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1997年5月15日号  222

調剤レセプト査定内容の具体例。

 

 

  処方する際にご注意下さい。

 国民健康保険審査委員会で審査上の参考資料としている「注意意見書」では、下記のものが保険点数カットの対象となります。

 保険カットの査定区分

A.適応と認められないもの。
B.過剰と認められるもの。
C.重複と認められるもの。

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1.外用パップ剤の過剰処方

  MS冷・温湿布、セルタッチ、IDパップ、モーラステープ等は1個所7日分、300gまたは15〜18枚(包装により異なる)程度とされています。

2.漢方薬の3種類を同時に処方〜過剰処方とみなされます。

3.発売後2年経過以後も長期不可の医薬品

 ・小児用バファリン、アダプチノール:厚生大臣の定める疾患と薬剤を確認の上処方して下さい。
 ・オメプラール錠、タケプロン等プロトンポンプ阻害剤については注記(*)がありますがタケプロンそのものの薬効、その副作用から みて長期の処方は保険診療上認められません。 胃液による食道炎などでは他の制酸剤(H2遮  断剤等)もあることですので工夫してください。
  ・ハルシオン、レンドルミン等睡眠導入剤、シナール、ポポンS等のビタミン剤は長期与薬不可です。

4.脳循環代謝改善薬の作用機序の同一薬の組み合わせ。

   例えばトレンタール、カランの組み合わせ。

5.ロキソニン、ボルタレン等のNSAIDsは胃潰瘍には禁忌です。

6.レンドルミン2錠+アモバン2錠といった眠剤の多剤併用には、(重症)不眠症の病   名が必要です。

7.セレスタミンは気管支喘息には適応はありません。〜薬効再評価の結果です。

8.キネダックでは血糖、HbA1cの検査によって使用することとなっています。

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注記(*)プロトンポンプ阻害剤の使用日数
 
胃潰瘍,吻合部潰瘍,逆流性食道炎では8週間まで,十二指腸潰瘍では6週間まで


*[長期不可の薬品]14日以内(☆印なし)

 発売後2年未満の薬品
 漢方製剤、抗生物質、抗菌剤 催眠鎮静剤、ビタミンB剤等

*1処方につき8種類以上の内服薬が記載されていないか。
  
 外来処方では、8種類以上の薬品が記載されている場合は、一律に処方薬の10%カットされます。


添付文書を甘く見るな3

<1996年2月に出された高松高裁の判決>    はこちらに移動しました


<<用語辞典>>


アトムエコノミー

 原子の利用率 原子効率

 反応を生成物の収率だけでだけで評価するのではなく、反応に関係するすべての物質がどれだけ生成物に組み込まれたかのかを評価する指標

 従って、転位反応や付加反応では出発物質が生成物に転換されるため、経済性が高く、アトムエコノミーは100%です。一方、置換反応や離脱反応の場合は脱離基等の無駄なものが出るため、アトムエコノミーは低くなります。

 この概念はまた、環境にやさしいグリーンケミストリーの根幹の1つでもあります。

グリーンケミストリー

 科学技術の革新を通して人と環境の健康・安全を目指し、持続可能な社会を実現に貢献すること。

       出典:ファルマシア 2002.6 等



尿素サイクル異常症


 アミノ酸代謝で生じた有毒なアンモニアは、肝臓に存在する尿素サイクルによって、尿素に変換され、排泄されます。尿素サイクルは5種類の酵素(カルバミルリン酸合成酵素1,オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギニノコハク酸合成酵素、アルギニノコハク酸リアーゼ、アルギナーゼ)により構成され、遺伝子異常によりいずれの酵素が欠損しても、高アンモニア血症を来たし、神経症状や知能障害、発育障害等を伴います。

 バルプロ酸(バレリン、デパケン)により高アンモニア血症が起こることが知られていますが、尿素サイクル異常症に関する注意について、禁忌、慎重投与、重要な基本的注意の項に追記されました。

 尿素サイクル異常症と診断されている患者では、重篤な高アンモニア血症を発症する危険性があるため、バルプロ酸Naの使用を避ける必要があります。

 本症が疑われる患者では、バルプロ酸Na使用前にアミノ酸分析等の検査を行う等、アンモニア値の変動に注意し、嘔吐や意識障害、振戦等の神経症状についての観察を十分に行うなど慎重に行う必要があります。
      出典:大日本製薬 バレリン錠・シロップ添付文書

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有機酸代謝異常症

      出典:医薬ジャーナル 2002.11

 本症は、アミノ酸、糖質、脂質などの代謝経路の中間代謝段階で酵素欠損により、その代謝経路の中間代謝物である有機酸(カルボン酸やその代謝産物)が体内に蓄積する疾患で、現在30以上の疾患が知られています。

 このうちアミノ酸、特に分岐アミノ酸であるロイシン、イソロイシン、バリンの中間代謝段階での障害が多く見られています。また、ある酵素群に共通する因子の欠損のために、これらの酵素群が関与する複数の代謝経路での障害が認められる疾患もあります。

 本症に含まれる個々の疾患の頻度はそれほど多くありませんが、疾患の種類が多いため有機酸代謝異常症全体の頻度は少なくとも1/1万人以上と考えられています。

 本症は、代謝性アシドーシスなどにより急性発症することの多い疾患で先天代謝異常症の中でも特に注意が必要な疾患です。

 本症では、障害された中間代謝段階の上流にある有機酸が蓄積することにより、重篤な代謝性アシドーシスや臓器障害が引き起こされます。体内には代謝経路の上流物質そのものだけではなく、これらの物質が代謝されることで正常では存在しない異常な有機酸が出現し、これらの代謝産物による障害も引き起こされる場合もあります。

 また、細胞内アシルCoAの蓄積、遊離CoAの欠乏が加わって、他の多くの代謝経路も二次的に障害されます。さらに、体内に蓄積された有機酸はアシルカルニチンとして体外に蓄積されるため、しばしば遊離カルニチンの著しい欠乏が認められます。

 本症では、酵素の補酵素であるビタミンの大量与薬が有効な場合があり、このような場合には障害された酵素そのものの異常ではなく、補酵素であるビタミンの代謝異常の結果として有機酸代謝障害が引き起こされていることがあります。

 本症は、従来急性の経過をとると考えられていましたが、現在では次のような発症形態があることが明らかにされています。

1.新生児期や乳児期早期から代謝性アシドーシス発作により急激に発症するもの
2.普段は無症状だが、感染などのストレスによりケトアシドーシス発作を繰り返すもの
3.乳児突然死症候群やライ症候群に類似した症状で発症するもの
4.神経症状が徐々に現れて進行するもの
5.その他の尿路結石や湿疹などで発症するもの

 急性期の症状としては嘔吐や多呼吸、筋緊張低下、意識障害、肝腫大などがよく見られます。検査成績としては、代謝性アシドーシス、アニオンギャップの拡大、高アンモニア血症、低血糖などが認められます。急性の経過で発症するものでは、診断前に死亡したり重度の知的障害を残すこともあります。

 治療としては、基本的には絶食とした上でのブドウ糖輸液、アシドーシスの補正、血液浄化療法、交換輸血や腹膜透析などを行います。その後の維持療法としては特殊ミルクを用いた食事療法とカルニチンの服用を行います。

 

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