もう一ヶ月も経ってしまったが、
ピアノの発表会で、参加賞としてジャムを貰った。蜂蜜とペアで、直径 2cm くらいのオシャレっぽい小瓶が二つ。
オシャレな食生活を送ってないので、腐らせてしまいかねない、と思い、賞味期限を確認したら、2008 年とか書いてある。確かに火を通して作ったものではあろうが、3 年という遠い未来のことなので疑問に思って、スーパーの店頭ですべてのジャムの瓶とパッケージをひっくり返してみたら、普通は半年くらいらしい、ということがわかった。
ということは件の瓶の中身は防腐剤のジャムなのではないだろうか。食っていいのかどうか悩んでいる。
まぁ、悩める期間は 3 年もあるので余裕だが。
さて、季節柄、腐敗について考えてみる。
秋田では、「
あめる」などと言う。「甘い」から来たものだと考えられている。単に甘いのではなく、「甘酸っぱいにおい」だそうだ (以下『語源探求 秋田方言辞典 (中山健、秋田協同書籍)』)。
一部に「
しれる」という形があるそうだが、これは「すえる」の変化したもの。
「
なえる」は「なれる」。あとで寿司の話をするが、「熟れ寿司」の「なれ」である。
これに「
ねまる」を加えた御三家で、おおよそ全国を網羅するようである (ググっての印象のみ)。「ねまる」については古語辞典に載っている。秋田の「座る」と同じ語である。
「あめ」と言えば、大阪では、飴の表面が柔らかくなることを「
飴がわく」という(『
大阪ことばと外国人 (彭 飛)』)。雰囲気はわかる。
納豆なんかは、腐ったにおいが嫌、とかいう人がいる。俺は、納豆自体は好きだが、その気持ちもわからないことはない。体調悪い時とか、大酔っ払いになった状態で納豆が出てくるとさすがに辛い。
それはさておいて、腐ったのは嫌っていうんならチーズはどうなんだ、とかいう反論をしてみた人もいるだろう。で、大抵は、こういう反撃を食らったのではないか。
「
チーズは発酵!」
では、「腐敗」と「発酵」とはどう違うのであろうか。
結論から言えば、化学的には一緒である。細菌などの作用によって変質することを言う。人間にとって有用なもの、人間の制御下にあるものについて「発酵」、そうでないものについて「腐敗」と言っているだけだ。
*1
「腐敗」を辞書で引くと「悪臭を発したり」などと書いてあったりするが、チーズも味噌も臭いといえば臭い。気にならない人も多いと思うが、要はそういうこと、好みの問題である。好き嫌いで議論したところで始まらない。与太話程度ならいいが。
納豆の発祥については、諸説紛々で、秋田説、京都説、義経が発見した説、渡来説、起源前説、わずかながら水戸説 (水戸の納豆は明治以降らしい)。
100 回とか 200 回とかいう桁の回数、かきまぜると風味が柔らかくなるのだそうだ。俺は味覚が鈍感だし、そもそも臭くて嫌とは思ってないのでやってみてはいないが、納豆が嫌いな人は試してみてはいかが。
ポイントは、調味料を使う前、素の状態でかき混ぜることだそうだ。確かに、醤油のような水分を足したのでは、摩擦が減って、かき回すことの効果は弱くなりそうな気がする。
腐ってしまっては困るのが生鮮食料品。その筆頭と言っていいであろう食べ物が刺身。
大阪方面で「刺身」を意味する古めの言葉として、「
割鮮」というのがある。ググるとかなりの数がヒットするが、そのほとんどは店の名前である。ヒット数の割に辞書を引いても出てこないのはそのせいか。
店の名前ということで思い出す人もいると思うが、「割烹」というよく似た単語もある。火を通した食い物が「割烹」、切っただけのが「
割鮮」ということになるのだそうな。納得。
もう一つ、決定的な違いは、「刺身」が店の名前になることは (「
割鮮」に比べれば少) ない、ということである。
その仲間として寿司。
「
鮨」「
鮓」という字もあるが、概ね、「
鮨」が関東、「
鮓」が関西である。
歴史的には「
鮓」の方が古い (字そのものではなく、「すし」を表す字としては、ということ)。
「寿司」は江戸時代から使われるようになった当て字である。音を維持しておめでたい字を当てる手法で、「佳字
(かじ)」「好字
(こうじ)」という。「二荒」が「日光」、「不盡」「不自」が「富士」になったのと同じ。
「
鮨」「
鮓」については、色んなページで説明しているのでそっちを参照されたい。
酸味や苦味のことを「社会的味覚」などと言ったりする。
どちらも本来は腐敗や毒の可能性を知らせる危険信号である。生物としては避けるべき味だ。
*2
だが、ほんのちょっとであれば、体に良かったり、食べ物の風味を増したりする効果がある。それで、成長するにつれて食べられるようになるわけだが、「社会的」という表現はそこから来ている――
という話をどこかで読んだのだが、思い出せない。「社会的味覚」という表現はググっても見当たらない。
こういうことがあるから、自分が読んだものは全て手元におきたい、と思ってしまうのだが、それをすると部屋自体が腐ってしまう。困ったもんだ。