俺の知識では、誰かが結婚する際、新婦には“Congratulations!”とは言わない。
なぜかというと、“Congratulations!”には「大変だったねぇ」「ご苦労なさったんでしょう」、つまり「なんとか相手が見つかってよかったねぇ」という含みを持っているので、女性にそれを言うのは失礼である、ということらしいのだ。
日本での例しか見てないが、どうも昨今では、それは通用しないようである。
まず、こういうマナーというのは時代とともに緩くなり、サバけていくものである。それと、女性を特別扱いするのは時代の潮流から外れている、ということもあるようだ。
*1
なお、前に、Apple が Windows 陣営を揶揄して
C:\NGRTLTNS!
って広告を出したことがあるが、これでもわかるとおり、「おめでとう!」の際は、最後の‘s’は必須である。*2
さて、浅香 唯が結婚した。
やはりファンとしては、正直言うと、あ〜ぁ、という寂しく思う気持ちが無いことはないのだが、相手は、14 年前に噂になったかのドラマーで、つきあいはずっと続いていた、ということを聞くと、これはこれでうれしい。各社の報道で「純愛」という言葉が踊っていたが、まさにそうなのであろう。
途中、5 年ほど、芸能活動を休んで復帰して、ということがあったので、ひょっとしたら、そういう意味も含めて、“Congratulations!”という言葉は失礼に当たらないかもしれない。
「結婚」に相当する俚言は見当たらない。
これに近い言葉としては、「
嫁取り/
婿取り」、「
嫁貰い/
婿貰い」というのがある。
もう、「結婚」という意味の俚言がない理由もお分かりであろう。ごく最近まで、結婚はこういう意識で行われてきたのである。
今だってなくなっていない。結婚式は○○家と□□家の間で行われるし、ちょっと気の弱い男性がいると「婿だもん」と言って馬鹿にする。
ムコ殿! でも冬彦さんでも、テレビや映画でそれを描こうとすることにはまったく問題ないと思うのだが、受け止める方は、そういう抜きがたい色眼鏡を持っている。そう簡単には変らないだろう。
結婚にまつわる表現を探していて気づいたのは、日本語以外の言語を扱ったサイトが多くヒットすることである。
いつも、作業の取っ掛かりとして、例えば「お金」にまつわる方言現象を知りたいと思うと、ごく単純に「お金 AND 方言」で検索するのだが、「結婚 AND 方言」では、
ショオ族 (中国)
ダトーガ (タンザニア)
ヨーン(タイ)
と、こんな具合である。
おそらく、ある民族、ある文化圏を調査しようと思うと、結婚というのは、言葉に並んで重要な現象である、ということなのだろう。
「夫婦」には「みょうと」という言い方がある。
「めおと」が「みょうと」になるのには別になんの不思議も無いが、俺にはなんとなく関西っぽい感じがある。演歌やなんかの影響かもしれないが。
読み方からすると、「女夫」が本来の表記なんだろうかなぁ。
『秋田のことば (秋田県教育委員会編、
無明舎出版)』によれば、「
ちれあ」という表現がある。「連れ合い」である。
「夫婦茶碗」とかって、将来は消えてなくなるのだろうか。
「オネジ」と「メネジ」は?
おそらく、結婚式、披露宴、祝言、といったあたりには、各地固有のイベントがあって、それには、固有の名称があるんだろうと思うのだが、探し方が悪いのか見つからない。
出雲では、「祝言」を「
しげん」という、という記述は見つかった。(「
出雲弁の泉」)
前に、こういう宴席の後、残り物で主催者だけがやる飲み会を、秋田や津軽で「
アドフギ」と言う、というような話はした。
秋田弁大戯典によれば、結婚式の場合、
あどふぎは 3 日続いて、それぞれ別の名前がついている由。
そこでは、結婚式を「
おふるめ」などと紹介した後、「振舞」が語源としているが、「お披露目」だったりはしないだろうか――と思ったが、「振舞」だという説明をしているところが多い。結婚相手を披露する、という考え方は、最近のものなんだろうか。
「
ごしゅうぎ」と呼ぶこともあるようだ。え、と思って
大辞林で調べてみたら、
しゅうぎ【祝儀】
(1)祝いの儀式。祝典。特に結婚の祝いをいう。
とある。結婚は特別扱いのようだ。
というわけで、一安心である。
後は自分か。
もう一度。
おめでとう、唯ちゃん。