Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第471夜

ALWAYS



 今年は映画見たなぁ。
 公開されるのが年間 500 本という数字から言うと微々たるものだが、パンフを数えてみたら 13 本。
 その中のベストは、9 月に公開されていた“HINOKIO”である。「青空のゆくえ」の多部未華子、今度「テニスの王子様」に出る本郷奏多、「仮面ライダー THE FIRST」の小林涼子、と U-18 の名優目白押し。
 次が、U-15 の天才・神木隆之介の「妖怪大戦争」。人を食った娯楽作であった。
 その次が、「青空のゆくえ」かな。「ケータイ刑事」「風のハルカ」の黒川芽以、“Shi15uya”の悠城早矢
 ワーストは“STAR WARS EPISODE III.”いや、昔から苦手だったんだけどね。

 今年のラストは、「ALWAYS -三丁目の夕日-」。
 ものすごく畑違いなんだが、昭和三十年代を再現するために VFX、CG 使いまくりの映画だから、俺が読んでるその筋の雑誌にもちょくちょく登場する。早とちりの俺は、建築途中の東京タワーを見て、東京タワーが破壊されるような戦争後の復興を描いた近未来の話だと思ったこともある。
 大概の CG は見切ったと思う。威張ることでもないが。
 冒頭の列車が今イチだったなぁ。そういや、“SWING GIRLS”の前半で、上野樹里たちを田んぼに落とす列車が CG だってことは、この春に DVD-BOX を買って、何回か見るまで気づかなかった。
 堤 真一は大河ドラマの「翔ぶが如く」に出たのを見たのが最初で、その時の書生イメージがあるもんだから、ああいうワイルドな役にはちょっと驚いた。小雪も、芝居を見たのは初めて。予想外にしっかりしている。
 吉岡秀隆も初めて。ああいう情けない (時に人でなしな) 役もやる人なんだ。Dr.コトーのイメージしかないんだけどさ。なかなかいい雰囲気です。
 わが十代の頃のマドンナ・薬師丸ひろ子は、民放のドラマに出たときがっくりしたんだが、ここのところいい感じ。序盤のコミカル演技が中々。
 で、この映画を見ようと思ったもう一つの理由、ゲホ (額) 丸出しの堀北真希
 基本的に美少女な造作であるせいかもしれないが、“HINOKIO”や「深紅」でも小学生役をやっている。今回の、青森から集団就職してきた、ジャゴ (田舎) の中学生も妙に似合う。
 で、その津軽弁はどうであったか。

 どうですかね、ネイティブの皆さん。
 パンフには、方言指導の人が、教えることは無い、と太鼓判を押した、とありますが。
 それは勿論、ネイティブ並だった、ということではなく、全国で上映される映画に登場する津軽弁として、ということなんでしょうけども。
 もうちょっとイントネーションきつい方がよくねぇか、と俺は思った。
〜だじゃ」とか、ドラマで津軽弁が出てきても滅多に耳にできない語尾もあったし、そういう意味ではかなりリアルだったとは思うんだけども。

 堀北真希も当初は苦労した、とパンフには書いてある。で、津軽弁独特のイントネーションを、「半音」と言われて掴んだそうだ。
 彼女が就職する工場の息子が、彼女の言葉を真似するシーンがある。それが、リハーサルを繰り返すうちに、どんどん津軽弁としてうまくなってしまって、監督から、あまり似せるな、と注文がついたとか。さすが、言語形成期真っ只中。

 舞台は、東京タワーが目視できるところだから、今は大都会になっている場所。
 その辺の言葉遣いは無頓着だったような気がする。
 いくら 30 年代っつても、そこで、タヌキが出る、ってことはあったんだろうか。よく知らんけど。
 吉岡秀隆が冒険小説を書いている子供向けの雑誌を、「カストリ雑誌」と呼んでいたが、「カストリ雑誌」ってのは基本的にエログロ雑誌だったはずで、子供向けのをそう呼んだのかなぁ。あるいは、吉岡秀隆演じる「茶川竜之介」を馬鹿にするために使った表現、ってことだろうか。
 ちなみに、茶川のところに居候することになる少年 (ネタに困った茶川は、彼が考えた話を無断で使ってしまう) が「古行淳之介」。関係者に話は通してあるのかな、というのは余計な心配か。

 そういや、都電に広告が貼ってあった「白麦米 ビタバァレー」。
 ここ数年、お世話になっております。

 今年見た中では、最も観客の多かった映画。
 30 年代を知っているであろう人たちと、それに連れてこられたと思しい子供達。
 子供達は楽しめたかなぁ。これは、ノスタルジーの映画だと思うんだが。
 悪人のほとんどいない、ハートウォーミングな映画ではあるのだが、基本的には、「プロジェクト X」と同じ、「昔はよかったねぇ」というところから出てない話だったと思う。
 まぁ、畑違いも年に一回くらいはいいだろう。年に一回でいいが。
 この映画で唯一残念なのは、なんで“ALWAYS”なんて英単語にしてしまったのか、ということ。「三丁目の夕日」で必要十分だろうに。いっそ、“ALWAYS”だけのほうがまだ潔かった。

 秋田では、秋田駅東口の官民複合ビルに入っていたシネコンがケツをまくったのだが、そのシネコンが核テナントであったため、ほかの飲食店などが悲鳴をあげており、ちょっとした騒ぎになっている。
「妖怪大戦争」を見に行ったら自転車の無料駐輪サービスがなくなってたり、ホームページのスケジュール表が、日付があるだけでリンクが貼られてなかったり、と俺は前兆を目にしていたのだなぁ、と今になって思うわけだ。
 経営者や県・市を非難する声もあるが、そもそもの原因は、秋田の連中は映画を見ない、ってことだろう。駐車場が高い、とかいうのは付随的な問題だと思う。前にも書いたけど、秋田出身の監督の「青空のゆくえ」が、土曜の夕方に俺一人、ってこの状況。まじで文化果つる土地だと思うぞ。
ケータイ刑事」も来ないみたいだしさ。




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