詩  「捜 索」     平野 高義

 雨・・・・・・・・・・

 雨・・・・・・・・・・

 雨・・・・・・・・・・

 雨の連日だった

 たずねたずねて
 やって来た“棒沢”
 誰れも知らない
 未知の沢だった
 ずぶぬれになって
 呼子を鳴らし
 やぶを漕いだが
 小鳥のさえずりさえ
 寂として聞えなかった

 こんな事になろうとは・・・・・
 こんな事になろうとは・・・・・

 墜落死だ
 ・・・・・・・・
 ・・・・・・・・

 ドットおしよせる疲れ
 鳥肌立った腕、胸
 気の抜けた足どり

 捜し出し得た
 安堵か
 悲しみに打ちのめされた
 姿か
 否
 ・・・・・・・・
 空虚

 ・・・・・・・・
 
 砂地にのこされた
 ナーゲルの小さな跡に
 すいよせられた
 目、目、目
 一体 どこにいるんだ
 どこえ いってしまったんだ。と

 岩をへずり
 流れを横ぎり
 反比例的な希望と
 絶望の交叉の中を
 歩き続けた
 捜し続けた
 唯ガムシャラに

 そして幾数日

 発見した
 ・・・・・・・・
 死んでいた

・・・・・・・・
 草は芽をふき
 生い茂り枯れ落ちる
 人も、生れ、生き
 そして死ぬ
 身をもてあました
 単独行者
 ・・・・・・・・・・・・
 好きな山で死んだのだから
 幸せ
 否・・・・・・・・
 否・・・・・・・・
 死ぬと云う事は
 二度とあえないと云う事なんだ。



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