Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜
第174夜
町に出よ、自転車に乗ろう
もうすぐ春だ。
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雪はもう大方は消えているが、雪かきの結果、山になっているところはまだ残っていた
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りする。
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日常生活のレベルでは十分に自転車の季節ではあるが、まだ遠乗りに出かけるにはちょ
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っと早い。遅い時間に出発して早い時間に帰ってくるのなら大丈夫だろうが、早起きとか
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遅く帰ってくるとかだと、まだ重装備の必要がある。
その自転車だが、まぁ普通の人は「自転車」というであろう。
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「チャリ」という表現も一般的だ。「ママチャリ」「チャリ通」という合成語もある。ただ、こ
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れは若い人に限られるように思う。四十代の後半あたりから聞かれなくなるような気がす
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る。世代方言、ということになる。
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自転車にのめりこんでて、俺の様にレースに出たり、週末になるとテント積んで出かけ
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るような人は、「チャリ」とは言わない。彼らは「バイク」と呼ぶことが多い。文脈によっては
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「マシン」と言う事もある。「チャリ」は、それこそ「ママチャリ」のような軽快車を指す。
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英和辞典や英英辞典で“bike”を引くと、最初に出てくるのは自転車の方である。オート
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バイ*1 という解説はその後だ。したがって、我々のほうが本来の使い方をしていることに
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なる。こんなところで正当性を主張してどうしようって言うんだろう。
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こっちは、社会方言ということになる。
地域方言のほうに目を向けると、まずは「ケッター」か。「ケッタ」「ケッタマシーン」
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「ケタグリマシーン」というバリエーションもある。三重、愛知から静岡にかけての東海
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地方が使用範囲らしい。
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ただし、「ケッタマシーン」になると、原動機付き自転車のことを指す地域もあるらし
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いので要注意。こちらは、「原チャリ」というのが広く使われている。
「チャリ」は関西語源という説がある。「チャリンコ」はよく知られていると思うが、「チャ
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リキ」というのもあるそうだ。
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関西方言であることの裏づけになるのかどうか、「チャーリー」というバリエーションが
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ある。京都の人が使っているのを聞いた。じゃ、女性の美しい自転車乗りは「チャーリ
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ーズ エンジェル」か？
同じ人が使っていたのだが、「玉付き」という表現もある。子供用の、補助輪が付いた
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自転車のことだ。他の用例を聞いたことが無いので、地域方言なのか、その人が勝手
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に使っているのかはわからない。
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マンガで「横玉」というのも見た。これは、作者が大阪出身。
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勝手という話をすれば、俺の場合だが、最初に述べたように「バイク」は「自転車」も
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「オートバイ」も示しうるので、「自力バイク」と言うことがある。
自動車のほうには、こういう俚諺はないようだ。
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「シャコタン」あたりの俗語だとどうかはわからないが。これは既に死語であるという
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ような意見も聞くが、語源はなんだ？ 「車高」が「短」だとすると、「長さが小さい」み
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たいなもんで、前後が揃わないのだが。「シャコタン」という音の単語は既にあるから、
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それを拝借したのだろうか。
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ついでだが、なぜオートバイのことを「単車」と言うのだろう。何が「単」？*2
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話がそれた。なぜ、自動車には方言形が無いのか。
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思うに、生活に密着していないからではないか。
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田舎ほど車社会で、車が無いと身動きが取れないのは事実だが、法的に絶対に運転
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できない人というのもいるわけで、必ずしも身近ではない、とは言えまいか。
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「チャリ」や「ケッタ」の発生源であり主たる使用者である層が、車を (場合によってはオー
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トバイも) 運転することのできない、高校生辺りの若者であることを考えれば、あながち的
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外れでもないと思うのだが。
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ただ、法的に運転できない−逆に言えば、隠れて運転することもあるが故の隠語ってあ
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りそうな気がするのだが。
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隠語なら表に出ない、従って方言形が多いかというと、暴走族を主役にした漫画などは
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多いから、意外に全国で形が揃っているのではないか、という気もする。
さて、バイクを磨くことにするか。
*1
改めて気づいたが、「オートバイ」ってベタベタの和製英語だな。(↑)
*2
我々が現在、「側車つき」と言っているのが本来の形態だったんだそうだ。その「サイドカー」をとったものだから、「単車」なんだとか。(040201 追記)(↑)
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