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1999年3月1日号 263

スピリチュアルペインとは

 病気が長引いてくると、患者さんは「私だけがなぜこんなに苦しまなければならないのか」という苦難に対する問いという苦痛が出現してきます また死を自覚しなければならないような病状になったり、他の人のお世話にならなければ生きていけなくなった場合、自分の存在意味や価値に疑問が生まれることもあります。
 
 これら、患者さんの目に見えない苦痛をスピリチュアルペインといい、それなりの対策が必要とされています。

{参考文献}実験治療 No.6421998 淀川キリスト教病院 池永昌之 健康とは

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 病気と戦っているうちに、「私の人生はいったい何だったのだろうか」という生きる意味への問いという苦痛をかかえている患者さんは大勢います。

 その他、患者さんは孤独感や罪責感にさいなまれたり、永遠に家族と別れなければならないと感じたり、死後の世界に不安を抱いたりすることも有ります。

 これらの苦痛は単なる精神的な痛みを超えた魂の叫び、自己存在の意味や価値にかかわる、より深いレベルの痛みととらえられることが出来ます。

 スピリチュアルペインに対する援助については単一の方法や答えがあるのではなく、人対人の人格的な心の交わりや信仰心なしでは癒されるものではないとされています。

 医療者には感性と想像力を働かせて苦痛に共感し、理解しようとする誠実かつ真摯な態度が求められます。苦痛緩和の知識や技術だけではなく、この態度が非常に重要であり、誠実に接することにより、それだけで患者の苦痛を軽減することが可能になる場合も有ります。


<<スピリチュアルケア>>

1、ベッドサイドに座り込む。〜目の高さを同じに
2、十分に話を聞く
3、安易な解釈・評価をしない
4、自分もいつか死を迎える人間であることを念頭に置く
5、相手の人生・価値観を尊重する
6、自分の考えをしっかりと持つ
7、相手を信じてじっくり待つ
8、ともに成長する貴重なときであるととらえる。

<<QOLを高めるケア>>

1、身体症状のコントロール
2、精神的な安定
3、人々との交流
4、生きがいの発見
5、死の受容

 あらゆる面から苦痛について積極的にかかわることが重要と考えられます。そのためにも、チームアプローチを中心とした援助体制が確立されることが望まれます。

スピリチュアルペインの具体例

1、生きる意味への問い
2、苦難に対する問い
3、希望が無い
4、心の愛が感じられない(孤独感、無力感)
5、罪責感
6、別離
7、家族に迷惑をかける
8、死後の問題〜無になるのか?


口呼吸は万病の元 (最終回)

このシリーズは東京大学医学部口腔外科 講師 西原克成先生が「治療」1997.12〜1998.9に連載されていた文章を参考に再構成したものです。

 人類は進化の結果、脳が哺乳類にいたり急に自動的に発達しました。極限にまで脳が発達してしまった結果、上皮性の脳に動脈からいきなり直角に毛細血管が入るようになっています。疲れて血圧が上がると、心臓か脳がやられやすくなっているのが、ヒトの特徴なのです。

 3日間徹夜してリモデリング(体中の細胞の再形成)を痛めつけておいてゴルフをすれば、心臓か脳の血管障害により、その場で死ぬと言われています。これは体の使い方の誤りのみならず、「脊椎動物とは何か?」 「健康とは何か?」が分からなくなった現代人の犯すむさぼりによる失敗と言えます。

 リモデリングには核酸のコピーによる複製が必須で、このためのエネルギーは、細胞呼吸に依存します。また、重力解除(横になること)を1日の1/3の時間を当てないとうまくリモデリングしません。立っているだけで骨に負担をかけ、エネルギーを消費することは以前に述べました

 1日の活動を充実した最低8時間の鼻呼吸による睡眠で回復した上に、なお少々あまった力が湧くほどに休養すれば、躍動感のみなぎった輝きのある生活を送ることができます。

 最近、突然死がしばしば問題になっていますが、哺乳類は呼吸にもともと弱点があります。人間の呼吸器は鰓腸=腸管の特殊化した臓器で元来は呼吸用の専門筋ではなかったのです。

 呼吸運動を習得していない乳児はしばしば手足を動かして半分覚醒させていないと呼吸に関連する筋肉の運動が弱まって酸素不足に陥って死んでしまいます。

 健康とは、時間と空間、空気・栄養物質、温熱、圧力湿度などの環境エネルギーと重力作用の円満な調和の上にのみ成立する健全な生活状態の複合体なのです。


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ナレッジ・マネジメント

2005年5月15日号 No.406

 この記事は、特別医療法人財団董仙会 恵寿総合病院・理事長・院長 神野 正博氏の文章を参考にしたものです。


 
医療分野では、「情報」を提供し共有しなければならないという概念を持っています。しかし、共有し、提供しなければならないのはナレッジ(知識;knowledge)でもあるのです。

 知識は、情報の上位概念と考えてよく、情報を教育や経験を通して自分のものとすることによって、情報を「知識」とすることができるのです。

 知識には「暗黙知」と「形式知」があります。暗黙知は、主観的な知(個人知)、経験知など、文字や数字に表されていない知識で、形式知は、客観的な知(組織知)、理性知など教科書やマニュアルなどで学び得る知識です。

 ナレッジ・マネジメントの本質は、知識創造のプロセスを明確にしていくことにあります。知識変換には次の4つのモードがあり各モードの頭文字を取って“SECIプロセス”とよばれています。

1)共同化(Socialization)

 個人は、同じ時間と空間の中でリアルな体験をすることによってスキルを共有したり、他人の立場に立つことで、その状況をどう見ているかを共感します。新人が、熟練者の技ばかりではなく、コツ、勘などを盗んでいくプロセスや、研修や実習などで知識を共同化します。

2)表出化(Extemalization)

 お互いに共感された暗黙知を、対話や思慮によってグループ知識として統合され、明示していくことで形式知化していきます。業務内容を話し合い、マニュアル化していくことなどがこのプロセスです。

3)連結化(Combination)

 表出化によって作り出された新しい形式知同士や、新しい形式知と既存の形式知を連結することによって、新しい知識とすることができます。例えば、複数の部署が話し合い、院内統一マニュアルを作っていくプロセスがこれです。

4)内面化(Intermalization)

 形式知を実践することによって、新たな暗黙知を獲得していくプロセス。例えば、マニュアルを実践していく経験をつんでいくうちに自分のものとして確立し、さらに新しい意味を学ぶもとになるプロセスです。

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 異常のようなSECIプロセスは、「思い(共同化)を言葉に(表出化)、言葉を形に(連結化)、そして、形をノウハウに(内面化)」というフレーズで表現することが出来ます。

<ナレッジ・マネジメントの場の設定>

 本当に知識は管理できるのか?確実に管理できるのは、知識を創り出して、共有する環境(場)を提供することであると考えられます。

 その場とは、会議、非公式なおしゃべり、IT、院内グループウェアなどです。前述のSECIプロセスを回転させ、らせん状に上昇させていくための場が重要な要素となります。

 診療情報を格納する電子カルテも、ナレッジ・マネジメントの場となります。

 医療の非対称性は、医療者〜患者間で問題となりますが、それ以前に医療者〜医療者間でも存在しています。電子カルテは、相互評価活動や監査に向いています。さらに院内のどこにいても診療情報を閲覧できることにより、ナレッジの連結のための場を設定できることになります。

{参考文献} 医薬品ジャーナル 2005.2
 



医薬トピックス(6)

      ====赤は体に良い!!(1)鮭編 === はこちらです。

 

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