Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第178夜

副詞−秋田弁講座プロジェクト−




 副詞については、だいぶ前に取り上げたが、ちょっと扱いが中途半端だった。今日は、
.
副詞のソロで行く。
.
 しかしながら、副詞そのものについてはあんまり特異な話題ってないのである。無理に
.
探して、何度も取り上げた「大した」が、形としては連体詞だが、「大した たまげだ」のよ
.
うに副詞として使える位である。
.
 必然的に、単語の羅列になる。以下、五十音順。

あど もう。既に。
.
 標準語でも「後、これだけだよ」という使い方をする。これを「もう、
.
これしか残ってないよ」と解釈すれば、「後」と「もう」に接点があるこ
.
とは理解してもらえると思う。
あどがら後がら 後で。後ほど。既出。
いっつにいっつに とっくに。「あど」よりも意味が強いので、自分の行為について用いた
.
場合、「何を今更」「君はまだやってないのか」という含みが出てくる
.
ため、相手に不快感を与えることがある。既出。
うってうって 非常に多く。たくさん。「必要以上に」というニュアンスがある。既出。
げんげげんげ その程度が意外に強い (多い・高いなど) 様。「げんげ のぎごと(な
.
んだか暑いねぇ)」というように、原因が特定できない場合に使われ
.
ることが多い。既出。
こごろどおり心通り 好きなように。満足行くまで。
.
 去年の「秋田の昔っこ」で始めて聞いた。以後、他の用例を耳にし
.
たことはない。
したげしたげ 非常に。「死ぬだけ (死ぬほど)」の変化したもの。必ずしもマイナス
.
のニュアンスを持っているとは限らない。
じっぱりじっぱり たくさん。「ずっぱり」とも。主に県北地方。
たいした大した 非常に。その程度が強い様。既出。
なってもなっても どうしても。どうあっても。「なっても やらねぁねぁんだ (どうあっても
.
やらなきゃいけないんだ)」
.
 「どう」が「な」系の疑問詞、「ても」がそのまま、と考えると部外者で
.
も納得行くであろう。元々は単語ではなく副詞句であるわけだが、非
.
常に短いので単語扱いにしてみた。
.
 句であることの弱みとして、「あの歌手の話だば、なっても聞がねぐ
.
なったな
(あの歌手の話は、何も聞かなくなってしまったねぇ)」「(怪我
.
したときなど) なってもね (なんでもないよ)」など、出自の違う表現が
.
結果的に同じ形になってしまうことが挙げられる。
なぼなぼ どれくらい。
じぇんこ、なぼ ある?(お金、幾ら持ってる?)」
.
みがんでも くが。もってきてけれ(みかんでも食べようか。もって
.
きてくれ)」「なぼ?(何個?)」
.
煮だったら、醤油へでけれ(煮立ったら、醤油を入れてくれ)」「
.
(どれくらい?)」
.
それだば、なぼなんでも おがだ(それでは、いくらなんでも あん
.
まりだ)」
.
なぼ さび(なんて寒いんだろう)」
 と、数にも量にも程度にも使える便利な言葉。
びゃっこびゃっこ 少し。「ばっこ」とも。主に県南地方。既出。
.
 数年前に「びやっこ」という名前の地域限定ビールが売り出されたこと
.
があったが、それが当該地域でどういう評価を受けたかは不明。酒席で
.
これをネタにした駄洒落が繰り返されたことは間違いないと思われるが。
ひんけるひんける 何度も何度も。「千回」の訛りとも。「口をすっぱくして何度も言ったでしょ
.
うが」というようなケースで使われる、マイナスのニュアンスを持つ言葉。
.
既出。
ままんでままんで まるで。年配の人の口から聞くことは少ないような。やや新方言っぽい感
.
じはする。
わざにわざに わざと。意図的に。音としては「ざに」が近い。


 「なっても」に代表されるような、副詞句であったものが短くつまって、副詞に分類し
.
てもいいかなぁと思われる現象は、他にも「いだけ」などの例がある。
.
 これは「いいだけ」の変化したものだが、「好きなだけ」に近いといえば近い。ただし、
.
マイナスのニュアンスを持っている。「権力をかさにきて言いたい放題言われてしまっ
.
た」「客だと思って山ほど食っていきやがって」というようなときに使う。
.
 音としては「だけ」に近い。
.
 いずれ、これを副詞と数えるのは異論のあるところだろうが、仮に秋田弁辞典を作る
.
として、これを分解できるか、というとそれは不可能なので、まとめて掲載するしかある
.
まい。「副詞句」「連体詞句」などを別立てにすることになるのだろうか。



"Speak about Speech" のページに戻る
ホームページに戻る

第179夜「超いずい」

shuno@sam.hi-ho.ne.jp