Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第194夜

俺様まつり



 夏祭りのシーズンが終わった。後は、ご先祖様と、故郷を見限っといて休みのときだけ帰ってくる人たちをお迎えしたら、すぐに収穫期だからしばらく働き通しとなる。
 その点、サラリーマンには、これからしばらくは月に一度は休日があるので助かる。ゴールデンウィークが終わったときの絶望とは大違いである。

 秋田の夏祭りといったら、やはり竿燈 *1 であろうか。
 今年は、会場の目の間にあるビルに勤務しているので、労せずして見ることができた。しかも、上からという、滅多に無い構図である。その分、帰宅するのが大変だったが。
 竿燈に参加するのは、現在、大町 (おおまち)〜楢山 (ならやま)〜牛島 (うしじま) と呼ばれている地域の他、川尻 (かわしり)、八橋 (やばせ)、保戸野 (ほどの)、新屋 (あらや) の住民である。
 ここで「参加」する、という言葉を使ったのはちゃんと理由がある。基本的に竿燈は大衆が参加する祭りではない、ということだ。
 説明の必要はあるまい。あんな巨大なものを、練習もしないで腰やら額やらに乗せられるわけが無い。ニュースでもこういう表現が使われるが「日ごろ鍛えた妙技を披露する」祭りなのである。
 観光客向けに小さな竿燈で実際にやってもらうコーナーも用意されているのだが、それはそれ。興がのれば誰でもハネることができる「ねた」とは世界が違う。
 俺は上に挙げたルートを突っ切って通勤しているのだが、竿燈の区域に入ると空気が一変する。あぁ、竿燈って地域限定の祭りなんだなぁ、と思うわけである。
 ソーランにしろドンパンにしろ、こういう「やる人」と「見る人」が画然と別れている祭りって増えてないか?

 やはり方言といったら、「」「ねた」であろう。「眠い」を語源とする、睡魔払いの祭りであるという。我々も眠いときは「ねふてー」と言うから、この説明には説得力がある。
 というわけで、この語は青森特有ではない。「ねぶりながし」という祭りは能代市にもある。
 青森でも、青森市や弘前市だけでなく、五所川原に「立ちねぶた」というのがある。「ねた」の方は、津軽藩の飛び地があった関係で、群馬県 新田郡 尾島町にもあるらしい。
 津軽衆は、こうしたときに「じゃわめぐじゃぁ」と言う。「興奮している」「ドキドキしている」というような意味である。「心がざわめく」のだと考えてもらえばよい。「じゃぁ」は終助詞。胸騒ぎがする、という場合には使わない。ワクワクする方のざわめきである。

 今年は暑いので夏の話はここまで。秋をすっ飛ばして、ナマハゲだ。
 寒いからと無精こいて囲炉裏にばかり当たっていると低温火傷で痕ができたりするが、これを「なもみ」と呼ぶ。そういう無精者を懲らしめにやってきて「なもみ」を剥いでいく「なもみはぎ」から変化したもの、と言われている。ナマハゲが包丁と桶を持っているのはそういうわけだ。桶の中は想像したくねぇなぁ。
 繰り返すが、これでわかる通り、ナマハゲは鬼ではない。
 一向に盛り上がらないワールドゲームズ 2001 のマスコットは「ナミー」と「ハギー」。スノーレッツよりは可愛さがわかりやすいと思う。

 謎なのは、「かまくら」である。
 今のところ諸説紛紛で決定的な説がない。真っ先に「鎌倉」との関連が疑われるわけだが、接点はほとんど無いらしい。
 「かまくら」と言うと、ほとんどの人が雪で作った洞を想像すると思うが、実はあれだけではない。
 上にも挙げた楢山地区には「楢山かまくら」というのがある。復刻されたのは最近だが、これは木で骨組みと屋根を作る。従って四角い形となり、しかも大きい。洞というよりは家である。
 また、秋田の各地に、火のついた俵を振り回して、その火によって邪気を払う、という祭りがあるのだが、これは「火振り (ひぶり) かまくら」と呼ばれる。
 そんなわけで、雪の季節に行われる祭りに広く冠せられた名前なのではないか、という説がある。

 竿燈は、企業のチームも勿論あるのだが、「肴町」「茶町」「馬口労町」といった昔の区画を単位としたグループで行われるのが基本だ。これは、城から歩いて 10 分弱の場所に人為的に作られた経済区域である。つまり、都会なのだ。
 米をかたどった祭り *2 が、農村でなく町で行われたというあたり、不思議だなぁ、と思っているところである。 *3




*1
 このホームページではお囃子が流れる。職場で勤務中に見る人は要注意。(
)

*2
 方言とは全く関係ないが、大阪の西成区にある玉出 (たまで) 神社のだいがく祭りには、竿燈にそっくりなブツが登場する。これは頭に載せたりはしないようだが、台に据えつけて御輿として担ぐのだそうだ。(
)


*3
 竿燈については、上に挙げたオフィシャル ホームページもいいが、秋田市内の小中学校のホームページが意外に深い。
旭南小学校秋田南中学校が出色。()






"Speak about Speech" のページに戻る
ホームページに戻る

第195夜「大阪初体験」へ

shuno@sam.hi-ho.ne.jp