Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第433夜

おんのんのんこんまち



 テレビの話題。またかい。まぁ、何かと話題になってるからいいだろう。
 別にどっちかに味方する気はないが、ライブドアの時間外取引をルール違反と糾弾したニッポン放送がやったことが、裁判所によってルール違反とされてしまったことには苦笑及び冷笑を禁じえない。
 そもそも、日本の放送局が「公器」としての役割を正しく果たしていると思ってる人ってどれくらいいるんだろう。

 ここも一種の公器だと思うが、NTT ドコモ東北は CM のキャラクターとして数年前から宮崎あおい を起用している。
 俺が最初にそれを認識したのは、「ケータイ刑事 銭形愛」のちょっと前の時期だから 2002 年頃だが、そのころはまだ「i (愛) がなくちゃね」と一言しゃべるくらいだった (長いのもあったかもしれないが記憶にない)。今はもう、ほんの数十秒でしっかり芝居するようになっている。貫禄である。*1
 ご当地バージョンが作られている。岩手で宮沢賢治、福島で野口英世ゆかりの場所を尋ねる、というのが記憶にある。彼女はどうやら医者志望らしい。
 去年の暮れくらいから、秋田バージョンをやっている。
 ストーリーは、どうやら秋田出身の男友達がいるらしく、彼が帰省したタイミングか何かで、電話をかけてよこす、というもの。ケータイのディスプレイに映った宮崎あおい を見て、その祖母と思しき人が、
おやぁ〜、めんけこど。
小野小町みだな。
 と言う。見だごどあらんだが、かさん (見たことあるのか、オバサン) という無粋な突っ込みは無しである。

 これは地元の新聞でも小さく取り上げられていた。切り抜いて置けばよかった、と思っているところだが、このおばあちゃんはネイティブ。道理で非常にきれいな発音である。
 前にも書いたが、秋田弁では、マ行・バ行・ガ行・ダ行の前に「ン」の音が入る。はっきり「ン」と聞こえるわけではないが、間違いなく入っている。上の表記はちょっと誇張気味だが、「めんけ」の「ん」が小さくなってないことに注意して欲しい。NTT ドコモ東北のサイトでこの CM の動画を見ることができるので、ぜひ確認して欲しい。かまくら が出てきているので、もうすぐ放送は終わると思われる。

 CM に方言というと、「ちかれたびー」「野菜食べにゃ だちかんぞー」あたりが古典か。桜田淳子の「やっぱり『さなえ』だべさ」の方が早いか?
 若い人は知らないかもしれない。「ちかれたびー」は「疲れたなぁ」という意味で、商品はそのものズバリの栄養ドリンク。「だちかん」は「埒があかない」で「ダメ」、つまり「野菜をとらなきゃダメだよ」という意味。これはトマトジュース。「さなえ」は田植え機。
 最近、話題になったのでは、静岡で放送された「振り込め詐欺」防止キャンペーン。大阪のおばちゃんたちが、「振り込め詐欺」防止率の高い大阪を見習え、とか言ったやつ。
 どれも、方言の情的評価がプラスになることを利用したものである。ほっとする感じとかユーモラスな感じとか。
 したがって、ファッショナブルな、あるいはシリアスな雰囲気の CM には向かない。車の方言 CM というのは想像しにくいだろう。
 でも、こんなのはある。
なまはげカローラ
 秋田県内限定のパッケージで、6 代目まであった由。
 ただし、これは「ファミリーカー」であるカローラだからできることだ。軽自動車でもできるかもしれないが、少なくとも、フェアレディ ZEunos ロードスターでは無理だろう。*2

 ご当地 CM ってのは非常に数が多い。
 よく揶揄されるが、ボードに描いたのが映されるのにナレーションをつけただけで、まったく動きが無いものは健在である。最近は、CG や合成、アニメーションも簡単に安くできるようになったので、動きのあるローカル CM も多い。
 林泉堂という食品会社 (なんて URL だ) の、生ラーメンの CM は、とぼけた味の歌に合わせてアニメのキャラクターが踊る、というもので、かつての湖池屋の CM を連想させる。最初に見たときはてっきり同系統かと思った。
 こういう、県単位の CM には方言がバンバン出てくる。NTT の秋田支店も、ISDN だか光回線だかの CM で、秋田弁のラップみたいなのをやっている。

 秋田で、全国区のタレントを使った CM というと、高清水という酒がある。もう大分、前の話だが、駆け出しとは言わないまでも名前がお茶の間に定着するかしないか、という頃の岡江久美子をずーっと使いつづけていた。秋田が彼女を支えたんだ、と思ってる人は少なくないのではないか。

 こないだハードオフに行ったら、『パコダテ人』という映画の DVD があったので買った。東映チャンネルで放送したのを録ってはあるのだが、画質が悪いので見る気になれずにいたのでよい機会である。
 名前で想像がつく通り、舞台は函館。
 彼女には、札幌を舞台にした“North Point”というドラマもある。どちらも、北海道の会社がしかけて作ったものだ。田舎者としては、こういうのは応援したくなる。
 さて、宮崎あおい はその中で北海道弁を話しているのだろうか。そうだったらまた報告する。





*1
「銭形愛」という役名を、プロデューサーは、(製作・放送している) BS-i の i だ、と言っていたが、スポンサーが NTT ドコモである以上、i モードの i が無関係、ということはないと思う。 (
)

*2
「ロードスター」を「道の星」だと思ってる人がいるが、“roadster”と書く。「一人乗りのオープンカー」という意味の普通名詞である。 ()





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