Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第349夜

メール マガジン



 freeml という、メーリング リストのサービスを提供するサイトがある。
 発行者でも読者でも、これに登録すると、新しいメーリング リストが開設されたことを知らせるメールが定期的に送られてくる。

 まぐまぐという、こっちはメール マガジンを提供するサイトだが、これも、新しいメール マガジンの発刊を知らせるメールがやってくる。その紹介文を見ていると、新しい、かつ意味のわからない表現が山ほど発見できる。
 一番多いのはやはり、マニアックな分野で使われる省略形の単語である。「テニプリ」が『テニスの王子様』というマンガの短縮形だと言うのはすぐにわかったが、読んではいないので「氷帝」となると調べなければわからない。「テニプリ」に出てくる学校の名前らしい。
 未だにはっきり意味がつかめないのが「キャラメ」。「キャラクター」の「メール」らしいことはわかる。漫画なりアニメなりのキャラクターがメールをくれる (そういう文面、そういう内容のメールが届く――「君たち、後楽園ゆうえんちで僕と握手!」みたいな) のかと思ったが、それにしちゃ数が多いんだよな。
 誤字脱字の宝庫でもある。一々紹介しないが。小説をお届けします、とかいう人がこれやってたりすることが多くて笑うが。
 それぞれの紹介文は 50 字程度と長くはないので、省略形だけで書かれてたり、その中に誤字や脱字が何箇所もあると、もはや解析不可能。
 マニアック、というのはつまりそういうことで、門外漢が解析した上で読者登録してくれる、ということは彼らは期待していないのである。

 話を freeml に戻す。
 こういうところから送られてくるメールは、それ自体が「メール マガジン」になっていて、色々と読むところがある。正直言って、新しいメール マガジンやメーリング リストの紹介より、そういうのを読むのを楽しみにしていたりする。
 その中に、「ウィふり調査団」というのがある。
 読者からの、色んな疑問を調査する、というコーナー。調査、と言っても freeml が調べるわけではなくて、こんな疑問を持っている人がいます、皆さんはどうですか、と意見を募るもの。
 百聞は一見にしかず。現地に足を運んでいただきたい。
 ここでも何度も取り上げているが「ジャージとジャス」、奥が深そうなんで避けて通っているじゃんけんの掛け声。方言というとよく取り上げられる、「青あざ」「マクドナルドの短縮形」などなど。
 やっぱり「ほかの地域ではどう言うの?」という好奇心を持っている人は多い、ということになんとなくほっとする。

 一頃、「プッシュ型」という言葉が使われたことがあったが、メールというのは、ネットワーク上のほかにメディアに比べると、(読む方にとっては) かなり楽なメディアである。それゆえ、仕事関係のものはともかく、簡単に見落としてしまったりする。
 この「ウィふり」もそうだったようで、「そうめん流し」というのは知らなかった。これを読んだ上で、Google で調べてみたが (この作業を「ググる」と言う) 結構な数になる。
 まぁ、確かに「ウィふり」が分析するように中国・四国に固まっているような感じではある。
 俺にとっては、「流しそうめん」というのは「理解語彙」である。やったことも、やっているのを見たこともない。
 鹿児島が発祥の地、なんだそうだ。確かに、北国の発想ではないよな。開聞町には町営の施設がある、というから驚く。
 しかし、俺のイメージとしては直線なんだな、流しそうめんって。この、唐船峡が発祥ってのは、「回転式そうめん流し」で、ちょっと違うような。直線型は高千穂峡だ、という説もある。どっちも「峡」なのは、やっぱり水が肝だ、ということか。

 さて、これと似たような単語に「回転寿司」がある。
 いや「寿司回転」って食べ物があるのではなく、「廻り寿司」って言うところがあるんだそうだ。
 これも、あるメール マガジンで目にした表記である。俺にとっては「回転寿司」なので、なんじゃそりゃ、と思ったことは白状しておく。
 大学でレポートにした人までいるので、詳しくはこちらをどうぞ。
 これによれば「回転寿司」というのは登録商標らしいのだが、ググってみると、「廻り寿司」を解説なしで使う、つまり、これが標準的な表現だと思っている人はかなりいるらしい、ということがわかる。
 なお、「周り寿司」「回り寿司」という表記もあるが、少なくとも前者は誤変換であろう。

 ご飯の「おかず」のことを「おまわり」と言う地域がある、という話は大分、前にした。お膳で、「周囲」にあるからだが。

「回転寿司」も実は「理解語彙」である。俺は、回転寿司というのに 1 度しか入ったことがない。角館のバイパス沿いのあそこだけだ。「流しそうめん」と同様、食い物なんかどうでもいい、という俺の嗜好ゆえ、こうなってしまうのだ。
 そもそも「流しそうめん」ってお遊びだよね…好きな人には悪いけど。知ってますか、わんこそばのソバって、やっぱり質が違うんですってよ。旨いそばを食いたかったら、わんこそばは避けるべきだ、と。どうも、それとイメージが重なっちゃうんだよな。*1

 メール マガジンを出そう、と思っていたことはある。ここで取り上げた単語を選んで、短い奴を、というつもりだったが、昨今の方言濃度低め、間際になって文章をでっちあげてること多し、という状況を考えると、やらなくてよかったね、とは思う。





*1
 今や大食い大会の元祖みたいなわんこそばだが、ほんとは上品な食べ物らしい。少量なのは上流の証拠なのだ。それがどっかでゲームになってしまった、ということだそうだ。まぁ、これも諸説紛紛らしいが。(
)





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