メインページへ

新鮮凍結血漿(FFP)の使用基準

血液製剤の適正使用(2)

1999年8月15日号 274

 

新鮮凍結血漿(以下FFP)の適応と使用量について適正な運用が求められています。

 FFPが使用されている多くの症例では直前の凝固系検査が異常であるという本来の適応病態であることは少なく、また適応症例でも使用後にこれらの検査値異常が改善されていることはさらに少ないという結果が示されています。

’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’ <FFP適応の問題点>

 輸血感染の危険〜FFPは、感染性の病原体に対する不活化処理がなされていません。

 FFPの血漿蛋白濃度は、本来の血漿より希釈されています。〜抗凝固剤が添加されているため正常の血漿と比較して、およそ10〜15%低下しています。

 従来よりFFPは単独、あるいは赤血球濃厚液との併用により、循環血漿量の補充に用いられてきました。しかし、このような目的のためには、より安全な細胞外液系輸液(リンゲル液)や人工膠質液(デキストランなど)を用いることが推奨されています。

 今回の改正では、FFPの適応は「複合的な凝固因子の補充」に限られることが明記されました。ただしTTP、HUSの場合は使用可能

<FFP使用指針>

 凝固因子の補充を主目的とする。

 使用前に、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)及びフィブリノゲン値を測定することを原則とする。 11; 11; 凝固因子欠乏による出血傾向のある患者の観血的処置時を除きFFPの予防的使用の有効性は証明されていない。

FFPの適応は以下に限定するものとする。

○ 凝固因子の補充

 1.PT

APTTが延長(PTは30%以下、APTTは1.5倍以上)

  i.複合型凝固障害

肝障害

DIC

大量輸血時:通常、循環血液量(70mL/kg)に相当する輸血量またはそれ以上の輸血が24時間以内に行われた場合に、大量輸血による希釈性凝固障害(凝固因子活性が30%以下)

 ii.濃縮製剤のない凝固因子欠乏症 (第V、第XI因子欠乏症)

 iii.ワーファリン錠による緊急補正

2.低フィブリン血症(100mg/dL以下)

   DIC

  L−アスパラギナーゼ投与後:肝臓での産生低下によるフィブリノゲンなどの凝固因子の減少により出血傾向、ATVなどの抗凝固・線溶因子の産生低下をも来す事から、血栓症をみる場合もある。これらの因子を同時に補給するためにはFFPを用いる。

厚生省医薬安全局 11; 11;

<不適切な使用>  

・循環血漿量減少の改善と補充

・蛋白質源としての栄養補給

・創傷治癒の促進

・その他〜重症感染症、DICを伴わ ない熱傷の治療、人工心肺使用時の出血予防、非代償性肝硬変での出血予防

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

FFP使用の基本的考え方

緊急連載:血液製剤の適正使用(2)

 FFPの使用には治療的使用と予防的使用があります血小板や凝固因子などの止血因子の不足に起因した出血傾向に対する治療的使用は、絶対的適応です。

 出血の危険性は血小板数、出血時間、PT、APTT、フィブリノゲンなどの検査値からは必ずしも予測できません。止血検査値が異常であったとしても、それが軽度であれば、たとえ観血的処置を行う場合でも予防的にFFPを使用する必要はありません。

 観血的処置時の予防的使用の目安は血小板数が5万/μL以下、PTの凝固因子活性が30%以下に低下、APTTについてはそれぞれの医療機関が定めている基準の1.5倍に延長、フィブリノゲンが100mg/dL以下になったとき。

 出血検査で軽度の異常がある患者(軽度の血小板減少症、肝障害による凝固異常など)で局所的な出血を起こした場合に、FFPを第1選択とすることは誤りであり、十分な局所的止血が最も有効です。

 また、軽症のファンビレブラント病の小外科的処置の際の出血予防には、FFPよりもデスモプレシン(DDAVP)が有効です。

<使用量>

 循環血漿量を40mL/kg[70mL/kg×(1-Ht/100)]とし、補充された凝固因子の血中回収率を100%とすれば、凝固因子の血中レベルを20〜30%上昇させるのに必要なFFP量は、8〜12mL/kg(40ml/kgの20〜30%) 体重50kgで400〜600mL (約5〜7単位:1単位は80mL)  患者の体重やHt値(貧血時)、残存している凝固因子のレベル(PTの凝固因子活性は%表示したとき30%以下に低下、APTTはそれぞれの医療機関での基準の1.5倍以上)、補充すべき凝固因子の生体内への回収率や半減期、あるいは消費性凝固障害の有無などを考慮して使用量や使用間隔を決定する。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

*FFPを融解後、やむを得ず保存するときは4℃の保 冷庫〜保存すると不安定凝固因子(第V、第VV因子)は急速に失活しますが、その他の凝固因子は比較的安定です。


     昭和62年12月15日号 No.13 

血液凝固因子

第1因子 I  フィブリノゲン     FFP(新癬凍結血漿)に含有
第2因子 II プロトロンビン
第3因子 III 組織トロンボプラスチン
第4因子 IV カルシウム
第5因子 V Acグロブリン accelerator globulin;autothrombin factor A 
      FFP(新癬凍結血漿)に含有
(第6因子   欠番)
第7因子 VII プロコンバーチン 安定因子
第8因子 VIII 抗血友病A因子
第9因子 IX クリスマ因子 PTC:plasma thromboplastin component
抗血友病B因子
第10因子 X スチューワート因子
第11因子 XI PTA:plasma thromboplastin antecedent FFP(新癬凍結血漿)に含有
第12因子 XII ハーゲマン因子              FFP(新癬凍結血漿)に含有
第13因子 XIII 繊維素安定化因子 FSF:fibrin stabilizing factor
 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

プロテインC

 プロテインCは血管内皮細胞で活性化され、抗凝固作用を発揮するビタミンK依存性蛋白質でプロトロンビン、X因子、IX因子、VII因子などと同様にビタミンK依存性に肝臓で合成される重要な凝固制御系の1つです。

 凝固系が作動すると、プロテインSと一緒になって、凝固系重要な因子である第V因子、やVIII因子を不活性化し凝固系にブレーキをかける役割を担っています。そのためプロテインC活性低下あるいは欠損は血栓症発症の危険因子とされていて、プロテインC欠損症では高頻度に重篤な血栓塞栓症をきたし、後天性のプロテインC低下症も血管内凝固亢進の一因になると考えられています。
(プロテインC欠損者の出現頻度は約500人に1人といわれています)

 プロテインCは、プロトロンビンなどのビタミンK依存性凝固因子より半減期が短いため、ほかの因子より先に低下し一時的な血栓形成をもたらす危険性があることから、ワーファリン錠開始時は少量から始めることが推奨されえています。

また活性化プロテインCは、米国では新しい抗血栓薬として重篤な敗血症による死亡を減少させる薬物として実際に使用されています。
 

   出典:薬局 2006.7

メインページへ