Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第669夜

ダジャグかダジャクか



 久しぶりにネイガーの CD が出た。
 大豊作フォームのテーマソング「正義ノ稲穂」。カップリングは「夢刈人」。

 作詞は以前と同じ高橋大氏。
 作曲は渡辺俊幸氏。ニュース記事にはさだまさしのプロデュースとか書いてあり、確かに事実としてはそうだろうが、この CD について紹介するときは「救急戦隊ゴーゴーファイブ」「平成モスラ三部作」を挙げねばなるまいよ。
 編曲の猪股義周氏は、特撮こそないもののアニメ番組の劇伴も手がけている。
 歌うはもちろん、水木「アニキ」一郎

 レコード会社がインデックスからティーワイというところに変わってる、と思ったら、別の会社ではなく資本関係が移って名前が変わったということらしい。

 方言濃度は低い。つか、ほとんどない。
“Go! Sure Get. Now! Mach Get.”みたいな言葉遊びはある。
 歌詞が、A-B-A'-B-サビという構成なのに、メロディが B の繰り返しを無視している辺りがちともったいないと言えばもったいない。いや、盛り上がってるからそれもいいんだけど。

 さて、数少ない秋田弁について。
 ネイガーと言えば「だじゃく組合」だが、その「だじゃく」が出てくる。

 この人たち、一貫して「だじゃ」だなぁ。俺の感覚だと「だじゃ」なんだけどな。
 ネイガー発祥の地、由利の特色かと思って『本荘・由利のことばっこ (本荘市教育委員会、秋田文化出版)』を見てみたが、これも「だじゃぐ」だった。まぁ、「だじゃく」という形がないこともないようだが。

 で、辞書では「惰弱」「懦弱」という字が出てくる。意味が、見た目どおり「弱い」であることは大分、前に書いたと思う。大辞泉では「意気地がない」とか「勢力や体力などが弱いこと」とある。これは、「乱暴だ」「わがままだ」「横車を押す」といった我々の語感とまったく接点がない。
 そこで『秋田のことば (秋田県教育委員会編、無明舎出版)』にあたってみたが、「自制心がきかない自己本位の振る舞いをすることや、筋の通らないごね方をすることについていうようになった」とある。まぁ、確かに、弱さと通じていないことはない。
だはんこぐ」という言葉もあるらしく、これは「暴言を吐いたり文句を言ったりすること」で、それを「だじゃくこぐ」と言う地域もあるらしい。

『語源探求 秋田方言辞典 (中山健、秋田協同書籍)』はどうか。孫引きだが『鹿角方言考』は、怠惰の意味を含む横着、ということで「惰着」とする、いささか民間語源的な説明を紹介しているが、最終的には、「傍若無人」の「傍若」が変化したものとしている。

 みんな説明に苦労しているのである。

『ことばっこ』に戻ると、ちと別の側面が出てくる。「横着」「怠ける」という説明が見られるようになるのである。「本荘・由利では自主性がなく、怠け者という意で使用されることが多い」となっていて、「しぇやみこぎ」を参照するようにという指示すらある。
 一つ気になるのは、人のものを黙って持っていく「だじゃぐ」な者のことを「横着」と表現しているのだが、それって「横着」だろうか。あるいは、説明で使っている語に対する語感が食い違っているのかもしれない。
 ここでも、「惰弱」という語は出てくるのだが、意味の乖離については説明がない。

 それにしても、「だじゃぐ」をググると大半がネイガー関係の記事。
 おそるべしネイガーの威力。公式設定では「だじゃく組合」なんだよ、ということはさておき。

 ひそかにローカル色があるのが、「夢刈人」の歌詞で、「今日も山から陽はのぼる」という一節。
 日本海側では、山のほうから日が昇り、海のほうに日が沈む。夕日の景勝地なんかでは、沈むときに「ジュッ」と音がする、とかいうヨタだか宣伝だかわからない話もある。

 そういやもうすぐテレビの番組改編期。
 今年はネイガーのドラマやらないのかなぁ。




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