Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第652夜

ここだけの話 (前)



 興味を持ったとしても確認しにくいものを紹介する。
 芳文社の漫画雑誌「増刊 本当にあった (生) ここだけの話 まるごと県民性 SP」。
 正確な発売日がいつだかは知らないが、多分 5 月の中旬だと思うので、今から見つけるのはちょっとつらいかもしれない。
 内容は、読者からの投書を漫画化したものと、漫画家自身の郷土話。旅行話もある。

 方言話が主眼ではなく地方話なので、やはり食い物の話が多い。
 まずは、北海道の「中華まんじゅう」。細長い「おやき」に見える (北海道人の「中華まんじゅうのフシギを訪ねて」や「お葬式と中華まんじゅう」あたりが詳しい) が、これは「葬式まんじゅう」としても利用されるらしい。ニクマンアンマンを想像してるとがっかりするだろうが、あれって「中華まん」だもんな、「まんじゅう」じゃなくて。
「中華まん」の方は、タレをつけるところ、カラシをつけるところと色々あるらしい。
 愛媛の「タルト」も想像を裏切られるお菓子のようだ。餡をスポンジ生地で巻いたもので、したがって断面は「の」の字になる。そういうキャラクターもいるそうだ。チラっと見たけど、ネイガーのホジーネみたいだった。
 菓子から食事方面に移ると、鹿児島には「とんこつ」という料理がある。豚であることは間違いなく、骨付き肉を煮込んだものだそうだ。旨そうだな。
 豚骨ラーメン自体もあるこたあるらしい。当たり前か。
 室蘭の「焼き鳥」が豚串であり、共通語の焼き鳥に相当するものは「かしわ」と言う、ということは前に紹介した様な気がする。

 ちょっと印象に残ったのは、静岡・愛知・岐阜の類似。
「旨い」が「うみゃー」、「高い」が「たきゃー」というのは、静岡でも愛知でも言うだろうし、「疲れた」という意味の「えらい」や、山ほどの食べ物がついてくる喫茶店のモーニング セットは岐阜でも愛知でも出てきていた。後者の全国的な知名度としては、名古屋のもんじゃないんだろうか。

 正統に方言の話。
 一番は、富山の「ボーナスあたる」。勿論、「ボーナスが支給された」という意味だが、確かにびっくりするわな。ググると結構、見つかる。
 解説無しの会話があるので、解読してみたい。
あんにゃおっじゃやったがけ?貴方は次男でしたっけ。
な〜ん、あんまだちゃよ。いいえ、長男です。
そんながけ。だいそーどーやねー。そうですか。大変ですね。
 合ってるだろうか。
 まともに調べたわけじゃなくて、「おっじゃ」「あんま」を調べて見当つけただけなんだが。
 秋田弁でも次男は「おんじ」である。

 大阪の「いっしゅく」は聞いたことなかった。「しょっちゅう」「頻繁に」というような意味らしい。

 静岡で「とぶ (走る)」と一緒に「こわい」が紹介されている。「硬い」ということらしいのだが、ニュアンスとしてどうなんだろう。
 東日本の俺としては、本来はやわらかいものが固くなっている、という感じがするのだが。「筋肉がこわばっている」から「疲れた」という意味になるのだし、炊き込みご飯の「おこわ」もそうだし。漫画では煎餅のことを形容していて、ちょっと違和感があった。
 ちょっと調べたところでは、「みるい」の反対語らしい。これは「若い」というような意味ももっていたはずである。
 方言から離れるが、静岡は新製品のテスト販売が行われることが多い。漫画では、日本のほぼ中央にあるからか、としているが、さまざまなデータが全国平均に近いからである。
「きわめて平均的」がウリの「あ、安部礼司」の主人公が静岡出身という設定なのも、その点によっているはずである。
 最後に、焼酎のお茶割りが取り上げられている。
 こないだスーパーで買って飲んでみたのだが、さっぱりしすぎである。ブレンド比率に研究の余地はあるのかもしれないが、酒を飲んでるって感じが全くしなかった。
 尤も、アルコールにカフェインが入った日にゃ、すっかり胃の弱くなった俺には問題のある飲み物だがな。

 続きます。




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