実は長期出張中。ここのところ東京住まいである。
この間に公開していた文章は、秋田で書いてあったものか、まとめてあったメモに体裁をつけたものだ。今になって出張中であることをカミングアウトしたのは、そのストックが尽きたから、というわけ。
一応、12 年も首都圏に住民票があったから、ものすごく困っている、ということはないが、会社で借りているウィークリーマンションが死ぬほど狭いのがやっかいだ。
部屋が狭いのは荷物家財の調整で何とかなるが、台所と風呂が狭い。何かしようとすると必ずぶつかる。夜中にトイレに起きて洗面器をガラガラいわせたりなんてのは日常茶飯事、食器を置く場所が 30×20cm くらいの釣り戸棚だけなので、そこから出し入れするときに物を落とす。コップは一週間、もたなかった。
浴槽なんか、俺の体プラス両手分くらいの幅しかない。ユニットバスだから、体を洗うのはその浴槽の中だ。もともとカラスの行水気味ではあったが、それに拍車がかかっている。
まぁ、不満を並べ出すといつもの分量の 2〜3 回分は行ってしまいそうなので、この辺にしておく。
前にも何度か書いたような気はするが、東京での俺のイントネーションやアクセントは、おおむね全国共通語になってはいるが、細部がいい加減である。そこまで調整しようという気はまるっきり無いから当然なのだが。
別に困ったことはない。職場にはそんなのが多いからだ。
ある種、東京という街の象徴みたいな感じで、人は全国から集まってきている。特に関西弁は、話している人の声が大きいせいもあって、よく耳に入ってくる。
彼らもどうやら、一応、薄味の関西弁にしている感じはあるが、その複数の関西人たちの言葉がそれぞれ違うような気がする。
部外者ゆえはっきりとはわからないのだが、彼らの持っている方言そのものの違いではなく、イントネーションやアクセントをどこまで保持するか、というレベルが違っているような気がする。
それ以外の方言はほとんど聞こえてこない。
いや、実はあった。
同じように秋田から来ている人が「椅子」を「
イス」というアクセントで発音している。
前にも書いたし、そういう言及をどっかで耳にしたことがあるような気もするのだが、この単語のアクセントは「気づかない方言」の筆頭に位置づけられる。
俺ももちろん、「
イス」だが、聞き返されたことは無い。反対のアクセントを持った単語が無いため衝突しないからであろう。
「傘」も同様だが、「油」あたりから怪しくなってくる。
怪しい、というのは、これを「
アブラ」と発音すると、「
イス」や「
カサ」ほど許容されないのではないか、という気がするのだ。かなり方言臭がしてきはしないだろうか。
「後ろ (
ウシロ)」は、その中間か。これは俺の内省に過ぎないが。
この辺をネットであたって見ると、「コーヒー」に関する言及が目立つ。
でもなぁ、確かに標準形は「コ
ーヒー」だろうけど、実際に耳にすることってほとんど無いような気がするんだが。みんな「
コーヒー」って言ってない?
いや、落ち着いて考えてみる。
「コーヒー」を単独で使うことって、意外に少なくないか。店で頼むときは「ホット
*1」「ホットコーヒー」って言ってるようだし。
個人的には最近、「ラテ」が多いのだが。秋田の店員にそそのかされてタンブラーまで買っちまった。これは蓋があるので、給湯室から自分の席へ長距離移動するときに重宝している。
で、まぁ、その結果、「ア
イスコーヒー」「イ
ンスタントコーヒー」から引きずられて、単独でも「
コーヒー」というアクセントになっていたりはしないか、と言ってみる。
この辺は、
北海道文化財団の「
いま、演出家は」という討論会で触れられている。
さすがにプロの集団で、方言に限らず、言葉というものに対して真摯な姿勢であることが伝わってくるが、非常に残念なことに、東京弁イコール標準語、と言ってしまっている。画一的でつまらない、ということらしいが、東京の人がそれほど無味乾燥な生活を送っているわけではない。
まさか、全国共通語と若者の汚い言葉だけで成り立っていると思っているわけではあるまい?
ここに入居して一週間くらいのころに新聞の勧誘が来た。ドアを開けてないので新聞かどうかはわからないが、「お届けものです」という言い方からしてそうに違いない。
こんな、ウイークリーマンションという、昼はもちろん、夜だっているかどうかわかんねぇような連中ばっかりのところによく来るなぁ、と思ったのだが、よく考えて見ると、ここは、普通のアパートと違って、田舎者ばっかりのところなんだ、ってことに気づいた。
*2
うっかり、誰が来たのかを確認もせずにドアを開けてしまいかねない者の比率が高いのだ。だとすれば、そういう人たちにとってはねらい目の場所なんだろう。
*1
「ホットコーヒー」のことを「ホット」とする省略について、「正しい日本語」教徒の皆さんはどうお考えでしょうか。
皆さんは、きっと「おひや」は「美しい日本語」「正しい日本語」だと思ってらっしゃると愚考するのですが。(↑)
*2
たとえば、八王子に実家がある人が、通勤が大変なので都心寄りに部屋を借りる、という場合、ウィークリーマンションを選択することは無い、と思う。(↑)
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