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1997年4月1日号  219

血液運用についてのお願い

  X線照射済み血液の注文について

(以下の記事は1997年のもので、現在とは異なっている部分がありますので注意して下さい。)

 前号でもお知らせしましたように、今月よりGVHD予防のためにX線照射済みの血液の注文ができるようになりました。
 
 また医療点数の改訂に伴い輸血に際してはインフォームドコンセントが必須となりましたので、輸血に際しては、患者さんの同意書に捺印もしくは署名が必要となります。(X線照射とは、関係無く、すべての輸血が対象となります。)

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 X線照射済みの血液の運用に当っての注意


・注文は4日前(日曜、祝日をはさむ場合は5日前)までです。それまでに必ず依頼書を薬剤部 に提出してください。

 X線照射血の注文はFax(ファックス)で行うことになっています。そのため、依頼書が薬剤部に提出されていないと注文ができません。

・専用の依頼書が必要です。〜従来の血液の依頼書でなく、X線照射血専用の依頼書が必要です。
  
 また、依頼書には医師の印鑑又は署名が必要です。

・X線照射済みの血液を使用した場合には、処方箋にもX線照射済みの血液であることを記入して下さい。
  
 血液をX線照射するための費用は、総量400ml以下1100円、これ以降400ml又はまたはその端数を増す毎に1100円を加えた額となります。
処方箋にその旨を記載されませんと、請求もれになる可能性があります。
  
・返品は血液センターの方では受け取ってくれま せん。適正な血液の運用をお願いします。

 X線照射済の血液は、原則としてラベルに記載期限まで使用でき、他の患者に転用してもかまいません。ただし、上清のK値が上昇するため、新生児・腎不全患者には使用できせん。(照射後すぐなら可能)

・X線照射の対象となる輸血用血液
  全血、赤血球(MAP)、血小板等で新鮮凍 結血漿(FFP)はX線照射の対象とはなりません。

*すべての輸血にあたってはインフォームド コンセントが必要となります。

 保険点数の改訂に伴い、輸血点数の算定は「患者に対して輸血の必要性、危険性等について文書による説明を行った場合」に算定されます。

1.輸血の必要性及び起こりうる副作用等
2.輸血方法及び予定される輸血量等
3.輸血関連する検査等
4.その他留意点
 X線照射済み血液は返品ができないため、血液の廃棄が増えると想定されます

  より一層の適正運用  (注文数の考慮)、X線照射済み血の転用にご協力願います。

・現在1ヵ月平均994単位の 注文がありその内使用された血液は448単位(使用率 45.1%)となっています。


インターネット
シリーズ:情報を考える

 おたくのすなるインターネットなるもの、おやじもしてみんとてすなり。(注;土佐日記のもじり)

 インターネットに手を出し始めてから、もう半年
(注:1997年に書いたものです)ですがたちます。昨年、パソコンを買ってインターネットを始めたという人は多いと思います。

 おたくがやっていたころのパソコン通信の用語としてDLO:ダウンロードオンリーというのがありました。

 これは、ネット上に流される情報(発現、画像、ソフトなど)をダウンロード(自分のパソコンに電話回線を通じて取り込むこと)をいいます。逆にアップロードと言えば、自分の意見、自分で開発したソフト、自分で書いた絵などを他人に評価して貰う目的でネット上に流すことを言います。これらは、大抵無料で使用できます。

「インターネットをやってるんだぜ。」とさもカッコ良さそうに言い回っている人がいますが、大抵他人が作ったホームページを見て回っているだけです(ネットサーフィンとかいうカッコの良い名前が付いている。)

 アップロードするのには、それなりの知識と経験が必要で、普通のものはDLOにならざるを得なかったのが現実でした。しかし最近は違うのです。ソフトの進歩のおかげで簡単にインターネットにホームページを持つ事ができます。

 そこで問題とされているのが、情報の質の低下です。そしてまた、現在のところインターネットに出回っている情報については規制がありませんので、その情報が正しいかどうかはダウンロードしたものが確認しなくてはなりません。

「インターネットは空っぽの洞窟」という本が話題になっています。確かに何時間もネットサーフィンしても、そんなに知識が増えるとは思われません。しかし、雰囲気というか、個性というかホームページには、それなりの主張が伝わってくることもあります。決して空っぽではない筈です。

 但し、無料の情報にどれだけの責任を感じて、掲載しているのかは疑問です。その辺は見極める必要があるでしょう。(この薬剤ニュースも無料ですので、そこのところ、よろしく)


<医学・薬学用語辞典>

リムルステスト
Limulus test

エンドトキシン定量法
アメリカ産のカブトガニ(学名:Limulus polyphemus)

カブトガニ血球が微量のエンドトキシンで凝固する減少が契機となり開発されました。


 加速審査

 加速審査とは、血症的な病態に用いる薬剤を治療法の安全性が完全に確立されるのを待たずに、製造業者に販売を許可するFDAのプログラムに基づいて行われる制度です。

 製造販売の許可後も、FDAは製造業者に薬剤の安全性、副作用や効果をさらに詳細に調査する為に第3相臨床試験を行いつづけ、結果報告を要請します。


食コーチング

 コーチングとは、人の無限の能力と可能性を前提として、個々の自発的行動を促すとともにそれを支えるコミュニケーション技法といえます。このシステムを栄養療法に応用しようとするのが食コーチングです。

 食コーチングとは、人々の食行動を通して、健康への意識を高め、健康行動を発展させ、ライフスタイルや人生をより活性化させるためのシステムです。

 基本原則は、個人の自発性を尊重し、モチベーションを高めることですが、時として患者以外(医師、家族など)の医師によりスタートすることがあります。

 従来の栄養指導とは情報の伝え方や伝えたことで実践されるかなどの方法が異なり、指示・指導型ではなく、できることを見つけて、そこからはじめる支援型であることです。


       出典:日本病院薬剤師会雑誌 2006.6


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原発性アルドステロン症(PA)

2010年4月15日号 No.519

 原発性アルドステロン症(PA)は二次性高血圧の原因の1つですが、これまでその頻度は低いと考えられてました。しかい、近年、これまで本態性高血圧とされてきた症例の5〜10%が、実はPAであるとの報告が相次いでいます。

{参考文献}メディカル・トリビューン 2010.3.25

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 PAとは、アルドステロン産生臓器である副腎皮質に原発性の病変があり、そのためにアルドステロンが過剰産生されている病態のことです。アルドステロンはおもに腎臓や腸の上皮細胞に作用して、ナトリウム(Na)、水を再吸収しカリウム(K)を排泄します。

 したがってPAでは高血圧、低K血症、代謝性アルカローシス、レニン-アンジオテンシン系の抑制など症状があらわれます。

 PAはこれまで、1)高アルドステロン血症、2)低K血症、3)CT所見上での類円形腫瘍などを古典的主徴として診断されてきました。しかし、PAがこれらの症状をすべて満たすことはまれで、むしろ満たさない症例のほうが多いことが指摘されるようになりました。

 そして新たに、血中アルドステロン濃度(PAC)/血漿レニン活性(PRA)比などを指標として診断されるようになってきています。

 PAの病型では。副腎皮質の原発性病変の種類として、1)アルドステロン産生腺腫、2)副腎皮質過形成(特発性過形成)が主であり、3)癌、4)遺伝性のグルココルチコイド反応性アルドステロン症は極めてまれです。

 日本では現在高血圧の患者数は焼く4千万人と推測されています。そのうち5%がPAだとしても約200万人のPA患者が存在していることになります。しかし、実際に診断され、治療を受けている患者は、数千人程度にすぎません。  このことは、PAの存在を疑わない限り診断できない症例が極めて多いことを示しています。

 PAは診断さえ付けば、副腎皮質病変部の摘出術あるいは薬物療法により比較的治療が容易な疾患で、完全治癒の可能性も高いとされています。

 また近年では、PAは高血圧の原因になるだけでなく、心不全や脳卒中、腎不全の危険因子になることも明らかにされてきています。

 プライマリケアでPAをスクリーニングするための最も有効な手段は血中アルドステロイド濃度PAC(pg/mL)と血漿レニン活性PRA(ng/mL/hr)の測定です。

 その比が200以上であればPAが疑われます。ACE阻害剤やARB剤、β遮断剤などの降圧剤で治療中の患者ではPACやPRAの値が修飾されている可能性があるので、2週間程度Ca拮抗剤に変更してから測定する方法が勧められています。

 確定試験としては、カプトプリル負荷試験、フロセミド負荷試験、生理食塩液負荷試験などが行われています。いずれの診断法も、PAであればアルドステロイド過剰産生は自立的なものであるため、外因による変化を示さないであろうことを診断の根拠としています。

 PAが確定した後は、病変が左右どちらか、あるいは両側の副腎皮質に存在するのかの局在診断が行われます。この方法には副腎静脈サンプリングCT、副腎皮質シンチグラムなどがあります。

 PAの可能性の高い高い患者としては、50歳以下、低K血症を合併、中等度以上の高血圧、治療抵抗性、副腎皮質偶発腫瘍の合併、40歳以下で臓器障害のある例などが挙げられています。

<PAハイリスク群>

1)50歳以上の高血圧
2)低K血症を合併
3)U度(中等度)以上
  収縮期血圧>160mmHg または拡張期血圧>100mgHg
4)治療抵抗性(降圧剤3種以上)
5)副腎皮質偶発腫瘍の合併
6)40歳以下で標的臓器障害
 


  医薬用語解説 CKD-MDBはこちらです。

 

 

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