別館の方に詳しく書いてあるが、ピアノの発表会に参加するために東京まで行って来た。場所は
サントリー ホール。
なんでそんなところでできるのかと言うと、俺がピアノを習っているのが、
全国チェーンの楽器屋で、そこの生徒たちが一堂に会するイベントだから。二日連続公演、登場する生徒数が総勢 220 人という盛大な発表会なのである。
各店舗ごとの発表会は時折やるが、生徒同士はなんとなく顔を知ってるし、何度か参加していると、聞きに来る人の顔も覚えてしまったりする。今回はそういうのではなく、知らない人のほうが圧倒的に多い場所で、照明を浴びながらの演奏。よく手が震えなかったもんだと思う。
どういう格好で出るかについては、直前まで迷った。着飾る趣味はないので、基本的にはどうでもいいのだが、ピアノのペダルを踏む関係で、履物はあまり遊びのないものでなければならず、そうするとどうしても革靴系統になってしまい、すると上の方もある程度、狭まってくる、という仕組みになっている。
スーツ着てきゃいいんだろ、という認識だったのが、白いシャツだと仕事着になっちまうから、色の着いたのにしろ、という母のアドバイスをいれて、紺色のシャツを買ってはみたのだが、どう見ても筋の人なのでやめた。結局、半そでのマオカラーになった。省エネ ルックではないので注意されたい。
メイクは無し。
当然だろうと思った人もいるかもしれないが、学生の頃に一度だけやった芝居では、ちゃんとドーラン塗ってメイクした。照明の具合が違うのか、芝居と演奏は違う、ということなのか、女性ならともかく、そういうことをしたことはないであろう男どものメークの面倒までは見てられない、とスタッフが思ったのか。
さて、『秋田のことば (秋田県教育委員会編、
無明舎出版)』から。
こんぴらかす
じまんまげる
ぼらまげる
おじまげる
こぺたげる
こっぴたげる
じんぴこぐ
きさじまげる
ひょろける、
へろける
みごむ
これは、秋田弁における「化粧する」という表現である。
「
じまん」は「自慢」、「
ぼら」は「法螺」で、実態以上に良く見せること。「
こっぴ」は「媚」。
「
じんぴ」は「人品卑しからぬ」の「人品」である。
「
きさじ」は「気散じ」で、化粧すると気持ちが晴れやかになる、とかそんなことか。
どれも、納得できる。
「
こぐ」がいくつか見られるが、これは、例の秋田の三こぎ (
ひやみこぐ、
えふりこぐ、
かたぱりこぐ) 、あるいは「
バカこぐでねぇ」の「
こぐ」である。おしゃれをすることに対する、マイナス イメージが感じられる。現実に金がかかるので、贅沢をするんじゃない、という戒めも含まれるのかもしれない。
「化粧 AND 方言」でググったが、あんまり見つからない。
辛うじて「めかす」「
やつす」が関連表現としてひっかかったので、こっちを当たってみた。
「
めかす」は「めかしこんでどこへ行く」というような使い方で聞いた事があるし、まぁ逆に、そういう言い方でしか聞かないような気もするが、一応、国語辞典にも載っている。「謎めかす」の「めかす」から来たものらしい。
「
やつす」の方も、「〜に身をやつし」というような時代がかった表現しか思いつかないが、外見を変える、という点は化粧と共通している。俳風柳多留に「やつさずに濡れ事をする新五郎」という歌があるそうな。今でいうイケメン俳優というところか。
で、現代日本の共通語としては、限定的な使われ方しかされていないせいか、いつものごとく、それは○○の方言である、という断定が目立つ。「
めかす」の方は、「□□は△△の方言です」の「□□」としても「△△」としても登場するので面白い。
「
やつす」は、かなり範囲が広い。北陸あたりも含め、西日本に多いようではある。
ネタに困ったので「おしろい」の俚言形はないかな、と思ってググってみた。まぁ残念ながら大して面白いのは見つからなかったのだが、どういうわけか「ケセランパサラン」がやたらと引っかかる。
そう言えば、おしろいを食う、ってものだったなぁ。で、この名前は、「なんだかわけのわからないもの」という意味の方言だ、てなことがあちこちに書かれているのだが、どこの方言?
基本的に外見を気にしない俺が、唯一、これってどうよ、と思っているのが白髪。久しぶりに会う人なんかには大概、言われる。
これの、明らかな俚言形が見当たらないことにちょっとびっくり。「白髪」の音が変化したものしかなかった。なんでだろう。
というわけで、前置きが長いせいで、すでに紙数も尽きようとしているわけだが、シメのフレーズが思いつかない。
俺が、おしゃれについて語ろう、ってこと自体が間違いだったんだと思われる。