Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第222夜

ふるさと日本のことば (15) −山形、茨城、岐阜−



山形県−(1/28)−

 いきなり雪下ろしでかましてくれる。雪下ろしのことを「雪掘り」というとは。掘り出しているわけでもないのに。

 地域が荘内と内陸、と分けられているのがちょっと気になる。
 まぁ、知らない人に置賜・最上・村山と言っても混乱するかもしれないが、内陸の南部とか何度も言ってたからかまわないのじゃないかと思うのだが。

 酒田の「はげ (〜だから)」が紹介されていた。同系統の表現は秋田にもあって、「すけ」なんていうところがある。
 これは、関西の「さかい」である。
 伝播経路はもちろん、北前船。
 で、「なんぼ」が取り上げられていたが、これ東北全体で使わないか? 結果的に北海道でも使われるわけだが。これは全て関西からの伝播で説明できるのだろうか。
 尤も、商売の表現だからなぁ。
 これに関連して、カール氏が、「なんぼ」は標準語だと思っていた、と発言したのが興味深い。つまり、俚言と片付けるには使用範囲が異様に広い。

やばつい」が「ぬれていて気持ち悪い」たとは思わなかった。確かに、秋田の「やばっち」にもそういうニュアンスがある。単なる「汚い」ではない。つまり、掃除してなくてほこりだらけの部屋なんてのは、「やばっち」とは言わない。
 だが、つららからの水滴が背中に入った、なんてのは「やばっち」ではないのである。これ、気持ちは悪いかもしれないが、汚くない。

 今回のハイライトは、「(1)」であろう。
 これ、「いちかっこ」と読む。
 もちろん、〇つきであれば「いちまる」である。
 女子高校生に言わせると「『まるいち』は、かわいぐない」のだそうだ。
 アクセントも「にまる」となる。
 書く順番で言うのだ、という説明があった。確かに、丸つき数字は最初に数字を書く。
 括弧つきはどうだ? 俺は左から順番に書くが。山形では数字を先に書いて、後から両側に括弧なのだろうか。

 山形に何度も出張したのは 2 年も前だが、久しぶりに行きたいなぁ。仕事抜きで。

 ダニエル・カール
宮城教育大 遠藤 仁
山形放送局 佐藤 龍文

茨城県−見てくんちょ、見てくんにゃ (2/4)−

 もちろん、ここまでこの番組をご覧になっていた人は、茨城は言語的には東北である、ということはご存じであろう。
 そういう路線の話である。個々の現象を別にすると、とりたてて目新しい話題はなかった。

 レンコンのことを「ハス」と呼んでいた。
 これで思い出すのが「花」と「小麦粉」の話。
 英語では、どちらも「フラワー」。ただし、スペルは“flower”と“flour”である。
 これ、古くは「一番いいとこ」という意味の単語なのである。外見に着目すれば“flower”で、栄養摂取の面に着目すれば“flour.”
 つまり、食べること、収穫することの方に重点があるから、根だけであっても「ハス」、というわけだ。

「でたらめ」「嘘」という意味「ごじゃっぺ」が紹介されていたが、これ、「おてもやん」に出てこないか?

 ゲストのマギー司郎だが、俺は割と好きである。低く評価する向きもあるようだが。後、お気に入りなのはマジック・ナポレオンズね。秋田が誇るインチキ マジシャン、ブラボー中谷 (なかや) というのもいるが。
 で、この人たちに特徴的なのは、しゃべりで笑わせることである。つまり、一種の信用をかちとる。この過程において、マギー司郎の茨城弁が武器として有効なのである。
 その上で、騙す。ここのギャップを我々は楽しんでいるわけだ。
 マギー氏曰く、マジックを見ている方はある種の劣等感を覚えているから、それをやわらげる効果がある、とのこと。

〜め」という語尾が面白かった。
 動物なんかに使う指小辞らしい。「犬めと散歩に行く」という感じで使うのだが、「馬鹿め」の「め」とは違って、蔑視のニュアンスはない。秋田で言う「こ」にあたるのか。
 あと、「カンプライモ」かな。これは、じゃがいものこと。

 地獄納豆、旨そうだったなぁ。
 藁づとに積めた大豆を土の中に産めて、上から火を燃やす。それで発酵させるわけである。

手品師 マギー司郎
茨城大学 川嶋 秀之
水戸放送局 坂本 朋彦

徳島県−見てはいりょ (2/11)−
 すいません。見逃しました。
 再放送を見てから書きます。


岐阜県−(2/18)−

 岐阜というと野口五郎しか覚えてなかったが、中条きよしもだったか。

 冒頭で紹介される表現は、「やっとかめ」「どたわけ」と全く名古屋のものであった。
 そこで登場する人たちが、自分や他者の言語行動について割と冷静に観察しているのが印象的。
 特に、大阪の人はどこでも話が通じるが、自分達は「どこからいらしたんですか?」と聞かれてしまうのが納得いかん、と言っていたおばさん。同感です

 西と東が入り混じっている、と表現されていたが、どこもそうだ。個々の現象を別にすれば、周囲から隔絶された方言はない。そうなったら、もはや方言ではなくて別の言語になってしまう。
おおきに」が使われているが、アクセントが違う。岐阜では「おきに」、京都では「おお」である。
 これについては面白い説明があった。
 美濃 (岐阜の南半分) を中山道が通っている。したがって、京都から言葉が流入してくる。そこから尾張に言葉が伝わっていく。
 しかし、安土桃山〜江戸以降は、尾張 (名古屋) が中心都市になる。こんどは、尾張から美濃に言葉が入ってくる。
 美濃の言葉の特徴はこうしたできたのだそうだ。
 飛騨については、飛騨の匠が京都と行き来する。そういう形でダイレクトに言葉が伝わってきたらしいのだが、「飛騨の匠」の発言力ってそんなに強かったのか?
 今回の放送で特徴的だったのは、スーパーで表示するときに、東日本的な現象と西日本的な現象とで色を分けていたことである。ひょっとしたら今までもやってたのかもしれないが、気づかなかった。

しな漬」という単語がいきなり出てくる。それは何だ?
 ま、画面に出てくるから見りゃわかる、と思ったのかもしれないし、「色んなものを漬けるから『品漬』」という説明もあるが、ちょいと不親切じゃないか。
「きのこ」を「こけ」と言っていたのも印象的。確かに、同じ仲間だ。
 が、同じ仲間だということにずいぶんと早くから気づいていたことになる。ひょっとして、「苔」とは別の意味なのか?

ためらって」というのは「気をつけて」という意味である。なるほど。
 が、中条氏が指摘していたが、紹介されているビデオを見ていると「ためらって。気をつけて」と続けて言っている。いいところに気づく。
「気をつけて」という意味の「ためらって」は勢力を失いつつあるのではないか。「躊躇する」に意味を譲りつつある、ということなのだろう。

俳優 中条きよし
研究家 加藤 毅
岐阜放送局 浅野 正紀




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