もう一ヶ月になるが、アメリカの
方言学会が、2006 年の言葉 (Word of the Year) として、“Pluto”という動詞を選定した。
これは、去年の 7 月に
国際天文学会で惑星の定義が変更されて、冥王星が惑星ではなく「矮惑星」と分類されたことから、「降格する」という意味で使われるようになったものである。
ここで持った違和感は、「方言学会」が「ワード・オブ・イヤー」を選定する、ということである。オフィシャルサイトの紹介によれば、「北米英語と他の言語、または、それによって影響を受けたり影響を与えたりする言語の方言」が研究対象の由。ってことは、“satsuma”“kaizen”みたいない日本語から入った英語も研究対象、ってことだろうか。
プレス リリースによれば、これはお祭りのようで、「学会が選定」で想像されるような堅苦しい感じはないものの様である。日本の流行語大賞の類とそう変わらないのかもしれない。
これには意外なところに方言ネタがあった。
冥王星が惑星ではなくなったことによって、惑星の並び方を覚えるためのフレーズ、「水金地火木土天海冥」も「水金地火木土天海」になり、ときおり「水金地火木土天冥海」などと覚えなおす必要もなくなるわけだが、これをなんと発音するか。つまり、「ドテンカイメイ」と「ド
ッテンカイメイ」のどっちか、という対立があることがわかった。
俺は単に語呂というか語感の違いだと思っていて、逆に、そのニュースで「ドッテン」と発音しているのについて、崩れた感じ、ニュースで使うにはふさわしくない感じを持ったのだが、これが方言差か、という声がいくつかある。
尤も、これもどうやらいつもの「聞いたことがないから方言」の類のようだ。こういうフレーズに地域差が生じるとは考えにくいからである。
ただ、元素周期表や、イオン化傾向の順番などは、地域差というか、誰から聞いたか、ということによる違いはあるようだ。これは、惑星の順番が最初の一字を並べただけで済むのに対して、ダジャレ込みにせざるを得ず、したがって、バリエーションが多数発生するためであろう。
*1
また、「ドッテン」の「ッ」に俗語感があり、その結果、「ドテン」に改まった感じが生まれる、というのも理由の一つだろう。「やはり」と「やっぱり」の対照みたいなものである。
このニュースはあちこちで紹介されているが、この“pluto”という動詞をどう表現するかも色々とバリエーションがある。
この文章みたいに、“pluto”とするところ、「プルート」「プルーテッド」とカタカナ表記にするところ、もっと踏み込んで「プルートしちゃう」としているところもある。
日本ではこういうのは出なかったようだ。「冥王星る」「冥王る」「冥る」をググってみたが、このニュースに絡めたものばかりで、天文学会のニュースの時点では存在していないようだ。
*2
これには、冥王星は、唯一、アメリカ人が発見した惑星 (当時) だった、という事情があるのかもしれない。なかなかにショッキングな出来事だったのであろう。
それに引き換え (という言い方は好きじゃないが)、こっちの
新語・流行語大賞は、流行ったものの羅列という感じ。辛うじて「品格」「格差社会」が本がらみの語だということを別にすれば、なんか、それによって人々が何かを考えるきっかけになった、という感じがない。与えられたものを消費するだけの国民なのか。
この騒ぎで一つ気になったのは、冥王星が「降格」されてしまった、という表現ばかりだったこと。惑星であるということは栄誉なのだろうか。惑星以外に分類されるのは不名誉なことなのだろうか。衛星は取るに足りない存在か? EKBO
*3 はゴミか?
これも自分至上主義というか、地球が惑星だから、まぁ太陽は別格だとしても、惑星が大事、それ以外は二の次、という発想なんだろうと思うと、ちょっと冥く (くらく) なる。
話題としては強力だったらしく、ネットには色んな文章がとびかっているが、
2ch で見つけた「それでも、俺は廻っている」というのが一番、楽しかった。