Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第496夜

六個と半ダース



 こないだ仙台まで行ってきた。
 往復とも高速道路を使ったのだが、帰りは観光バスの群れと一緒になった。
 長者原で土産を物色していたら、そこから降りてきたジャゴの連中が、レジの列に割り込んで「あの牛タン、焼がねば食わいねべ。そのまま食える奴あるが」と怒鳴りやがる。息は酒臭く、足元はふらつき、迷惑なことこの上ない。
 酒を飲むな、とは言わん。
 だが、人に迷惑をかけるな。
 そんな人間として最低限のことが守れない輩が多すぎる。まぁ、酔っ払った状態を一人前の人間とカウントしていいのかどうかには議論の余地があろうが。

 傍若無人という表現があるかどうかググったら、石川の「かちかまわん」という表現がヒットした。どうやら「かち」は強調のための接頭辞で意味はないらしい。

 ということで、田舎の人は自分のことしか考えない、自分がえらいと思っている、ということで書き始めたわけだが、例外がある。
 車の運転である。
「○○県民は運転マナーが悪い」「乱暴だ」というあれだ。もちろん、よその県民についても言うことはあるが、逆の、自分ところはマナーがいい、というのを聞いたことがない。「山形は怖いなぁ」とは言うが、「秋田も人のことは言えないけどさ」と続く。
 尤も、これを殊勝さの表れと思ってはならない。自分自身が除外されているからだ。自分が、急ブレーキを踏まされたり、急ハンドルを切らされたりしたことはねっちょふけぐ覚えているが、急ブレーキを踏ませたり、急ハンドルを切らせたりしたことは覚えてないものである。
 つまり、上の言葉を展開すれば、「俺以外の人間は皆、マナーが悪い。下手だ」となる。
 という文脈で紹介すると、参加者が気を悪くするかもしれないのだが、神戸新聞が 2003 年に特集を組んだことがあるらしい。なかなか面白いので紹介しておく。「一姫二泉」なんて言葉があるのね。

 次、「わがまま」。
 にしようと思ったが、これが多い。多すぎて裏が取れないので、紹介しない。
 前にも書いたが、生活の言葉である方言には、人を罵倒する語彙が豊富なのである。
 秋田では、「だじゃぐこぐ」というのがあるが、これは「横車を押す」に近い。『秋田のことば (秋田県教育委員会編、無明舎出版)』では「乱暴」という説明を与えている。「ごんぼほる」というのは、子供がだだをこねる、というイメージ。
からきじ」という語があるらしいが、聞いたことがない。

 わがままで思い出すのは、秋田駅前の没落。
 行政と業者の衝突は今に始まったことではないが、利用者も利用者で、買い物やレジャーが一箇所でできるようにして欲しい、とか言い出した。
 不精もそこまで来れば大したものだと言っていいのかもしれない。買い物って、ブラブラするから楽しいんじゃないの? FORUS から旧ダイエーくらいまでは歩けよ。お店がな〜い、ってのはまた別の問題。そこに人通りがある、ってことがわかれば、業者の方で放っておかないはずだ。
 こないだびっくりしたのは、県庁若手職員の私案。利害関係者に話を通していない、思いつきに毛の生えたような話、というエクスキューズつきで庁内の勉強会でプレゼン。ただし、新聞に載った。
 ジュンク堂紀伊國屋書店を誘致しよう、だそうだ。
 加賀谷書店つぶす気か。パワー不足は事実だが、今や、秋田ネイティブの大手書店ってあそこだけなんだぞ。それとも、歩いて 5 分は別の国か。

 駐車場をめぐってももめているようだが、車があまり好きじゃない俺としては、ロンドン並みに車立ち入り禁止なんつーのはどうか、などと言ってみる。
 緑豊かな城址公園、図書館、美術館、ホール、学校のある文京地区である。駅東の開発も進んでるし、西側は原則車不可、はありじゃねぇか? 自動車専用トンネルが下、通るんだしさ。
 こういうのが「もぞ」と言われたりするのは認める。「妄想」である。

 昼間の酔っ払いは許容されるのに、電車内で化粧する若い女性とか、地べたに座り込む若い男性はたたかれる。
 近所迷惑の歴史としては、酔っ払いのほうがはるかに長いのに、それは放置されたまま。
 これもひょっとしたら、「正しい日本語」教と同じ、単なる世代間闘争なのかもしれない。昼間っから酔っ払っていられるのは、大人の方だからな。
 高速の SA における傍若無人度で言えば、同じくバスで移動する高校の運動部員がいい勝負をする。彼らはおそらく酒には酔ってないと思うが (どうかなぁ)、塊で移動もしくは停滞するし、声はでかいし、人のことなんぞ考えてない、という点では同じようなもんだ。
 世代間闘争なんて言ってはみたが、あんたら、同レベル。




*1
“It's six of one and half-a-dozen of the other”で、「五十歩百歩」という意味。
“The pot calls the kettle black”で「目くそ鼻くそを笑う」というのもある。
「同族嫌悪」って単語もあるが、だんだん過激になってきたので、この辺でやめとく。






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