教を推進していないのは好感が持てるものの、どっちつかずというか、単に丸くまとめちゃったねぇ、って感じが時々ある。

 冒頭に出てくる、「方言キャバレー」は「白いばら」。ググると山ほど出てくる。オフィシャルサイトはないようである。さもありなん。
 因みに俺は社交性に欠けるので、そういう場所は苦手である。もちろん、向こうはプロだから盛り上げてはくれるんだけど、そういうのにノれるまで時間がかかって疲れる。
「なまらナイト」「方言 CD」「方言恋愛」は前にもちょっと触れた。まだ見てないし買ってない。「方言恋愛」は出演者を募集しているが、まだ秋田と青森がないので応募してない。

 コトダマ君を使ったアンケートは、方言が「いいな」は 96%、「やだな」は 4%. 番組史上初というくらいの大差だが、面と向かって聞いたらそういう数字になるのは当然。方言を使ったことで不愉快な思いをすることは多かったはずである。
 あと、意地悪な意見だが、質問された方は「方言」を「自分の方言」と捉えたはずである。ほかの人、他の地域の方言も含めて全般的な質問をしたらどういう数字になっただろう。
 例えば、「大阪の人はどこに行っても大阪弁を使う」ということに対して好感を持っていない人もいるはずだし、隣県や県内の別の地域の言葉についてマイナスの感覚を持っているということもある。仕事などでよそに行って相手の言っていることが解らなかった、という経験をした人も山ほどいるはず。そういうこともひっくるめてどうですか、と聞いたら、必ずしも方言について肯定的な意見ばかりではないだろう。相当に寛容でなければならないわけだから、こんな大差にはならないのではないか。あるいはこれも、面と向かって聞くことで、同じような結果になるだろうか。

 番組中で紹介された、銀座で行われたアンケートでは、方言を誇りに思う、という人の割合が:
20-30 代 80
40-50 代 56
60 代 41
 となっていた。
 高齢層になると下がるのは、方言は悪い言葉だという教育をされた世代であることを考えれば当然のことだが、「好きですか」と聞くとまた別の数字になったはずである。ひょっとしたら、逆転したかもしれない。

「方言冬の時代」として、明治時代の「第一の波」、昭和の「第二の波」を紹介していた。
 このことは広く知られていることだが、「標準語の強制」は戦争と深いかかわりを持つ。国から押し付けられるものであった。あるいは「標準語」という単語が嫌われるのもその辺と関係があるのかもしれない (なので、今回は「全国共通語」を使う)。
 それと同じものを「正しい日本語」って単語に感じるのだが、言ってるほうはそうは思ってないんだろうね。
「第二の波」の方では、昭和の初め、NHK は各放送局での放送を方言でやろうと考えていた、というのに驚いた。「方面用語」という表現がいかめしいが、それが実現していたらどうなっただろう。
 秋田はまだいいが、青森みたいに県内ではっきり言葉遣いが違っている県とかは。方言の衰退が逆に進んだりしないだろうか。
 ローカルニュースくらい方言で、っていう意見は時折聞くが、秋田県内の放送をすべて秋田市の方言でやることに果たして正当性があるかどうかは疑問。この辺、日常的に行われている沖縄の事情を聞いてみたい気がする。案外、気にしてないかもしれないが。

 観客も含め「とても」に相当する語を聞いていた。例文が「とても好きです」なので、方言で言われるとグッと来る、というような意見が出たが、ここで解説委員の梅津正樹氏の一言がよい。
 東京の人が言ったらグッと来ない、ってことですか
 当然の抗議であろう。
 東京に方言がないわけではないんだけど。
 思いつきなんだが、全国各地の人が集まって形成されている現代の東京弁が全国共通語になってしまっている、ってことなのかな。全国の人が東京の言葉を真似ているわけじゃなくて。芸人の大阪弁が大阪弁だと思われてしまっている、というのと似たような感じで。

 つづく。




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