Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第427夜

ユルいテレビ



 またテレビ。
 また「ケータイ刑事」。

 民放の衛星放送の番組って…って論評できるほどは見てないな。一回見た、というのも勘定に入れたとしても、BS ジャパンの「ラブ×デリ」、BS 朝日の「クイズ!人生ゲーム」、BS フジの「relax 音楽館」くらい。
 その範囲で言うと、総じて「ユルい」。ローカル民放――しかも仙台みたいな大都市じゃなくて秋田クラス――で朝 10 時ころにやってるバラエティのようなユルさがある。もっと実も蓋もない言い方をすれば、予算とやる気ないでしょ、って感じ。
 ケータイ刑事はどうやら BS-i の看板番組らしく、ホームページに行くと、放送日とは無関係に常に上の真ん中にドカーンとスペースが割かれている。
 それでも時々、無茶をする。
 前作の「銭形泪」では、レギュラーだった草刈正雄を転任させた後、最終回までの 4 話を「シベリア超特急」とのタイアップで突っ張った。
 そうかと思えば、先日は、テレビ朝日の「富豪刑事」にもレギュラー出演している山下真司を、その「富豪刑事」における役名で出演させてしまった。
 その暴走ぶりをどう受け止めるかで好き嫌いが別れるのではないか、と思うのだが、マイナーとメジャーの中間をうまく泳いでいる、という感じはする。

 先日の話は「富豪刑事もビックリ!勝手にコラボレーション〜刑事祭り殺人事件」というサブタイトルなのだが、警視庁主催で、全国の凄腕刑事を集め、日本一の刑事「デカキング」を決める、というイベント――この辺で、作品とエピソードのカラーを把握して欲しい――で起こる事件が描かれている。
 青森代表「イタコ刑事」、秋田代表「ナマハゲ刑事」、栃木代表「ダルマ刑事」、静岡代表「ウナギ刑事」、京都代表「貴族刑事」、滋賀代表「忍者刑事」。
 言うまでもなく、イタコ刑事は恐山をイメージ ソースとしている。つまり南部。
 でもなぁ。俺には、津軽弁に聞こえたぞ。

 オフィシャル サイトにある出演者へのインタビューを読むと、方言指導の人はいたらしい。苗字しか書かれておらず詳細不明。

 この違いは、今の青森県が津軽藩と南部藩の領地からなっていることによる。青森市の隣、平内町と野辺地町の間には「藩境塚」という藩境の標識があり、そこを境に明確に言葉が変わるそうだ。
 これは人々の意識にも現れていて、また引き合いに出すが、能代山本の合併協議会が打ち出した「白神市」については、隣接する津軽側に拒否反応が強く、南部側に行くと「別にいーじゃん」という意見が増えてくる。
 結局、能代山本合併協議会は崩壊した。原因は内部の地域エゴにあるとしても、導火線に火をつけたのは「白神市」への抗議である。「白神市」に反対した諸氏の今のご気分はいかがだろう。今になってみれば、黙ってても崩壊したんじゃねぇかなぁ、と思われるので、さぞ複雑であろう。

「ケータイ刑事」に戻る。
 確かに、秋田弁と津軽弁として聞くと割とリアルである。
「私は」に相当、「は」の取立ての意味を明確に持っており、場合によっては「私なんかねぇ」にもなったりする、「わだっきゃ」なんてのはテレビでは滅多に聞かれない。
 容疑者が、容疑をかけられたことに反発する際、「はんかくせぇごど言うな」とか言ってくれれば地元関係者は大喜びしたのではないかと思ったりする。

 ダルマ刑事は本当のダルマで、ウナギ刑事はウナギを持ってウロウロしているだけ、貴族刑事は「おじゃる」がくっついているだけ、忍者刑事はそういう格好をしているだけ。方言に関わるのは、この二人のみだった。

 難しいのは、「冒涜」みたいな、あまり日常生活では使われない単語の扱いだろう。
 とりあえず濁点をつけてみたくなると思われるが、「ぼうとく」の「と」と「く」のどっちに濁点をつけるのか、というのは非ネイティブには判断できないんじゃないだろうか。
 方言指導の人の重要性はこういうところにもあるのだろうが、その人自身も困っちゃうだろうなぁ。なにせ、滅多に使わない単語だから、決まった形があるとは限らない。
 なお、秋田では「ぼうとぐ」になる。「ぐ」は鼻濁音ではない。

「イタコ」ってどうなるんだろう。地元でも「イタコ」のまま? それとも「イダゴ」?

 東映チャンネルがこないだユルいことをやった。
「私のグランパ」という 2 時間の映画を 1 時間半で計算してタイムテーブルを組んだらしいのだ。俺はそのタイムテーブルを信用して録画予約をしたので、見事にクライマックスが欠けた。菅原文太が枯れたヤクザを軽妙に演じていて、石原さとみがデビュー作とは思えない演技で頑張ってて、気分よかったのに。
 金だしてビデオ借りて来いってか?





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