Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第674夜

ケータイする方言



 秋口に携帯電話を買い換えた。
 前のを使い始めて 2 年半。バッテリーがくたびれかけていた、というのが一つ。
 それだけならバッテリーを交換すれば済む話なのだが、ここのところケータイから Web にアクセスすることが増え、例のケータイ式人力にストレスが溜まっていたのが二つ目。QWERTY 式のが欲しかった――と書いてしまうと、買い換えた機械は相当に絞られるな。
 ケータイは高くなった。平気で 4 万とか 5 万とか言う。買い替えを躊躇させるのには十分な額である。
 しかしキャンペーンもいくつかあり、店舗独自のものも組み合わせると、なんとか予算内に収まったので、買い替えに踏み切った。
 これがまた困ったことになっている。敢えて言おう、失敗であった、と。
 流行のタッチパネル式である。これが使いにくい。
 タッチパネルだから触れば動作する。ポケットに入れておくと、服とすれただけで反応する。一番恐いのは、簡単に通話履歴両面に切り替わってしまうこと。そこで追加アクションすると電話がかかってしまうじゃないか。
 パネルをロックするボタンはある。端っこにあるボタンを数秒、押しっぱなしにするとタッチパネルからは操作ができなくなる。安全にはなるが、今度は不便である。
 かかってきた電話を取る事は出来るが、音量を変えられない。鳴動しているアラームを途中で止めることができない。音楽を聴いているときは、それに関する操作が一切できない。必要になったときには、その端っこのボタンをまた数秒、押しっぱなしにしなければならないのだ。
 タッチパネルの応答が悪いのは目をつぶるにしても、操作性の問題はほかにも色々ある。使い勝手を考えて設計したとはちょっと思えない。

 さて、ケータイをどうやって携帯するか。
 手に持って歩いている人が少なくないのには、両手はフリーにしておきたい俺にとって信じがたいことではあるのだが、若い人は「持って歩いている」というより「常に使っている」という感じなので、邪魔になる、とかいう視点ではないのかもしれない。それにしても、大半がよそ見していることになるので、街中が危険になってしょうがない。
 ポケットに入れてる人も多いようだ。

 で、ポケットである。
 元々が外来語だし、和服にはないものだし、と思ったが、かと言って和服では全くものを持って歩けないわけではない。あるかな、と思ったらあった。
「かくし」である。「隠し」で、大辞林も「洋服などの物入れ。ポケット」としている。
かぐし」など、このバリエーションが全国に多い。

 西日本には「おとし」という語もあるようだが、例がかなり少ない。
 これも例が少ないが「どんぶくろ」というのも見つかった。
 あんまり少ないので、どこの言葉かは書かない。興味がある人は探してみてください。

 次、和服といえば、の「ふところ」。
 これも形の変わったのが多い。
ほとくら」「ほとくれ」「しところ」「ほところ」「ほどこ」「ほどころ」「ふとくら」「ほどくら」「ほどくろ」「ふつくら」「ほとこり」などなど。
 九州に「つくら」という形が広がる。どうも「ふつくら」の「ふ」が脱落したものの様である。
ぽっぽ」という形がある。大辞林にも載ってるから、方言だと断言するにはいささか躊躇があるが、これはむしろ大辞林載せすぎって感じなのかもしれない、という気はしている。
 町田の「まちの駅」が「ぽっぽ町田」という名前だそうだ。紹介ページでは多摩の方言としているが、関西方言だとしている人もかなりいる。

 数ヶ月使ってみてわかったのは、バッテリーの性能は上がっているのに違いないが、機能が増えたせいなのか、フル充電してから持つ時間は決して長くなっていない、ということである。理論的にはともかく。
 それでは意味がない。使いづらいことも考え合わせれば、やはりこの買い替えは失敗だった。
 とりあえず一年は我慢してみようと思うが、もう買い換えたいという気になっているところである。




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