Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第680夜

ウチナーグチのヒーロー ソング



 で、「琉神マブヤー ミニアルバム」を入手。4 曲で本当にミニ。

 まずは主題歌、「琉神マブヤー〜魂の戦士〜」。歌うは、かのアルベルト・シロマ。
ウチナーがあぶない でーじ超ヤバイ」。
 やっぱりウチナーヤマトグチだよね、きっと。「超」が出てくるんだもの。
アチコーコーのハートで勝利をつかめ」
アチコーコー」は「熱い」という意味だが、そういう名前の食い物屋が多い。その場合、「暖かい」という解説がされている。
「コーコー」が強調の意味の語尾というわけでもないらしい。

 二曲目は「なないろマブヤー」という、子供向けの数え歌みたいなもん。
「赤マブヤーがにげちゃうと」てな歌いだしで、なんでマブヤーが逃げるんだ? と思ってたが、これは琉神ではなく「魂」の方だろう、ということにやっと気づく。
 途中に入る、「マブヤー、マブヤー、ウティクーヨー」は、「魂よ、戻って来い」という意味で、沖縄のおまじない。くしゃみしたときとか転んだときには魂が抜けてしまう、と考えて、それを取り戻す作業が必要になる。場合によっては、転んだ場所に戻ってやるらしい。「琉神」のドラマでも、主人公の叶がマブヤーになったのはこの作業による。
 つづいて「ウーメークヮッティ」というのは、「魚とご飯を食べなさい」で、マブヤーを釣るためのエサのことだそうだ。
 自分の魂じゃないのか、とかいうのはさておき、マブヤーは「魚飯」というのが好物らしいので調べてみたのだが、ヒットせず。なんか、今は作られていない、というような感じもしないことはない。
 ヒットしなかったとは言え、「魚飯」という語自体は多数見つかる。要は魚をほぐしてご飯にまぶしたもんだと思うんだが、それって一般的なもの? なんの説明もなしに使ってる記事が多いんだけど。
 その代わりと言ってはなんだが、四国の方でこれを「いよめし」と呼ぶという記事発見。
 歌詞の「ウーメー」って「魚飯」のことだと思うんだけど、だとしたら「魚とご飯を食べなさい」という説明は不正確なんじゃないだろうか。

 三曲目は「ゴーゴー! マジムン」。
 これがわからない。全編 (ウチナー) ヤマトグチで、ドラマ本体と同じように一切解説なし。どこで切るのかも解らないので大苦戦。解析結果を披露する。
めーなち毎日
どぅーかってぃ自分勝手
やなわらばーやんちゃ坊主。「わらばー」が「童」なんだと思う。でも、後で同じ意味だと思われる「わらび」って単語が出てくる。琉球新報の記事によれば、「わらばー」は「子供」というより「ガキ」というニュアンスらしい。
がんまりいたずら
ちぶる頭。脳みそをモチーフにしたデザインがウルトラセブンの「チブル星人」ってのは前にも書いた様な気がする。
かんぱち平たく言うと、「十円ハゲ」。この辺の歌詞は、「子供の頃はかなりいたずらをしてて、頭には十円ハゲがあった」ということだと思う。
ちくてぃわからん。「作って」ということもあるらしいのだが、その後の「母親 (あんまー) に怒られ (わじらり)、あれこれ (あまくま) 叱られ (すぐらりぃ) 言われて (あびらり)」とつながらない。いや、後半部の解釈が間違ってるかもしれないわけだが。
ぬーがわっさみ「何が悪い」だろうか。
ぬーやてぃん何でも
ごーぐち文句。「何をやっても文句を言われる」?
生卵まし「生卵が美味い」だろうか。
あたびーカエル。蛇だからカエルも食うだろうなぁ。
ばちないたくさんって意味の様な気がする
あまはいくまはいあっちに行ったりこっちに行ったり
てぃーあんだー手の脂。手をかけて作った料理はおいしい、というような文脈で使う。ハブデービルは自分の母親の手料理が一番好きらしい…って違う?
うりひゃー「うるさい」ではなく「うわーい」。
 わからないところを書いていこうとすると全文を持ってくるほどの勢いであり、著作権上問題になるので控えたが、ここ、歌詞を知らない人にはわけのわからんことになってるかもしれないな。
 その辺を頓着せずに上げている人もいるので、探してみるのも一つの方法。
 これもやっている人がいるが、訳を公開するにも著作権者の許可が要る、ということは書いておく。

 4 曲目の「アイ♀アプリ」は、マブヤーの曲と言うより、応援団であるザ・ココナッツというグループの曲という感じ。全編標準語。

 というわけで、3 衆に渡って紹介してきた琉神マブヤー。
 地元では続編も始まっているらしい。
 弟分として「龍神ガナシー」というのが登場しているそうだ。どうも「がなし」は「様」に相当する語らしい。「龍神様」ってことになるんだろうかねぇ。
 これが見られるようになるのはしばらく後のことだろう。やらないかもしれないけど。
 まずはここまで。




"Speak about Speech" のページに戻る
ホームページに戻る

第681夜「言語よさらば」へ

shuno@sam.hi-ho.ne.jp