Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第569夜

「ケータイ」な方言 (下)



 BS-i の屋台骨、「ケータイ刑事」で語る方言、第三週。
 何やってんだよ、と言わないでください。いや、そんな真面目な人はここ読んでないと思うけど。

銭形雷」からまた 9 ヶ月の休みを挟み、事前の特別番組や、横浜球場での始球式登場というイベントで盛り上げて登場したのが、大政絢の「銭形海」。
 大政絢は北海道出身。まだセカンド シーズンがはじまったばっかりってところなのだが、いかにも北海道弁という感じの発話は確認できていない。イントネーションなど「あれ?」というのはあったような気がするのだが、微妙すぎて、今時の発音なのかどうかわからなかった。
 今回のパートナーは引き続き草刈正雄

 草刈正雄はどうもこういう話が大好きらしい。メイキングやインタビューでもそう明言しているし、「ケータイ刑事」からのスピンアウトとも言える「0093 女王陛下の草刈正雄」というスパイもののパロディ映画にも主演。「映画秘宝」という雑誌のインタビューで、昔は二枚目だといわれることがあまり好きではなかったが、こういう路線が定着した今では、そう言われると素直にうれしい、と語っている。

 で、高村編の最終回の前、第 12 話が、「ほんなこつ、このばかちんが〜方言教室殺人事件(林誠人)」というエピソード。
 これも高村が小倉の友人と電話で話をしているのだが、海には理解不可能。電話が終わって、海が雰囲気をまねて「ばってん」と言うと、「ばってん」は小倉ではなく博多だ、と高村が抗議する。
 さて、今回もネタバラシをする。放送したのは 9 月末だが、春くらいには、TBS で放送するとか、DVD が発売されて碇のストラップが初回限定の特典としてつくとかいうことになると思うので、それで見ようと思ってる人はすっ飛ばしてほしい。一応、区切ろう。



 犯人は語学教師 (原史奈)。生徒 (宮下ともみ) に、遺書として読めないこともない、という文章を和訳の宿題として出し、その上で殺害、自殺に見せかける、という手口。
 文章は、ついてないことばかりで人生に絶望した、というものなのだが、その例として、水溜りにはまって靴をダメにしてしまった、という文を含んでいた。
 しかし、生徒は北海道出身だった。訳文の日本語表現として、北海道弁を使ってしまう。答案に「タコをつる」という表現を見つけた犯人は、それを遺書として完成させるため、被害者を元気付けるためという口実でタコ釣りに誘う。
 だが、タコ釣りに行くことで人生に絶望する、というのはどう考えてもおかしい。そこが突破口になって、犯罪が露見する。



 なお、その宮下ともみも北海道出身である。
 ついでと言ったらまことに失礼だが、銭形泪以降、第一話に「○○クイーン」の称号を持つ役で登場しては殺したり殺されたりして、出演エピソード 17 話と、主役を張った堀北真希より登場回数の多い「クイーン女優」宝積有香も北海道。
 さて、ちょっと見つけるのに手間取ったが、岩手のが見つかった。よく見ると、NHK の「ふるさと日本のことば」で紹介してたらしい。「タコつる」「タコとる」とも言い、「大きいタコ」と言うと、足だけとかではなく、がっぱりはまってしまった、という意味になる。
 経緯は DVD が出たあとにメイキングでも見ないとわからないと思うが、おそらく世間話の中で大政絢が北海道弁の話をして、それをヒントに、ってことではないだろうか。まぁ、脚本家が、主役が北海道出身と言うことから自分で調べたのかもしれないが。
 気になるのは、これはいくらなんでも「気づかない方言」ではないんじゃないか、ということくらいだが、まぁそういうことを突っ込むシリーズではない。
 なお、被害者の同級生には博多出身の明太子 (坂田聡) と仙台出身の笹釜 (皆川猿時) がいて、字幕なしで方言を喋りまくってくれる。
 なんでそこなのかと言うと、おそらく、小倉出身の草刈正雄と、宮城出身の大堀こういち (鑑識役でレギュラー) を「通訳」として使うためだと思われる。
 ポイントになった単語を拾うと、小倉だけでなく長崎・大分・宮崎あたりでもで言うようだが、「落ちる」は「あえる」。古語辞典にも載ってる模様。
 一方、「おどでな」は宮城弁で、「おととい」。
 秋田では、池などにはまることは「カッパとる」と言う、ということは前に書いたと思うが、方や海産物、方や川に生息、しかも想像上の生き物。似てるんだか似てないんだか、という感じ。

 というわけで、「ケータイ刑事」で語る方言の章、終了。
 でも、「ケータイ」は終わらない。




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