Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第247夜

寝る




 またこの話になってしまうのだが、つい最近まで、不本意ながら社畜状態。7/20 から盆までの 3 週間、1 日に 6 時間以上眠った日が無かった。最初の頃は 3 時間で再出社していたが、そのうち、いつ目覚まし時計を止めたのか記憶に無い、という状態になったので、無理はせず、どんなにプロジェクトが滞ろうが 5 時間は寝ることにした。なに、出社しなければこっちのもんである。そもそも俺のせーじゃねーしな。これが高じると出社拒否になるのだろう。

 考えてみれば、「夜具」という単語もあんまり使われない単語である。普通は「寝具」というのだろうか。
 俺の知っている範囲では、この分野ではあんまり秋田弁特有の俚言はない。「枕」が「ぐら」、「敷布」が「」になるくらい。
 ところで、「掛布」というのはどうだろう。「敷布」に対する「掛布」って今だに理解語彙の域を出ないのだが。大体、この漢字変換プログラムでは出てこない。出てこないということは、苗字としての「掛布」も登録されていないということではある。
「シーツ」は「シーツ」である。ただ、秋田弁の特徴として、最後に「」が聞こえる。「シーツ」に限らず、「パンツ」「おいづ (俺のもの)」「祭日」など。「つ」だけでなく、ウ段の音全般にこういう傾向がある。これを発音するには、例えば「ツ」と言った後に、ちょっと口をあけるとよい。

 旅館や、ホテルでも和室なんかに泊まるとベッドではなく布団になる。そのときどっかに書いてあるのが「布団に敷布をかけて使用してください」という奴である。
 別に言われりゃやるし、普段からそんなずぼらをしているわけでもないのだが (してないわけでもない) が、「必ず」なんて書いてあると、そこまで言わなくても、と思う。
 これを説明してくれる俚言があった。
あかとり」である。
 勿論、敷布のこと。
「垢取り」だろうなぁ。それだけ汚れるってことか。
 見つけたのは、Maco's word room の「秋田の方言」にある「田尻のことば」である。
 用例を集めようと思って検索エンジンにぶち込んでみたが、

越後の百姓 傳次ヱ門の「越後吉田の方言集」
我が愛しの故郷旭川の「北海道弁講座」
 の 2 つしか見つからない。日本海側北部〜北海道ということなんではあろうが、もう消えかけている俚言なのかもしれない。

「たんぜん」ってご存知だろうか。「丹前」と書くのだが。綿入れ半纏と言えばいいのか。ただし、下は足元までと長い。辞書を引くと「どてら」なんて書いてある。
 で、大辞林には「寝具にも使う」とある。
 確かに、我が家では使うのだが、どうやら他の家庭では使わないことも多いようだ。肩まですっぽり入ってあったかいのに。
 折り込み広告なんかを見てると、特に子供向けなんかで丹前風の夜具を見かけることがある。黙って丹前を使えばよかろう、と思うのは俺だけか。

 寝るときに着るものを「ねまき」と言う。これをなんと書くか。「寝巻き」らしい。「寝間着」というのならわかる。なぜ「巻く」のだろう。確かに、和服は巻くように着るが。
 これは地域によって「ねま」「ねば」(「魚津弁」)と言うらしい。「ねいしょ」というのもある。これは「寝衣装」(宮城県桃生郡)。
ねま」の方は、寝室を指す地域もある。「寝間」である。
 これは結構面白くて、「寝室」と「寝床」が結構、交錯している。つまり、「寝室」に対応する俚言形を調べると「ねどご」が複数見つかる。
 更に「ねござ (「魚津弁」)」も出てくる。これは「寝御座」かと思ったが、どうやら「寝茣蓙」らしい。「寝茣蓙」を辞書で引くと、夏に布団の代わりに敷く茣蓙であるというのが出てくる。これが通年使用されるようになったものか。で、「寝茣蓙」→「寝床」→「寝室」というわけなんであろう。

きどころね」「いどころね」が居眠りであることは前にも書いたような気がする。「いどころね」は「居所寝」だろうと思っていたのが、「きどころね」の「き」を「着」とする解釈があるようだ。服を着たまま寝るわけだから、当てはまるといえば当てはまる。が、「どころ」は?
 この 2 つは、どうやらあちこちで使われているようである。

 盆休みの間は、18 時間睡眠であった。例えば、午前中に映画を見に行って、帰ってくると昼寝。そのまま朝まで、だったのである。至福の数日間であった。



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