こないだ、「あなたの話は学者みたいだ」と言われた。
口を開けば「唯ちゃん」だの「
ウルトラマンコスモス」だのと言っている学者もあるめぇ、と思うのだが (いたらごめん)、どうやらそういう印象を持たれてしまったのは本当のようだ。
そう言えば、ここの文章について、「スノッブだ」と言われたことがあって、多少、尊大な印象はあるかもしれない。でも、ダ体・デアル体で文章書いたら、そういう風にはなるよな。
まぁ、俺を学者と評した人とダ体で話したわけではないのだが。「
スケバン刑事」の話もしてないし。
「
さがし」という単語がある。「賢し」と書く。「さかしい」で漢字変換すると「賢しい」と出るので、純然たる俚言というわけでもあるまい。でも、せいぜい時代劇で「こざかしい (小賢しい)」を耳にするくらいで、使わないよな。
意味も難しくない。「頭がいい」ってことで、「
あい、このわらし、さがしごど (あら、この子は頭がいいわね)」というような感じで使う。勿論、「
あの おやじだば、おいがだど違って さがしものな (あのオッサンは俺たちとは違って頭がいいからねぇ)」と揶揄することもできる。
それで思い出すのは「猪口才」である。
多分、「猪口」は当て字だと思う。「ちょこっと」とかの類じゃないかしらん。「才」がちょこっと。まぁ、「猪口」も小さい器だし、ぴったりだよね、ということで。
これ、「赤胴鈴之介」の再放送時にしか使われない死語かと思ったら、意外に生きている。
意味はいくらか変っているようだ。「猪口才」は人を形容する言葉で、しかも、罵倒する言葉だと思っていたが、人以外にも使われている。仕事の進め方なんかが小手先だけのものだったり中途半端だったりした場合に、こんな猪口才なやり方で、と言ったりする。これは「小賢しい」も同様のようだ。
で、探してみて驚いた。
「坂が急である」という意味の「
さがしい」がある。愛媛、高知、山梨、神奈川の例が見つかった。神奈川では「さがしい」からついた「サガシ峠」というのがあったらしい。通用範囲は太平洋沿岸というあたりか。
なんでだろう、「坂し」だと安直過ぎる、と思っていたら、「峻しい」と書くのだそうだ。
となると、これも「
さがし」と一緒で、古語が使われなくなって一部地域に残っている、ということで、純然たる俚言というわけではないのかもしれない。
ところで、「峻」のつくりの部分は「ぬきんでる」という意味である。「俊英」なんて単語があるが「ぬきんでた人」というのは「優れた人」であり、「口先がぬきんで」ていれば「教唆」で、「ぬきんでた山」というのは急だ、ということになるのであろうか。
これと「賢」に関連を感じるのは考えすぎだろうなぁ。「賢し」には「健康だ」という意味もあるらしいんだけどさ。
「頭がいい」の「
さがし」は、秋田、岩手、青森 (津軽・南部とも)、北海道の例が見つかる。「
峻しい」と違って、地域的に固まっている。
言い忘れたが、「
さがし」の「
が」は濁音。鼻濁音では「探し」もしくは「佐賀市」になる。「急坂」の方の「
さがしい」で、「が」が濁音かどうかは不明。
大阪弁あたりの、「
ぼん、かしこいなぁ (坊主、頭がいいな)」あたりはまだ本来の雰囲気を残しているような気がするが、全国共通語としての「賢い」はどうだろう。ちょっと「ずるがしこい」の方に傾いていないか。「なるほど。それは賢いね」と言った場合、トリッキーな手法を指していはしないだろうか。
と思って
大辞林を引いてみたら、二番目の意味として「要領がいい」があった。なるほどねぇ。
「かしこい」に対応していそうなのとしては「
かしかい」「
はしかい」「
はじかい」というのが散見される。東海地方あたりのようだが、これは変形だろう。
となると「
はしこい」も関係あるのか、と連想されるのだが。
そういや富山から石川にかけて「
かたい」というのがある。「堅い」か。どちらかといえば、「いい子」という感じらしい。でも、福井で「
かたいけの」と言うと、お元気ですか、という意味。となると「賢しい」との類似が気になる。
「いい子」のことを「お利口さんね」などといったりする。これなんかまさに「賢い」である。やっぱり繋がってるのかなぁ。
手紙の最後に「かしこ」なんて書いたりする。女の人だけらしいが。これは「賢い」ではなく「かしこまる」の方である。
なーんてことをポロっと言うから「学者みたい」って言われるんだろうな。でも、常識じゃないか。
とか言うからスノッブとか言われちゃうんだよな。