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Shuno の方言千夜一夜
第286夜
黄金週間平鹿雄勝篇
後半戦は平鹿郡と雄勝郡である。
まずは、
増田町
。
国道から県道に逸れると、道の端っこにまた雪が残っている。確かに、ちょっと肌寒い。県境まで来たのだなぁ、と思う。
上畑温泉の
さわらび
という宿へ。
新しい施設のようだが、無駄なもののない必要にして十分な温泉宿である。簡保の宿なんだが、公営でこういう心地よい宿は珍しい。
仲居さんたちは抑制の効いた秋田弁で、旅情と (我々は秋田衆だが) 利便性のバランスが取れている。
山ふぐ (鯰) と山菜の料理を満喫したのだが、ここは観光案内のページではないので話を端折る。
次は
東成瀬村
。
*1
ここは仙人の村、なんだそうである。
詳細は村のホームページにあたってもらうとして、巨大な仙人像がある。
その横に、「ふる里館」という「郷土文化保存伝習施設」がある。
ここが方言の宝庫であった。
「
いづめ
」とかな。
藁のカゴである。多分、字で書けば「飯詰」なんだろうが、ゆりかごである。
ちょっと大き目の「おひつ」を想像して欲しい。ご飯が冷めにくくなるように、とそれを入れる籠を作ったとする。これはまた、乳児のゆりかごにはちょうどいい大きさな訳である。
とまぁ、こんな調子で「旧物旧語」の宝庫である。
しかしながら、使われている言葉が俚言と標準語形とがゴチャゴチャになっているような気がした。統一されていない。
メモしてこなかったが、魚の形に似たわらじ、というのがあった。その魚を挙げて「○○に似ていることから」と書いてあるのだが、その○○が俺にはわからない。
「蚕の種」を入れた器、というのがあるのだが、何を入れていたんだろう。
増田町に戻る。
まんが美術館
だ。オタクのくせに初訪問――とご親戚一同に驚かれてしまった。
*2
田舎の施設と馬鹿にしてはいかん。立派に美術館である。過去の展覧会の図録も売られているのだから。
石ノ森萬画館
など、各地の同系の博物館や美術館と提携しているらしく、そういうところのグッズも豊富。逆に、まんが美術館そのもののグッズが弱いように思った。地元の矢口 高雄氏の漫画がフルセット揃っている (と思う) のは大したもの。
わずか 2 時間弱で後にせざるを得なかったが、ちょっと残念。
すまん。これも方言とは無関係だな。
こないだ出たばっかりの『
東北ことば
(中公新書ラクレ)』にも矢口 高雄氏の話は載っている。
それによれば、「釣りキチ三平」の三平はどこに行っても秋田弁なんだとか。俺にはちょっとばかり「標準方言」のにおいがするのだが、それは単に、俺が県南の方言を理解していないからか。
俺の理解では秋田は無声音の地域なのだが、どうもそうでないケースが多い。
例えば「行きたくない」は「行きてぐね」で「き」はほとんど母音が響かない。“ikhtegune”のような感じなんだが、県南出身の人の発音を聞いていると「行ぎてぐね」である。「ぐ」と濁っている以上、母音はきちんと響くのだ。これについてはまだ調べていない。県南だけでなく、秋田市の北西、五城目でもそういう発音を聞いた記憶があるので、秋田市がひょっとしたら他からずれているのかもしれない。
話を戻す。この本、俺にはなんだか表面的に感じられる。いいことばっかり書いてるからじゃないだろうか。
読売新聞のサイト
で公開されていたのだが、なくなっていた。本が出たからか。
佐藤 養助
。
稲庭うどんは
稲川町
かと思ったら、佐藤 養助の蔵が増田にある。
*3
漆をふんだんに使われていて、これを保存するため、蔵の周囲を覆う形で建物を造った。蔵の中に入ると、漆が鮮やかでビックリする。
そこで、稲庭うどんを綯う様子を見せてもらった。速い!
*4
毛糸を両腕に通してそこから毛糸球を作る、って作業があるが、あれの逆だと思ってもらえればよい。ひも状にしたうどんを二本の棒に掛けていくのである。それを延ばす。
この人の言葉遣いが、やわらかめの秋田弁。ご芳名帳みたいなのがあったのでちらっと見たが、東日本を中心に各地から訪問しているようだ。名古屋、というのもあった。そういう人を相手に説明しているのだから、この人の秋田弁は「よそ行きの秋田弁」のモデルとしても参考に出来るのかもしれない。
というわけで、がんばったつもりだが、やっぱり観光案内になってしまった。
*1
この URL (higashinaruse.com) には驚いた。
(
↑
)
*2
正確には、「増田町ふれあいプラザ」。公民館、図書館、郷土資料館などとの複合施設である。
(
↑
)
*3
「手延べそうめん」というような言い方があるが、それに則ると稲庭うどんは「手綯えうどん」と言う。
(
↑
)
*4
稲川町は、稲庭村と川連村が合併してできた町。
(
↑
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