米沢に行って来た。
車を運転しながら「遠いなぁ」と思っていたのだが、米沢から福島までは 50km しかない。米沢は県境の町なのだ。つまり、山形県を縦断したことになる。遠いわけだ。
妹夫婦が住んでいるので、そこに遊びに行ったわけ。俺にとっては 5 年ぶりの山形行きとなる。
コンビニが増えた、というのが第一印象。昔は LAWSON も Family Mart もなかった。少なくとも向かい合わせで立っていたりはしなかった。米沢に入った途端、7-11 が現れる。全部をチェックしていたわけではないが、そこまではなかったはずである。
7-11 のホームページに寄れば山形県内には 100 店舗以上、あるようなのだが。
5 年前にも、コンビニに立ち食いそばが併設されている、ということは書いたが、道路端に看板を出している立ち食いそばは県南部に進むにつれて増えてくる。紛れもなく、そばの産地である。
そして果物王国。「観光もぎ取り園」は健在だ。
米沢と言えば上杉 鷹山である。一頃のブームは過ぎたようだが、地元では根強い人気だそうだ。「成せばなる/成さねば成らぬ/何事も/成らぬは人の成さぬなりけり」というのが上杉 鷹山の言葉 (歌か) だ、というのは今回、城跡の公園に行ってはじめて知ったのだが、土地の年寄りはすぐにこれを口にするという。義弟が憤慨していた。できねぇもんはできねぇ、というのは通用しないそうだ。まぁ、「プロジェクト X」なんてお涙頂戴番組が人気を博すご時世だからしょうがあるまい。プロジェクト管理に失敗したからああいう苦労をするのだ、という視点はあまり得られないものだ。
宿で『観光ガイドブック 米沢浪漫』という観光協会の本を買った。A4、136p、全部カラーでなんと \1,000- 安い。
このガイドブックのすごいところは、国の重要文化財である山形大学工学部 (旧米沢高等工業学校/明治 47 年竣工) を模したデザインの米沢駅の紹介で、「米沢に着いたら、まず米沢駅へ」と書いてあるところである。列車での観光は二の次らしい。
米沢の方言が掲載されている。今日はここから。
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あいべ 又は
えぐべ
「行きましょう」である。秋田の「
あべ」は何度か紹介したが、ここの「
あいべ」という音から、「あゆむべし」の可能性は高くなった。
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あんびん
「大福餅」。
堂々と書いているが、秋田では女性の性器をこれに似た単語で表現する。頭の中でこっそり想像して欲しいのだが、同じ語である。
この一覧では、つぎに「とんま」という意味の「
あんぺ」が紹介されていて秋田衆はドキドキする。
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おさえくら
おにごっこのことらしいが、「くら」は「かけっくら」の「くら」だろう。「かけっくら」が「かけっこ」で徒競走だから、「比べる」ではないかと思ったりするのだが。押さえ比べ?
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おしょうしな
有名な表現。「ありがとう」である。上杉神社だかで見た観光ガイドの人たちが「おしょうしなガイド」だかなんだかという名前だった。
秋田の「
しょし」は「恥ずかしい」。
「
おしょうしな」と「
しょし」がちゃんと共存しているというあたりが、秋田衆にはややこしい。
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がおる
「弱る」
これも有名な単語だが、どういう語源なんだろうなぁ。
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ぎす
きりぎりす。
中世、「きりぎりす」は「コオロギ」を指していた、というのはご存知でしょうか。キリギリスのことは「機織り」とか言ったそうですが。
俺、古典の授業か副読本のどっちかで知ったのだが、こういう知識ってどんどんと失われていくんでしょうねぇ。やだなぁ、円周率は 3 とか言うのがプログラマで入って来たら。
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けなり
「うらやましい」
これは「観光キャンペーン推進協議会」というところの地図にのっていた。以下、「(推)」と書く。
「
けなるい」については、ここでも、和歌山と岐阜の例をあげてある。俺の文章に寄れば、古語辞典にも載ってるそうだから、方言というよりは古い語なのだろう。
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ししょね
「しょうがない」。
一瞬、納得しかけるが、「支障ない」は「問題ない」だから、「しょうがない」とはちょっと違う。知らずに聞くと誤解が生じそうな表現。
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じんだん
「清青豆」
なんじゃそりゃ、という感じだが、「
ずんだ」と言えばわかるだろうか。これは仙台だが。
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ずぐだれ (推)
「いくじなし」。
中部あたりでいう「
じぐなし」だろうなぁ。
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そじる
「本や物が傷む」
難しい単語である。もうちょっとニュアンスが知りたい。
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そんぴん
「偏屈」
これをネットワーク上の名前、ハンドルにしている人を見たことがある。
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ねっちょ (推)
「辛抱強いこと」
秋田で「
ねっちょふけ」と言えば、「執念深い」という意味になる。
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はこぶ
「時計が進む」。
うわ。「
その時計、はこんでる」とか言うんだろうなぁ。これもよそ者が聞いたら驚くだろう。なんとなくわかるけどね。
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はめる
仲間に入れる、ということらしい。「
はめて」というのは、あたしも仲間に入れて、ということ。
「
はまやい」というのも上げられているが、「お入りなさい」という意味であるところを見ると、「はまりなさい」だろうな、元は。
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ゆうわり
「夜業」
俚言集を見てると、ときどきこういうのに出くわす。主に、旧物旧語の場合だが。
「やぎょう」もしくは「よなべ」と読む。まぁ、「よなべ」だろうな。だったら「夜鍋」と書いて欲しい。この編者が日常的に「夜業」と書いているとは思えないのだが。
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わにる (推)
「人見知りする」
これも、信州で使われる。
今回の旅で一番びっくりしたのは、
高畑町にある、「犬の宮」と「猫の宮」。
犬の宮にはこういう言い伝えがある。
和銅 (708年〜714年) の時代、この地域には、毎年一人ずつ人間を年貢として差し出せ、という役人がおり、村人が苦しんでいた。旅の座頭がそれを聞いて不信に思い、甲斐の国から三毛犬・四毛犬を呼び寄せて、その役人に酒を飲ませた。はたしてその役人は大狸・荒狸が化けたものだったのである。死闘の末、タヌキは退治できたが、その犬も息絶えた。
その犬を祀ったのが、この「犬の宮」(正確なところは
こちら)。
猫の宮の方はこう。
延歴 (781年〜805年) の時代、子のない庄屋がいた。ある日、観音が枕もとに立ち、猫を授けた。庄屋夫婦は「玉」と名付けて大事に育てたが、玉は庄屋夫婦についてまわっては何かに襲い掛かろうという様子を見せる。無気味に思った庄屋がその首をはねると、首は天井裏に隠れていた大蛇に噛み付いた。その大蛇こそ、かつてこの村を苦しめたタヌキの怨念が蘇ったものだったのである。
で、その玉を祀ったのが「猫の宮」(正確なところは
こちら)。
*1
何が感動したって、隣接している二つの神社の言い伝えが、70 年もの時を隔てて繋がっている、という点。
これ、特撮者にはたまらない構成だと思うのだがどうか。