Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第370話

バイオリン、ピアノ、ボーカル



 昨年末はコンサートづいていて、5 週間でなんと 5 ステージ。
 昨今はあんまり「コンサート」は言わずに「ライブ」なんて言い方をするようだが、「めざましクラシック」はやっぱり「コンサート」であろう。
 今でこそピアノを習っている俺だが、10 年ほど前は、ヴァイオリンやろうかな、などと思っていた。これは、G クレフというバンドの影響である。ほかにクライスラー&カンパニーなんてのも話題になっていた頃で、クラシック系バンドの走りである。あるいは、今の女子十二楽坊なんかの先駆けになるのかなぁ。
 で、思っただけで、結局は習わずじまい。金かかりそうだな、という気持ちもあったし、今にして思えば、ヴァイオリンって自宅じゃ練習できないよな。一昨年あたりから音の出ない楽器が話題になっているが、ああいうのって結構、音は出るんだよ。エレキギターで体験済み。

 とは言いながら、「めざクラ」に行ったのはスペシャル ゲストの辛島 美登里目当て。この人はあんまり全国を飛び回るタイプではなく、去年のツアーだって、東京・大阪・名古屋。それは「ツアー」か? 秋田なんかに住んでると、お目にかかるチャンスはほとんどない。
 なのでプログラムを見て、たった 2 曲と知ったときには大いに落胆した。秋田くんだりまで来てたった 2 曲か? と逆に同情したりもする。

“classic”という単語は、横文字あるいはカタカナ語排斥論者でも目くじらを立てたりはするまい。それほど難しい単語ではないであろう。だが、辞書を引いてみてビックリする。ここは是非、英英辞典を当たってみて欲しい。大まかに言うと:
1) 第一級の。非常に重要な。
2) 典型的な
3) 単純かつ伝統的で優雅な
 我々が使っている「クラシック」は、3) のごく一部だ、ということになる。
 よく考えてみると、“class”なんだよな。

 次、「めざまし」の方。
 南部――青森県西部ないし岩手県北部――では、「目が覚める」ことを「おどろく」という。が、調べると徳島の方が多い。
 ここに地図があるが、近畿南部、四国、中国西部、九州北東部、という形で帯状に広がる。周圏分布か、と思って調べてみると、「おどろく」にはもともと「目が覚める」という意味があった。どっちも、目を開くしな。
 では、「びっくりする」ということをなんと表現していたのか、というと、「たまげる」である。これは「魂消える」と書く。それくらいの驚きだということだ。
「起きる」との関連では、鹿児島に「ごっと起き」という表現がある。これは「起きたらすぐ」という意味。信州では「むっこき」。大阪には「起き起き」なんてのもあるらしい。

 次に、「朝」関係で調べてみたのだが。
「朝っぱら」が俚言扱いになってるサイトの多いこと。くだけた表現イコール方言って考えは改めようよ。昔はともかく (『俚言集覧』という江戸時代の本が取り上げている)、もはや地域的に偏ってないからさ。
 尤も、俺の知っている「朝っぱら」にはマイナスのニュアンスがある。「朝なのに」「朝からやりたくないのに」という雰囲気。そうじゃない使い方をする地域があるのかもしれない。例文がほとんどないからなんとも言えないが。
 中国や四国、北陸の一部に、「あさっぱち」という地域がある。これのミスタイプではないようだし、俺の読み違いでもない。

 枕草子の冒頭、「冬はつとめて」を記憶している人も多いと思うが、俺の角川の古語辞典では「つとめて」の語義は書いてあるが解説がなんにもない。なんなんだ。

 もう一人のゲスト、伊東 恵理はミュージカル女優だが、素敵な声だった。いかにもディズニー ミュージカルという感じの、透き通った、それでいてどこか可愛らしさのある声。実際、東京ディズニーランドで彼女の歌声が流れているらしい。
 高嶋ちさ子は、トークにもサバサバした感じが出ていたが、顔が小さい。浅香 唯なんかよくそう言われるが、高嶋ちさ子も負けてない。隣に軽部アナウンサーがいるからではあるまい。
 構成はカルテットで、ヴァイオリン 2 人、ビオラ、コントラバス。
 曲の最後に、全員が弓を振り上げるのだが、それがまるで花が咲くようで、印象に残っている。

 今回、これの勢いで、辛島 美登里関係のサイトを見て回ったのだが、彼女が俺より年上だ、ということを知って驚いた。
 俺もいい加減、年を食って、世の中で活躍している、俺よりも若い人を多数見るようになった。というより、俺が関心を持つ分野で中核を担う層が、俺よりも下になっているのだ。なので、かなり意外だった。
 応援してます、お姉さま。



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第371夜「声に出す言語生活」へ

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