Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第670夜

北の法被網



 門外漢ではあるが、秋田のスポーツの話。

 こないだ、秋田のプロ バスケットボール チームの名前が決まった。
 当初、9/10 に発表のはずだったのだが、応募数が予想外に多くて選考が間に合わず、2 週間延期した。
 新聞記事にもなっているが、その中には秋田弁を取り込んだものも多く、俺もかなり期待した。
 そして連休最終日の 9/23 に発表。
「ノーザンハピネッツ」。
 方言はどこへ行った。秋田らしさはどうした。

 応募総数は三千を越えたそうである。
 9/10 の記者会見では全部を印刷した紙がテーブル一杯に広げられたらしい。写真に一部が映っていたので、そこから秋田弁らしいものを読み取ってみた。端っこしか映ってないので、ア行とカ行ばっかりである。

アテルイ
 坂上田村麻呂と戦った蝦夷の長の名前である。
 秋田弁というのとは違うし、そもそも秋田の人ではない。
 だが、北東北発のプロバスケットチームということで選ばれたのであろう。

アラゲクラッサ
アラゲ」と「クラッサ」だと思う。
 おそらく前半は「暴れる」という意味の「荒げる」であろう。
 後半はわからない。「くわらす」から来たのだろうか。

アラゲルズ
アラゲル
 前述。

オモシェ
「面白い」。
 スポーツチームにつける名前としては異色と言っていいかもしれない。
 地域を面白くしてくれるように、という意図だろうか。

カダール
「仲間に入る」という意味の「かだる」であろう。「かててくわえて」の「糅てる」である、ということは何度も書いた。
 ちなみに、青森市の複合ビル“AugA”内の「男女共同参画プラザ」が「カダール」という名前である。

カダパリハリー
 この辺から写真の字が小さくなって読み取りに自信がない。
「意地を張る」ことを「かだぱりこぐ」と言う。それであろうか。「肩張り」である。
 ネーミングの由来は不明。

ガッセエル
 わからない。でもなんだか方言臭がする。

カデッテバ
 おそらく「勝てってば」だと思う。ファンの悲痛な願いが込められている。発足したばかりだというのに。

 記事に紹介されていたのは他に「カントーレ (竿灯)」「ゲハマーナ (なまはげ)」「シダーズ (杉)」がある。

「ハピネッツ」を考えた人と選んだ人には申し訳ないが、少なくとも、強そうな感じはしない。「ハッピー」の「ネット」という発想はいいと思うんだけど。

ハピネット」という映像ソフトの会社がある。スポンサーになってもらったらどうか。

 ラグビーの「ノーザンブレッツ」と揃える形で「ノーザン」をつけたのはイメージ戦略という点で大いに評価したい。
 聞くところによると、新潟では「アルビレックス」を、サッカーだけではなく陸上やウィンタースポーツのチームまで冠しているという。

 なお、「ノーザンブレッツ」命名のもとになった“bullet(s)”はどちらかと言えば「ブリッツ」が近い。
 さらに逸れれば「・」という記号は、「バレット」と呼ばれる。同じ語である。

 ノーザンハピネッツが属する bj リーグのほかのチームを見てみる。
 最も解りやすいのが、「京都ハンナリーズ」。オフィシャルによれば「上品で明るく華やかなさま」で、プラス イメージの語ではあるが、スポーツ チームの名前としてどうか、という気はする。
 逆に一番わかんなかったのが、「仙台 89ERS」。
 仙台市が生まれたのが 1889 年、政令指定都市になったのが 1989 年ということで、仙台に関係の深い数字、ということらしい。
大阪エヴェッサ」は、調べようとした瞬間に解った。「戎さん」「えべっさん」であろう。
大分ヒートデビルズ」は、意味はわかるとしてなんで大分で、と思ったが、別府温泉の地獄めぐりだそうだ。まさに地元密着。ロゴに温泉マークがついてるのもほほえましい。
琉球ゴールデンキングス」もうっかりすると見過ごしそうになるが、昔、琉球は王国だったから「キング」、と聞けばちょっと背筋を伸ばしたくなる気もしないことはない。

 今回のことで知ったのだが、バスケットのコアなファンのことを「ブースター」というらしい。

 それにしても、ノーザンハピネッツ。
 ここには書かないが、妙な省略で揶揄されないことを祈る。




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