Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第524夜

渋谷の大阪弁



 東京に行ってきた。
 宿は池袋。
 飲みに行くのが目的のようなものだったのだが、主たる行き先は渋谷。
 目的が目的だから昼は余裕がある。ピアノの練習もしたい。
 俺は島村楽器で習っているのだが、そこの会員は全国の店舗で練習室を借りることができる。行き帰りに羽田を経由するという俺の行動ルートと、山手線沿線にはあまり店舗がないという事情により、最も使いやすいのは川崎である。
 なんでこんな配置になってるんだ、と思ったのは出発の数日前。渋谷・川崎がメインなんであれば南側に宿を取ればよさそうなものだが、俺がメンバーカードを持っているホテルのチェーンは、それこそ川崎を筆頭に新規開店もしくは改装してたりして、おおむね南側が高い。
 何より、池袋は勝手がわかった街だ、というのが大きい。いつも池袋から空きを探してしまう。
 高いとは言っても、シングルの部屋で何千円も差がつくわけではない。移動のための交通費もかかるわけだし、次回はもうちょっと行動範囲を考えて宿を決めよう。
 交通費と言えば、今回、SUICA を買った。確かに、機械をパコンとたたいてやればいい、というのは便利だ。料金も表示されるし。入るときに初乗り分が引かれ、出るときに残りが引かれる、というシステムであることは今回初めて知った。あえて不便な点を探せば、小銭を作る機会が一つ減る、ということだが、そのときは切符を買えばいいのだ。

 気のせいかもしれないが、なんだか渋谷近辺では大阪弁が目立った。数分に一回、という感じで耳にした。いやマジで。
 一応、京都弁との区別はつくと思う。神戸や奈良は自信ない。神戸出身の有名人と言えば南野陽子くらいしか思い浮かばないので、スケバンな土佐弁ならともかく、神戸の言葉がどういうのだかイメージがわかないのだ。
 というわけで、あれが大阪弁だとして、の話。

 まずよく言われるのが、大阪の人は、よそに行っても大阪弁で通す、というあれ。
 それだけだったら秋田だろうが宮崎だろうが同じで、それこそ空港は方言の宝庫、団体客なんぞいようものなら、ここは一体どこだ、という感じになるのだが、大阪の場合は、相手が大阪弁話者でなくともそのまま、という点が違う。
 押しの強さ、というようなこともあるのかもしれないし、あるいは、商業都市ゆえの自分の強調方法なのかもしれない。でも、気弱な大阪人も、不純な東北人もいると思うので、そういう漠然としたところにはささらないことにする。
 大阪弁が、全国的に理解されてしまう方言だ、ということは大きいに違いない。これは何度か指摘してきた。芸人の大阪弁は決してリアルではないらしいのだが (つまり、俺の理解も怪しいわけだが)、だからと言って、別の方言くらいに離れている、ということもないと思う。

 もうちょっと単純に、大阪の人が多い、ということはないか。
 大阪府の人口は、前回の国勢調査によれば 882 万人。
 これに対して、たとえば秋田県が 115 万人。東北全体が 960 万ちょいなので、宮城と福島を含む東北 5 県でやっと大阪府と比べられることになる。
 大阪市となると 262 万人で、秋田はもちろん、宮城県よりも、さらに言えば秋田・山形二県連合よりも多い。
 耳立つのも当然であろう。
 尤も、同じ比率で東京に出てきているとは限らない。大阪はむしろ、ほかの地域から集まってくる場所だ、ということもあるし。

 耳立つのは、そこが東日本だから、というのもあるだろう。
 場所が東京だから、基本的には東日本方言が圧倒的な地域で、それを聞いているのが秋田出身・一時東京の俺だから、それを敏感に検知して当然である。

 川崎で、ピアノの練習を終えた後、飯を食おうと思って駅ビル (いっぱいあるので、どれが駅ビルやら、って話はある) に入ったら、目の前に年寄りの一団がいた。
 朝っぱらから酔っ払っており、歩き方はふらふら、声も大きい。案の定、昼からやっている居酒屋に入っていった。
 これは「じゃごくさい (田舎臭い)」と表現して差し支えないのではあるまいか。かりにそれが、人口 130 万の政令指定都市の市役所最寄の駅前で、とても新幹線や飛行機などで長距離移動してきた人に見えない、つまり、このあたりの人であっても。
 つまり、個々人の違い、ということを上に書いたが、都会的かどうか、ということも、きわめて属人的な事柄なのだと思う。

 今は仕事がエラいことになっているのだが、久しぶりにゆっくり寝た。昼間は暇なので、早起きする必要がないわけだ。
 しかし、小人閑居してなんとやら。
 散在をしてしまった。
 割と腕時計マニアなところがあるのだが、Loft の一階でつかまってしまった。こんなの。
     
 手作りの時計。ムーブメント自体はセイコーのものらしい。
 真ん中の写真をよく見てもらうとわかるのだが、針金で文字盤の数字込みのわっかをつくり、それを 3 つ重ねた構造になっている。そのため、最後の写真くらいの厚さになる。
 ものすごくユニークで、それは確かに気に入っているのだが、実用性には問題がある。
 厚いから袖口に引っかかるかと思ったが、それは意外に問題にならない。
 ただし、針は一番奥にあるので、真上から覗き込まないと時間がわからない。車を運転してるときやピアノを弾いているときにチラっと見る、というのには向かない。
 また、十分な明るさのないところでも時間がわからない。
 装飾品ってそういうものだけどね。
 By 時計工房。最後に宣伝――と思ったら、そういう名前のとこいっぱいあるんだね。興味のある方は、渋谷 Loft へ。




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