Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第467夜

宮崎県代表



 ゴールデンに移動して最初の「なまり亭」、っつか“Matthew's Bet Hit TV.”

 ゲストが二人ずつになっている。浅香唯と、福岡代表・原口あきまさ。それから、岐阜代表・響鬼こと細川茂樹と新潟代表・大桃美代子
 もう、宮崎といえば浅香唯、という感じだが、この 7 月に、宮崎で「UMK フェニックス ジャム ナイト」というイベントがあって、そこに、宮崎出身のアーチストを集めた“MMTP”というユニットが出演していた。「宮崎に生まれ、宮崎で育ち、東京で暮らす、プロミュージシャン達」の頭文字らしいが、為山五朗、坂元東、川添智久、ノイジー、中尾諭介、トシ・ナガイという構成――ごめん、全然知らない。
 当然、浅香唯も登場。俺を知っている人のために言っておくが、俺は行ってない。
 こういうイベントの話を聞くと、秋田はなぁ、とか思う。
 アーチストがいるとかいないとかいう話とは別に、それを応援しようって気は全くないもんな、ここの人たち。
青空のゆくえ」という映画があって、黒川芽以多部未華子悠城早矢という今をときめく若手女優たち目白押しの作品で、監督の長澤雅彦も、『ソウル』『13階段』と見事な経歴。
 俺、初日に見に行ったけど、貸切だった。新聞広告には、秋田県出身の監督、って書いてるのにさ。

 話を「なまり亭」に戻す。
 前から思ってたのだが、BGM が「忍風戦隊ハリケンジャー」なのはなんで。確かに同じテレビ朝日だけどさ。
 一般には評判の悪い字幕。「一晩 (ひとばん)」が「1 晩」、「一番 (いちばん)」が「1 番」。これは単なる誤変換か、担当者が、そうだと思っているのか。「正しい日本語」教を奉じない俺としてはあんまりうるさいことは言いたくないが、少なくとも、「1 晩」は「ひとばん」とは読まない、と思う。どうですか、金田一せんせ。

 自己紹介で原口あきまさが言った「ちかっぱ」は、「力一杯」が語源だ、という説がある。とすると、比較的新しい言葉か?
 浅香唯の、方言文の共通語への即時翻訳は、例によってイントネーションがひっかかりまくる。翻訳している最中に言い訳をするのだが、それもまた共通語形じゃないのでポイントを取られる。無アクセント地帯だからしょうがないんだよ。まぁ、余計なことをしゃべるな、という気はするが。
 大桃美代子が、今は十日町市となった旧松之山町の行事を紹介していたが、こういう「旧○○町」という言い方はしばらく続くんだろうな。一つの自治体がやたらと大きくなって、自治体名を言われてもピンと来ない。今となっては、秋田市に接してる自治体ってほとんど「市」なんだもん。「大仙市の大綱引き」とか言われてもなぁ。

 なまりインタビュー。
 浅香唯の出身地は「市内」だそうである。
 県庁所在地のことを「市内」と呼ぶのは秋田だけかと思ってたが、そうではなかった。ちょっと安心。まぁ、さすがに近場でだけだけどな。十和田湖まで行って「市内」とは言わん。
 さて、一時間の中で唯一、拾うことのできた目新しい表現、「宅習」。
「宅」が「自宅」、「習」が「学習」であろう、ということは想像がつく。だが、「宿題」とは違うらしい。ゲームの最中で本人がパニクっており要領を得ない説明だったのでググってみたところによれば、「宅習」は、児童・生徒が自発的にやるもののようだ。「宿題」が、内容も量も決まっているのに対して、「宅習」ではそれを自分で決めることができる。
 そういや、俺が通ってた小学校では「家庭学習」という呼び方をしていて、既に前世紀の話なので定かではないが、「家庭学習」とは別に「宿題」があった、という記憶はない。「家庭学習」は毎日提出するものなのだが、宿題があった場合はそれで代替してもよかったんじゃなかったかなぁ。
宅習」が宮崎固有の表現かというと、必ずしもそうではないようだ。岐阜の可児高校、新潟の国際情報高等学校、大阪の金蘭千里高校・中学校、更には、ベネッセの教育研究開発センターの報告にも見られ、ピアノの独習書の紹介でも「ピアノ宅習者」という形で使われている。尤も、これらの表現は、宮崎の言葉とは無関係に、それぞれが独自に考案した結果、たまたま同じ形になった、ということも考えられる。多分、そうだろう。
 宮崎県知事のインタビューでは、どうやら家で勉強することそのものを指しているようだし、別のところでは「卒業式後の宅習期間」なんて表現もあって、意味もそれぞれ違っているかもしれない。

「M の国・宮崎」
 観光協会かなんかで決めたキャッチフレーズらしいのだが、ググってみてびっくり。
 ヒットしない。
海賊版」はある。
 地元の人を中心に、使っている人はいる。
 三股町は、「M の国の M の町」を謳っている。
 が、「M の国」そのもののページがない。
 大体、観光用のキャッチフレーズが Google で 400 件ってどうよ。
 ただ、ビールの缶のコレクションを紹介している「缶ビールラベル展示館」によれば、その主催者が「M の国」の限定缶を入手したのは 1994 年らしい。ひょっとして、「M の国」キャンペーンはとっくに終了しているのか?

 ついでだが、秋田の観光キャッチフレーズは「秋田花まるっ」である。800 件。

 というわけで、方言色の薄い文章になってしまったが、ゴールデン移動後初の「なまり亭」感想文。ゲストが倍になったくらいで、全体の雰囲気は前のままだったので、一安心。
 金田一せんせの出番がほとんどありませんね。方言の特色の説明もないし。まぁいいんですが。




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