久しぶりに「
週刊ことばマガジン」を見た。
バックナンバーを確認したら、どうやら 11 月の下旬、
秋田朝日放送がやった「こみっと」が最後だったようだ。
去年はなんだか見るテレビが多くて、しかし平日に見る暇はないから、土日に集中視聴、「ことマガ」が押し出されてしまう、という状態だったのだ。年末スペシャルもあったらしいのに迂闊だったぜ。
で、取り上げていたのが山形の「
あぱとぱ」。
意味は、バタバタしているとか、慌しい、忙しいという感じ。
そんなにマイナーな表現でもなさそうな気がするんだが、ググってみたら 50 件しかヒットしなかった。しかもその大半がこの「ことマガ」関連の記事。
茨城でも言うらしい。
これは擬態語と分類される種類の言葉である。物事の様子や状態を示すのだが、擬音語と異なり、多分に感覚的なもので理屈で説明できない。
「ことマガ」では、小林隆氏が「あぱとぱ」を「
あべこべ」から来ている、と説明していた。遠いようにも思えるかもしれないが、混乱した状態だから慌てふためくことになる、と考えれば接点はある。英語の“upside-down”と似たような発想と言えるかもしれない。
で、こういう風に説明できるのは例外。「なんで熟睡することを『ぐっすり』と言うのか」「なんで笑っている状態を『にこにこ』と言うのか。『へらへら』ということもあるがそれはどういう理由か」なんて聞かれても説明できない。
したがって、おそらく方言間での意思の疎通はものすごく難しいと思われる。意味を知らない人が「彼はへらへら笑っていました」と聞かされて説明なしそにのニュアンスを理解するのは不可能だろうと想像されるが、それと同じような感じ。
自分で書いても覚えてないもんで、擬態語を取り扱うのは初めてだと思ってたが、実は何回かある。そのうちの一つでは、擬音語とごっちゃになった (「ごっちゃ」について説明せよ!) 書き方をしている。困ったもんだ。
「擬態語 AND 方言」でもヒット数は多くない。これだけ漠然とした条件なのに 46,300 件。この中には、「擬態語」と「方言」について取り上げている言語学関係の記事や本の紹介も含まれているわけだから、かなり少ないと言っちゃっていいのではないか。
Wikipedia で「擬態語」を引くと「擬声語」にリダイレクトされるが、日本語について説明したセクションで、正式な表現と思われていないため研究対象となってこなかった、というようなことが書かれているが、それと関係あるのかもしれない。
逆に、理屈で説明できないということは、理屈でなくしみついている、ということである。
であれば、「気づかない方言」になっていることは少なくないのではないだろうか。
実際、「擬態語 AND 方言」で検索すると、「○○って方言なの?!」というような記事も多い。
まぁ例によって、自分になじみがないから、俗語的だから、というだけで方言と断定している記事もまた少なくはないのだが。
で、ネットで集めた方言の擬態語をいくつか。
新潟の「
ボトボト」。
粘着性の物体がこぼれ落ちる様子ではなく、忙しい様子。職場が
ボトボトしてたりするわけだ。ほら、聞かないとわからないでしょ。
確かに「バタバタ」と似てはいるが、「
ボトボト」と聞いて「バタバタ」の関連語だと思う人はそんなにいないだろう。もっともこれは、既に書いたように「
ボトボト」に別の意味を当てる場合がある (しかも全国的にはこっちが通る) せいもあるだろう。
形が衝突する、というのでは、「
にやにや」を思い出した。笑ってるのではなく、腹部の鈍痛である。
これは有名かもしれない。北陸の「
じゃみじゃみ」。
放送終了後のテレビ画面、いわゆる「砂嵐」のこと。
いや、「
じゃみじゃみ」って言葉も確かにユニークだが、あれに名前がついてるってこと自体が不思議だ。どういうときに使うんだろう。テレビ見てたら眠ってしまって、起きたら
じゃみじゃみだった、位しか思いつかないのだが。
ただし、画像が乱れていることを言う、という記事もわずかながらある。受信状態の悪い地域であるとか、アンテナが故障したとか、そういうときにも使うのだろうか。
その応用か、画像ファイルのデータが壊れていることを言っているケースもいくつかあった。
目が霞んでいる状態、という説明も見た。こっちが先だったりするだろうか。
福井出身の
天谷由佳というフリーアナウンサーが、これを辞書に載せようという
ブログを開設している。2008 年で止まっているが。
「砂嵐」ってのもすごいよな。砂嵐を見たことある人ってそんなにいないと思うんだけど。
今週はこの辺で。来週は秋田弁方面に行く予定。