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1998年7月1日号 248

放射線照射輸血用血液について

 

 GVHD予防のため、従来の輸血用血液に加え照射人全血CPD、照射赤血球MAP、照射濃厚血小板が、「薬価基準」に収載されました。

 尚、白血球除去赤血球、洗浄赤血球は放射線照射輸血用血液として製造承認が得られていませんので、これまで通り契約に基づく血液センターで照射を行います。

 

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薬価収載された製剤

・照射赤血球MAP(人赤血球濃厚:ir-RC-MAP) 単位:200ml由来、400ml由来/1袋

・照射濃厚血小板 (人血小板濃厚液 :ir-PC)単位:1単位、2単位、5単位、10単位、15単位
20単位/1袋)

・照射人全血CPD(人全血液:ir-WB)単位:228ml、456ml/1袋

 それに伴い発注方法が変更となりました。
従来、放射線照射MAPは前日の11時までに依頼書を提出してもらっていましたが、随時発注可能となりました。

 放射線照射済血液製剤はいずれも日赤に返品が
できません。(医師の判断により院内で他の患者に転用することは可能です。)

 X線照射済の血液は、原則としてラベルに記載期限まで使用でき、他の患者に転用してもかまいません。ただし、上清のK値が上昇するため、新生児・腎不全患者には使用できません。(照射後すぐなら可能)

 適正な血液製剤使用に関し、より一層のご協力をお願いします。

<放射線照射輸血用血液の発注について>

*照射赤血球MAPについては、随時発注が可能です。

*依頼書は従来通りの放射線照射済用のものでお願いします。(未照射血と区別するため)

*血小板製剤、全血製剤は2日前までに依頼書を提出して下さい。(従来通り)

*放射線照射輸血用血液の血液を使用した場合には、処方箋にも、放射線照射済の血液であるこ
とを記入して下さい。(未照射血と薬価が異なるため)

*新鮮凍結結晶(FFP)は放射線照射の対象とはなりません。


*輸血点数の算定は「患者に対して輸血の必要性危険性等について文書による説明を行った場
合」に算定されます。(上記注参照)


*詳細は薬剤部注射室(内線:385)にお問い合わせ下さい。 (注)

*すべての輸血にあたってはインフォームドコンセントを行って下さい。

1.輸血の必要性及び起こりうる副作用等
2.輸血方法及び予定される輸
血量等
3.輸血に関連する検査等
4.その他留意点

上記について十分に患者さんに説明する必要があります。


金持ちが中毒にならない訳(アヘン戦争時の中国で)
モルヒネについて(1)

 麻薬:モルヒネと聞いて私などは、魔薬(悪魔の薬)、中毒、アヘン戦争、廃人、国が滅びるなどを連想してしまいます。

 中学校で習ったアヘン戦争のことを思い出すからかもしれません。イギリスにアヘン(モルヒネの原料)を売りつけられ、多くの中国人が廃人となり、やがては香港を取られてしまいました。

 しかし、アヘンで廃人になった人は貧しかった人が多く、アヘンを常習していた人でも金持ちは、中毒症状を起こさなかったそうです。

 普通の人が買ったアヘンは質が悪かったせいもあるでしょうが、実は、間歇的に飲んでいたことが中毒症状を起こす原因なのです。そしてまたお金が無くなるとアヘンを買えないのでどうしても間歇的になってしまうのです。

 その点、金持ちは、ずっと飲み続けていたので中毒症状を起こしませんでした。これは、今でも癌治療としてモルヒネを用いる場合にも当てはまることで、モルヒネの場合、痛みがある時だけといった頓服的な使い方は最悪とされています。

 モルヒネは藪医者方式(失礼!)で用いるのが最適とされているそうです。
藪医者方式とは、副作用が出ても減量でよい。副作用を抑える薬(この場合、ナウゼリン、カマグ、プルゼニド等) を追加することです。

 痛みが強くなるとモルヒネ受容体が活性化します。ということはモルヒネ必要量が増えるということです。副作用はモルヒネレセプター数を超す量を与薬した場合に現れるのです。

 瞳孔と呼吸数をチェックすれば副作用はこわくない、どんどん増量すべき、至適量を決める努力が必要とされています。

<WHOの基本方針>

1、by mouth:なるべく経口与薬する。経口不可能の時は直腸内とし、それもできないときに注射。
できる限り簡便に

2、by the ladder:効力の順に薬を選ぶ。段階的に

3、by the individual:その患者にあった量を用いる個々の患者の痛みが消失する量を求める。

4、by the clock:時間を決めて規則正しく。頓服指示をしない。

5、attention to detail:とくに鎮痛剤の副作用を確実に防止することと患者の心理状態に配慮
する。以上の4原則を守った上で、細やかな点にも注意する。


医薬品等安全性情報 No.148

*ワクチン接種による急性血小板減少性紫斑病

<該当薬品>
乾燥弱毒生風しんワクチン、乾燥弱毒生麻しんワクチン
乾燥弱毒生おたふくかぜワクチン
沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン

まれに(100万人接種あたり一人程度)急性血小板減少性紫斑病があらわれることがある。通常、接種後数日から3週頃に紫斑、鼻出血、口腔粘膜出血等があらわれる。

本症が疑われる場合には、血液検査等の観察を十分に行い、適切な処置を行うこと。

●ワクチン接種による急性血小板減少性紫斑病

症例
年齢3ヶ月〜14歳
男5例、女8例

患者背景には特記すべき傾向は認められなかった。いずれも回復または軽快

血小板数は5×104mm3未満


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複雑系としての医療

2007年11月15日号 No.464

 新しい科学として「複雑系」が注目を浴びています。複雑系とは、多数の因子が相互に影響を与え合い、さらにシステム全体の振る舞いが決まるシステムにおいて、それぞれの因子が相互に影響を与え、因子とシステム全体も相互に影響し合うために、システムの未来を一般的手法では予測できない系を言います。

 複雑系のシステムは、外部環境や内部環境に応じて自然に適応し、自己組織化します。医療も複雑系で、欧州や米国のではすでにこの複雑系の概念を取り入れています。

  1匹の蝶の羽ばたきが地球という全体の環境を変え、変化した環境がまた蝶に影響を及ぼし、影響を受けた蝶がまた地球環境に影響を及ぼす。とい うのが極端な複雑系の概念です。

 複雑系は、現象を単純な法則や原理に落とし込むことができないため、基本スタンスとして「複雑な現象を複雑なまま理解しようとする姿勢」が必要です。

 今、日本の医療システムの因子同士の相互作用が大きく変化しています。患者と医療者との関係で、日本でも遅ればせながら、患者による院内暴力が取り上げられるようになりました。

 25%以上の医療従事者が患者や家族から身体的暴力を受けたと回答しています。安易な救急車の利用や医療費の未払いも増加しています。

 医療行為に対する一部の患者の不信感も強く、適正な治療を評価するのではなく、自分に対する好い結果しか受け付けない利益優先の考え方が増加し、医療訴訟の危険性が高まってきています。

 医療を商品取引と同じサービスという概念で捉えるのも問題ですが、本来、商取引でも「お客様は神様です」といった主従の関係ではなく、信頼と契約が必要な対等な関係が基本となるはずです。

 医療従事者の数が制限される中、徐々に増える不必要にも見えるこれらに対する対応は、診療実績の向上の圧力とともに医療従事者の心も体も疲弊させてきています。

 米国は既に、多民族、多分化の自国家を複雑系として捉え、自己組織化する国家運営をしています。すなわち、複雑系のゆらぎを大切にし、現場の状況や意見を迅速に取り入れる努力をしています。

 中央官僚を現場に送るのではなく。現場で活動している人間たちを集めてシンクタンクを作り出し、その意見をもとに、行政官である政府と官僚が政治を行うという形態を採用しています。

 陪審制度の住民参加や、住民ヒアリングなどあらゆる現場の意見を迅速に導入する努力が払われています。

 日本の場合、必ずしもそうではありませんが、米国民は、国家より民間が絶対効率的であり、フェアな競争環境がある限り、競争による収入の違いは本人の努力と能力の帰結である強い信念があります。慈善事業や救済基金も充実しています。

 米国の病院の玄関ロビーには、必ず屈強なガードマンがいます。保険のない患者、暴力的な患者、迷惑な患者に強制的に対応を行う大きな仕事です。

 現在日本は経済基調の変化により。医療システムも変化を余儀なくされています。本来。経済も医療も複雑系であるため、内部・外部環境や応じて自然に適応するシステムを構築することが重要です。欧州や米国のシステムを導入しても個人の価値観や歴史の違う日本ではうまく機能しないと思われます。

{参考文献}医薬ジャーナル 2007.10
 



<医学トピックス>  

   古代人の残してくれたありがたい遺伝子が現代病の原因だった。 はこちらです。

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