両方、並んでいる。
だが、これで「
てれこ」が指す「逆」の意味がはっきりする。右にあるべきものが左にある、という状態を表現するものであって、「熱燗と言ったのに冷酒を持ってきた」という場合には使えないのだろう、と推測することができる (部外者の憶測に過ぎないが)。
業界用語という解釈は、歌舞伎から芝居一般、芸能界全般、という繋がり方をしたものだろう。
だが、どちらも、厳密には「逆」ではない。ワンクッションある。「逆」という意味自体が派生的なものである、ということだ。
また話が逸れるが、「冷酒」と書いて「ひやざけ」と読むか「れいしゅ」と読むか。
俺の語感では、「ひやざけ」と「れいしゅ」とは別のものだ。「ひやざけ」は常温付近、「れいしゅ」の方は積極的に冷やしたもの、という感じだがどうだろう。
さて、方言の方の「
てれこ」はどうだ。
意味はいい。どっちも「逆」なのだから。
だが、なぜこれが関西で使われているのか、という疑問がある。
真っ先に思いついたのは、こうした芸能は近畿起源だから、ってことだった。「業界用語」の「
てれこ」に触れる機会は他の地域よりも多いだろう。
もう一つは、比較的新しい表現だ、ということ。新しいとは言いながら数百年前、日本の中心である京都で使われて周りに伝わり始めたところ、という考え方。これ、前のとはひょっとしたら衝突する。
俺としては、前者ではないか、と思う。
「
てれんこ」は、中国や九州の一部では「もたもたしている様子」を指す。「
てれんこぱれんこ」という言い回しもあるらしい。これは、「だらだら」あたりと似ていると言えないこともない。
実は「業界用語」っていうのも「方言」である。
前にも書いたが、“dialect”っていうのは、限られた人の間で起こる言語現象を言う。地域的に限られているのが「地域方言」、人の集団によって限られるのが「社会方言」というわけだ。日本では、前者を「方言」と言ってしまっている、ということなのである。
それにつけても、抽斗一つ分くらいあったカタログ…とっておけばよかったなぁ。
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