Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第195夜

大阪初体験



 もう一ヶ月も前の話になるが、大阪に行ってきた。
 秋田−大阪は飛行機が二往復あるのだが、俺が使ったのはどちらも関西空港。伊丹の奴は、夜遅くて都合が悪かった。
 メカ好きな男の子の端くれとして、一時間半かけて空港内を見物してきたが、二階 (国内線発着) の暗さと、三階 (レストランや土産もの屋) の天井の低さが印象に残った。
 飛行機の発着をぼーっと眺めていられる場所が無いというのは辛い。展望台はあるらしいのだが有料。バスでないと行けないらしいが、そのバスもまた有料なのだった。さすが大阪、と思った。さすが関空と言うべきか。
 そういう点で、屋上を無料開放している羽田空港は割と好きなのだが、滑走路が増えた関係で発着が分散、一望することができなくなり、かなり寂しいことになっている。まぁ安全運航のためにはやむをえないのだろうが。

 さて大阪弁の話。
 残念ながら、大したネタは拾えなかった。
 去年、名古屋に行ったときもそうだったが、耳が慣れているせいか、特異な表現をキャッチできないのである。
 別名鉄人 28 号、ラピートの切符を買おうとしたときに、窓口のお姉ちゃんが「せんよんひゃくえん (1,400 円) になります」と言っていたのを聞き、文体の高い場面でも方言を維持するのはさすが、とは思ったものの、まぁそれくらいである。耳新しい語彙や現象は捕まえられなかった。
 ラピートの車掌は標準語。英語もしゃべってたが。
 宿泊したホテルの係員も、全て流暢な標準語であった。これは場所柄から言えば当たり前か。旅館であれば、そんなことはなかったであろう。

 なんばの地下街で、念願のネギ焼きを食う。旨い。
 御堂筋〜心斎橋〜千日前〜日本橋〜通天閣を集団で歩いた。
 法善寺へも行った。ここは不動明王を祀っているのか、と驚いたが、よく考えたら「水掛け不動さん」なのであった。スケバン刑事づいてるなぁ、と思いつつお参り。
 道具屋筋で、義弟夫妻への土産に、飲み屋なんかに貼ってある「呑み放題!」の POP を購入。
 店頭でその POP を持って、金を払おうと奥に持っていったら、「えろうすんませんなぁ」と言われた。なんのことかと思ったが、客にレジまで持ってこさせてしまったことに対する「すんません」なのだった。さすが商人の町。
 中古のたこ焼き器が死ぬほど並んでいた。\2,000 くらいからあるようなので、興味のある方はどうぞ。
 途中、全国チェーンの喫茶店で一休みしたが、ここの店員も基本的には標準語。
 団体行動ゆえ、日本橋は通過するだけ。中古 LD を探している俺には目の毒である。それにしてもやけに多かった。

 腹がこなれたあたりで、「ソ二禁」の店へ。
 これは、この界隈に多い串カツ屋。
 テーブルに、薄めのソースたっぷりのバットやツボが置いてあり、ここに揚げ物をドブっと漬ける。
 一度口に入れたものをつけるのは、不衛生ゆえご法度。「ソース二度漬け禁止」というわけ。
 驚いたことに、ここの店員のお姉ちゃんたちも、多少イントネーションやアクセントに大阪弁っぽさがあるものの、基本的に標準語。
 特急列車の車掌、あるいはホテルや喫茶店が、気取った雰囲気を演出するため、積極的に標準語のコードを採用するというのはわかるが、串カツ一本 \80 也という非常に庶民的な店で、標準語とは驚いた。
 これまでにも、大阪弁も衰退している、ということは何度か紹介してきたが、それを目の当たりにした。
 ただし、こぎれいな店で、若いカップルの客がいたりして、庶民度が若干不足していたのかもしれない、という気はする。
 旨かった。カツもさることながら、どて焼きが旨い。

 夜は 50 人で大宴会。
 酒が回ってきたあたりで、泉 (仙台市泉区) 出身の男が「ねっぱる」という語を使う。
 これを聞いて理解できる大阪の男性と、理解できなかった名古屋の女性。

 翌朝は、動物園前から天王寺まで歩いて、タコ焼きを食う。焼きたてだから熱い熱い。
 昼飯には、駅でけつねうろん
 「アイスウォーターサービス」という機械があって、只の冷水器にたいそうな名前だなぁ、大阪ってこういう派手なネーミング好きそうだよな、と思いながらコップを突き出してスイッチを押したら、水といっしょに小さな氷がジャラっと出てきた。文字通り「アイス」と「ウォーター」なのであった。

 というわけで、方言の話というよりは、食べ歩きの話になってしまった。
 最も印象に残ったのは、通天閣下で見た、見るからにオッサンというオカマであった。




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