Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第237夜

ふるさと日本のことば−番外編 (3)−



 この番組では、次週予告の際に「見てね」というのをその方言で表現していた。とりあえず羅列してみる。

てくれておくれちょうだいてやるてねよう
北海道見たらいいんでないかい
青森見でけへ見であんせ
岩手見てくなんしぇ
宮城
秋田見でけれ
山形
福島見てくんなんしょ
茨城見てくんちょ
見てくんにゃ
栃木見てくんなんしょ
群馬見てくんない
埼玉見んべぇ
千葉見てくったいよぉ
東京ご覧ください
神奈川見てけーろ
新潟見てくんなせてー
長野見ておくれや
山梨見ておくんなって
富山見てみられ
石川見まっしね
福井見てんでのう
岐阜
静岡見てごー
愛知見てちょーよ
三重見てなー
滋賀見てみやんせ
京都見ておくれやす
大阪ほな見たってや
兵庫見たっとーな
奈良見てやー
和歌山見やな、あかないしょ
鳥取
島根見てやんさい見てごしたい
岡山見てちょーでぇー
広島見てつかーさいや
山口見てくれさん
徳島見てはいりょ
香川見まい
愛媛見ておくれんかなもし
高知見とおせ
福岡見ちゃんしゃいね
佐賀見てくんしゃいね
長崎見らんばよ
熊本見てはいよ
大分見ちょくれ
宮崎見ちくんないよ
鹿児島お見やったもんせ
沖縄んちくいみそーりょー

 抜けているのがいくつかある。
 宮城は第一回の放送なので予告がない。山形は、次週予告のテロップがどういうわけかなかった。岐阜と鳥取も抜けているが、これは理由不明。俺がメモし損なった可能性がある。

 まず目立つのは、東京の「ご覧ください」であろう。
 字が違う (これだけ「見」でない) のもさることながら、異様に丁寧である。文体が高すぎる。
 秋田の「見でけれ」、北海道の「見たらいいんでないかい」、大阪の「見たってや」とあたりを見るとわかるが、年長者には使えない。これは「見てね」相当の表現である。
 と思って気をつけて見ていくと、岩手「見てくなんしぇ」、新潟「見てくんなせてー」、京都「見ておくれやす」、広島「見てつかーさいや」あたりもそうらしい。「見てください」相当の表現であると思われる。
 埼玉「見んべぇ」は、「見てね/見てください」なんだろうか。「見よう」ではないのか。香川「見まい」もそんな感じがする。
 和歌山「見やな、あかないしょ」は「見なきゃだめでしょう」なのではないか。北海道「見たらいいんでないかい」も明らかに異質。
 大阪「ほな見たってや」の「ほな」は必要か。「見たってや」だけで十分、大阪弁だと思うのだが。
 そんなわけで、比較してみようか、という意欲が一気に失せるわけである。

 大勢力は「見てください」系である。「けれ」もこれの変形とする。「見ておくれ」もいくつかある。「見てはいよ」も「ください」の「さい」が「はい」になったもんだと思う。
 大阪「見たってや」を筆頭に「〜してやる (この場合「〜してやってください」なんだろうが)」も多い。青森 (南部) の「見であんせ」もこれかもしれない。
 広島の「見てつかーさいや」は「〜して遣わす」か。
 富山「見てみられ」、滋賀「見てみやんせ」は「見てみる」で分けようと思ったが、「見てみられ」は「られる」による敬語表現かとも思ったりする。「見てみやんせ」は「てやる」系か?
 島根「見てごしたい」と静岡「見てごー」の「ご」はなんだろう。

 青森、茨城、島根の三県が並列表記。県内各地で異なる表現を使うのであろうが、であれば、三県だけというのが逆に不自然である。北海道の浜言葉、岩手の海側と山側、と明確に異なる方言を抱えている県は少なくないはずだが。

 そんなわけで、今回も散漫な内容で、なんともキレの悪いまま終わる。
 なんと言っても、文体が統一されていないのが大きい。確かに、敬語体系がキレイに整っていない方言もあるにはあるが、例えば、その筆頭である秋田でも「見でれけす」とすれば「見てください」相当になる。
「見てね」と「見てください」の両方があれば面白かったと思うのだが。
 語尾で分類してみる、というのも考えたが、ちょっと材料が少なすぎるのでパス。

 この番外編のシリーズは企画倒れかもしれないなぁ。




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